※注意!
この作品はタイトル通りマチゲリータPの「暗い森のサーカス」の解釈もとい妄想小説です。あと某有名PVにも影響を受けております。
出来るだけ原曲に忠実にと思ったのですが如何せん妄想なので主人公がGUMIだったり座長が2人いたりカップリング要素が多数あったりと勝手な独自設定のオンパレードとなっています。
よって原曲のイメージを壊されたくない方、ガクメイなどが苦手だなって方はリターン推奨です。

おkな方はそのままスクロールしていただければ。
マチゲリータPに敬意を表して。

♪~ ♪ ~♪ ♪♪ ~


【勝手に妄想】暗い森のサーカス【自重できなかったよ】第五幕


 夜もだいぶ更けてしまったころ、友達のおかげでまたとないほど美味しく出来上がったシチューがコトコトと音を立てて煮えているのを横目に、暖かいリビングで編み物に精を出して気を紛らわしていた。一向に帰ってくる気配がない。じっとしてるのにも堪えかねて真っ白に曇った窓ガラスを擦って外を覗くも、通りは雪がしんしんと降り積もるばかりで先ほどまで盛んに行き来していた馬車の轍や人の足跡すらも見事に隠してしまったいた。待てど暮らせど玄関の呼び鈴は鳴らない。
 きっと学会がうまくいって、偉い教授や研究仲間の人にディナーにでも誘われたのだろう。今まで夫は私との夕食の席を外すことがなかったし、コネを作るとかそういったことに疎いほうだ。夫にとって良い機会であるに違いない。しかし。
 つい先日取り付けてもらったばかりの電話の、ちりんとも鳴らないベルを恨めしく見据えながら、どうにもならないもやもやしたこの気持ちを抑えつけることは容易ではなかった。ないとは思うけど、もしなにかあったときはこれで連絡がとれるね、なんて夫は業者の人に回線をつなげる工事をしてもらっている横でぼやいていたくせに、使うべきときに使わないなんてまったく意味がないじゃないの。
 私一人のためだけに燃えるストーブの火。コトコトと煮えるシチューの音がいよいようるさく感じられてきて、熱々の鍋をオーブンストーブの上から降ろすとあっという間に何も言わなくなった。いっそもうベッドで休んでしまおうかしら。時計の針も普段なら床についている時間を指し示している。
編み物を籐の籠の中に放り込み、火の始末して二階に上がると恐ろしく寒々しい寝室が私を迎えた。窓辺から窓の外を見下ろしてみても、白銀の世界が広がるだけで動くものすらない。ふいに今この瞬間この世界には私だけしか存在しないのではないかという錯覚が襲ってきて、部屋の冷気と相まって私を身震いさせた。いや、実際こんな時間に起きている人なんてそうそういないのだ。通りに人がいるわけがない。夫は・・・ちゃんとベッドで休めているのだろうか。
ダメね。これ以上起きているとあまりよろしくない方向に思考が回ってしまっていけない。腰を上げてベッドの中に潜り込むと何も考えないよう毛布を頭まですっぽり被ってしまった。


