ディズニーのエイリアンの人形が、置いてあるカウンター。
その横の椅子に座って、りりィさんが湯栗さんと話をしている。

湯栗はいり（ゆくり・はいり）さんが経営する、雑貨とキャラクター商品のお店「ゆっくり」。
カウンターの上には、エイリアンと並んで、“はっちゅーね”の人形も置いてあった。

「まあ、面白い人形だわねー、これも」
湯栗さんは、つぶやいた。
「そうね。でも、このお店の人形は、不思議なしゃべり方をしないでしょ」
りりィさんは、“はっちゅーね”の頭をなでながら、言う。

「ちょっとおさらいしてみましょう。人形が、不思議なしゃべり方をするケース。理由を推理してみたの」
りりィさんは続けた。

「ふたつのパターンがあると思うわ。まずは、カンちがいね」

湯栗さんが目を丸くする。
「カンちがい？」
「ええ、そう。“はっちゅーね”は、人がしゃべったことをオウム返しにして、自分の声でしゃべる機能が付いてるの」
「オウム返し…」
「だから、ときどき、それが会話に混ざると、なんだか、ホントに会話しているような気になるのかも」

「なるほどねー」
湯栗さんは、うなずいた。


●一枚かんでる…？

りりィさんは、続ける。
「もうひとつは、…カスタマイズ。」
「え、カスタマイズ？」
「そう。“特別あつらえ”ね」

りりィさんは、腕を組んで言った。
「こないだ、霧雨さんのブースで彼女が持っていた人形は、明らかに“状況を読んで”話をしていたわ」
「それって、何かヒミツがあるってことかしら？」

湯栗さんは、首をかしげた。
「カスタマイズ、特別あつらえ、か。じゃ、それを“作る”方も、一枚かんでる…ってワケ？」

「うーん」
りりィさんは、ほおずえをついた。

湯栗さんは、ふと思いついて、言った。
「“はっちゅーね”は普通、どこで作られているの？」
「ニコビレにある、デフォ子さんの工房のはずよ」
りりィさんが答えた。


●ホントに不思議な人形かどうか…

「これはちょっと、調べてみてもいいかな」
りりィさんは少し考えて言った。
「“はっちゅーね”が、レイムちゃんとかの言う通り、ホントに不思議な人形かどうか」

「ふーん、そう、それで？」
「それによって、これから、うちのお店でも、扱いを広げるかどうか…。それとも、新しいテト・ドールの仕入れを増やすかどうか…決められるのよ」

「なーるほどー」
湯栗さんはうなずいた。

すると、ちょうどそこへ、店の倉庫から商品を運んできた、バイトのレンくんが入ってきた。

「あ！りりィさん、いらっしゃいませ」
ニコニコの笑顔で、彼は挨拶する。
「お邪魔してます」

それを見て、湯栗さんは、ひらめいた。
「そーねー。この子がいたわー」
ニヤリとして、彼女はつぶやいた。

「レンちゃんに、また、ひと働きしてもらおーかしらー？」(￢w￢*)