一夜限りの夢でも構わない
それでも僕らは満足できるから
不毛な行為と君は言うのだろうか
それでも僕らは全く構わない
寂しい時は歌を歌うの
あなたがくれた大切な歌を…
第2章 2頁目
「…ター…マスター!」
赤いとの声が聞こえる。暗い。目を閉じてるからか。いつから自分は寝てしまったのだろう…?
「お帰ろっつってんだろこの馬鹿マスター!」
ゴッ!
「ああ、あー君暴力禁止!今度は気絶しちゃうよ!」
「痛…この莫迦、たんこぶできるだろ…」
しかし殴られたにしては妙な痛みのような気がした。
「んなことより周り見てみろよ!」
「周り?…!」
外だ、外に居る。無駄にいい天気でどこまでも広い草原。後方には森があった。
「んだ、これ・・・」
「こっちの方がびっくりだ、マスターいつから電脳化したんだ?」
「ハ?電脳化?」
「だってここ…PCの内側の世界、電脳世界だぞ?」
「ちょっと待て、さっぱりだ、追いついてない、いろいろと。」
言葉もブツ切りでぐちゃぐちゃだ。
笛吹きのきれいな歌と音楽で寝てしまった…ん立ったと思うがその前に彼の空間を割いたような表れ方からすでに現実じゃない気がする。なら昨日だと思ってる時間帯に寝てしまったままで、みんなで平和にまだ家で寝てるに違いない。
「…夢なら、起きたくないな。それならみんな家に居るし、別れの日を繰り返さなくれ済む。」
自分でも自嘲してるのが分かる。
「…残念ながら笛吹きに寝かされるまではPCの外の実際の話だ。俺たちは機会だから現実と夢を混ぜることは出来ないし情報を読み取ることでいろんなことが分かるから間違えない。」
「そっか。」
解ってる、夢の中に居る時はわからないけど夢と現実は違う。夢はどんなにリアルでもぼやけてたりハッキリしなかったり常識ではありえないことが起きてるから。こんなに頭がさえててハッキリ見えれば夢ではなさそうだ。
「…催眠術でもかけられていどうしたっていうならまだ納得できるんだけど。」
「俺だって信じらんねーよ、マスターは確かに人間で此処に来れるわけねーんだし。」
…ありえない、ネットの中に居るなんて。だって自分は人間だ。親に嘘つかれてない限り間違いない。献血はアンドロイドからはしないだろうし、病気もアンドロイドならしてないと思う。
「…ねえ、アイトならこういう事できたんじゃないかな。または笛吹きさんとか。」
…確かに二人なら現実なんてものともしない。
「まああれだ、なるようになる。いっそのこと楽しんじまおう是?なんかゲームの世界っぽいし楽しそうだ!」
…暴れたいんですね、わかります。
「お!宝箱見っけ!剣は行ってたけど俺使っても良いよな?他の奴どうせ使えねーし!」
「…好きにしなさい。」
「やりぃ!」
いつもケンカして買って帰ってきては暴れたらないと言っていたし、今日は思う存分発散してもらっておこう。もうなるようになる、あるがまま受け止めるしかないのかもしれない。
目の前で起きてる時点で夢であれ現実であれ自分の問題だ。自分たちでどうにかしなければ。
「それにしても…なんか声がすごくクリアに聞こえる。」
「それはスピーカー通してるわけじゃないですから。」
ああ、そっか。カイト達にとってはこっちが自分の世界なんだ。アンドロイドの体があるとはいえ脳はコンピューターだし。
「マスターの声もいつもよりよく聞こえんな、そう言われれば。」
「? ちがうのか?」
「全然。モノラルとステレオぐらい全然違う。」
と言われても音楽に疎い以前の問題だし作曲なんかも野生のカンな自分はよくわからない。
まあいいか。
「…せっかくこんなに声がクリアにここ得るならマスターがいれば歌って見せるのに。」
カイトが呑気に、ものすごく残念そうにそういった。
「歌か…でも確かに気持ちいいだろうな、こんなに声がきれいに聞こえる世界で思う存分歌えたら。」
「じゃあ同居人さん歌ってください。カラオケでもあんまり歌ってくれないし聞きたいです。」
本気らしい。目が輝いてた。というかアカイトまで期待してこっち見てる。
「…歌わないぞ。」
「えー、ンだよ、ちっとぐれーいーじゃんか。」
「ヤダ。」
「あー君、逆効果だよ。同居人さんは…」
「ああ、嬉しさのパラメーターとやる気のパラメーターと恥ずかしさのパラメーターの上昇率が一緒だっけ。あーあ、帯っちゃんがいれば歌わせられるのにー!!」
「…何で?」
帯人がいるからどうしたというのだ。
「帯人のおねだり十中八九断れないから。」
これはまたキッパリと仰いますね・・・・
「あー君、それ帯人に限ったことじゃないんだけど・・・アイトでも出来たし。あー君が頼めば?」
「バ!たのまねーよ!何でおれがこいつなんかにおねだりを!」
顔が真っ赤だ。
「照れてるんだあー君。あ、だからいつも帯人に任せたの?」
「…斬るぞこの馬鹿イトぉぉぉぉおおおお!」
恥ずかしさからか怒りからかか―多分両方だろうけど―顔を真っ赤にしてアカイトがカイトを追いかけた。
「ああこら、やめなさい!真面目に危ないし!それはおもちゃのバットじゃないんだよアカイト!」
「止めんなマスター!あいつは俺が斬る!」
「うわーん、同居人さん助けてー!」
カイトもカイトで大泣きで逃げ回るが一向に当たる気配はない。鍛えてるアカイトとは違い見た目普通の青年なのに…その反射神経は何処から?
アカイトは大人げないのでもちろん手加減なんて言葉は知らない。
「…命令コード使わなくてもこの分だと大丈夫そうだね。」
ゴォ!
風が起きて青い化弁が飛んできた。とても鮮やかで、きれいな藍色に透き通るような青…いろんな青があった。
「これは、いったい…」
森だと思っていたところの方から風は吹いてきた。振り向いて目を凝らすと青い何かが見える。
「…ちょっとだけ、見てきても良いよね。」
既にアカイトは本気ではなくふざけ始めている。いや、正直に言うとカイトをいじめて遊んでる。
…自分のことは忘れたみたいだしこのまま放置しておこうか。一寸心配させてやる。
こうして自分は一人、鮮やかな青の見える森へと向かった。
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