 結局、朝になっても夫は帰ってこなかった。それどころか日が昇り、さらに傾いてもなお帰ってくる気配がしない。もちろん電話はだんまりを決め込んでいて、とうとう痺れを切らせ思い切って大学の研究室の電話番号通りにダイヤルを回そうと手を伸ばしたそのとき。目の前でジリリリと電話が鳴り始めた。急いで手に取ると、電話交換手が大学の事務からの電話であることを告げる。取って替える間が異様に長く感じられて、多少イライラしてきた頃やっと回線が繋がる音がした。
 電話に出た相手は私が夫の妻であることがわかるとやけに冷たい声色で夫を迎えに来てくれとだけ言って電話を切った。訳がわからなかったが、ひとまず夫の居場所がわかってほっと胸を撫で下ろし、息を吐いた。馬車を走らせること小一時間、夫の研究室まで駆けつけるとノックをするのもそこそこにいち早くノブにかけた手をまわした。
 ・・・そこにいたのは、事務の人らしいスーツを纏った男性と夫の助手をしていたという助教授一人と学生数人、そして今だかつて見たことがないほどに憔悴しきった夫の姿だった。椅子に腰掛けた夫の顔を覗き込んで、思わず身の毛が弥立つ。眼が、彼の紫水晶の眼が、昏く、生気もなく、淀んだ沼のようにすべての光は呑み込まれ、ただの無機物のように、鏡のように、視界に入るものを反射しているだけに過ぎなかったのだ。
 何があったんですか、と今にも喚きたくなる衝動をなんとか堪えて誰ともなしに問う。
 学生たちが顔を見合わせるなか、事務員と助教授がゆっくりと、しかし確実に事実を告げた。
 長年手がけてきた研究が、それまで良い顔をしていた教授たちも含め学会で酷い批判を受けたこと。さらに倫理的な問題から研究自体を神への冒涜とされ、学会からの追放、及び研究の一切を禁止されたこと。そして今日、大学からの追放までもが決定したことを、事務員が淡々と説明する。
 今まで他の教授たちからそれなりに評価されていた故にこんなことは想定していなかったのだろう。助教授は酷評について遠まわしに話してくれたものの、その話しぶりからどんなに酷いことを言われたのかが容易に想像できた。
 それは、夫のすべてを否定されたということで。それは、研究しかしてこなかった夫の活路を塞き止めるということで。
 神を貶める悪魔、と烙印を捺された夫は、帰ってくるなりここで籠城の如くぴくりとも動かなくなってしまったと言うのだ。
 泣きたくなる気持ちを押し殺して学生たちと一緒に部屋を片付け、すべての荷物を馬車に運び込み、なんの反応も示さない夫をなんとか馬車に乗せて帰路に着く。すっかり暗くなった街道を走っていると、不意に夫が何か呟いた。
 
「・・・え?」

「見返してやる・・・僕の研究は正しいってことを・・・!」

 その言葉はとても純粋で且つどす黒い感情が篭められていることに気づいた私は、しかし何も言えなかった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

【勝手に妄想】暗い森のサーカス【自重できなかったよ】第五幕

一ヶ月以上間が空いてしまってほんとごめんなさいです。
でも見てる人もいないから別に平気・・・だよね?^^;
なんだか雲行きがあやしくなってきた本編ですが(そもそも最初からよろしくない雰囲気ですが)いよいよ夫が良くない方向に突っ走りはじめました。
あ、明記はしてませんでしたが夫はがくぽがモデルです。というかこの作品に出ているボカロキャラはモデルとして書いているだけであって、ボカロ≠登場人物です。
ついでに言えばグミだけは年齢も公式イラストよりもだいぶ幼い設定にしてあります。細かいところはやはり読み手が脳内補完していただければ(それって丸投g(殴

ここまで読んでいただきありがとうございましたー!

閲覧数:946

投稿日:2009/12/12 22:52:58

文字数:2,445文字

カテゴリ:小説

  • コメント1

  • 関連動画0

  • +KK

    +KK

    ご意見・ご感想

    わっふー! 誰が見てないっていうんですか!
    ちゃっかり読んでます、勝手に「わっふー」とかいう変な挨拶作った張本人、+KKです(笑

    ドキドキわくわくしつつ続きをお待ちしておりました~。
    次こそはメッセージを!と決めていたので本当にやってこれて一安心です。
    しかしながら、登場人物が多いのにここまで書けるものなのですね。
    自分は登場人物多くなるとそのうち誰かが空気になるので勉強になります。
    本当に他の方のお話を読んでると、自分も頑張らなくちゃと思いました。
    とても気になるところで途切れてるので続きもドキドキしつつ正座していつまでも待ってます!
    それでは、乱文となってしまいましたがこれにて。

    2009/12/12 21:37:48

    • 望月薫

      望月薫

      whoooooo!?どうやら大変なお方を釣り上げてしまったようだ(滝汗
      いえいえこちらこそ勝手にわっふーを使うどころかさらに微妙にアレンジしてしまってすみません;

      まさか読んでいただけているなんてつゆ知らず・・・うわあどうしよう血が沸騰しそう!
      いやいや登場人物のほっとんどが空気ですよ。回想のせいで主人公なんてむしろ蚊帳の外ですよ?(笑)
      筆(というか脳の文章構成スピード)が遅いのでほんと+KKさんの制作速度を見習いたいです。
      はわわ正座崩してくださいっ!たぶんまた続きあげるのが遅くなると思うんで(確信犯かこいつ!
      +KKさんのメッセを励みにがんばりまする!
      コメントありがとうございましたー!

      2009/12/12 22:45:59

オススメ作品

クリップボードにコピーしました