いつも感じる右肩のこの温もりに涙するのは、あなたがこの胸で泣いた証拠。
あなたが流した涙を、私が右肩で受け止めた記憶。

歌が大好きなあなたと歌が大好きだった私の、永遠の恋物語。


「っ………」

今夜も今夜とて最悪な夢に起こされる。
そろそろ慣れてもいい頃なはずなのに、心も体も全然慣れてはくれないみたい。
それだけ毎晩のように同じような夢ばかり見ている。
うなされる前に起こしてよ。

これからもずっと一緒だと当たり前すぎて疑いもしなかった14歳の夏、好きも嫌いも言えないまま、全ては終わってしまった。

ずっと隣にいた14年間の記憶はほとんど曖昧で、「現在」が楽しくて過去や思い出に浸る暇なんてなかった。
だから悪夢はずっとレンのイメージ映像みたい。
14年間、数えきれない会話をして表情を見てきたのにはっきり思い出せるエピソードは数えるくらいしかない。
3年経った今でも心にはあなたしかいないのに、思い出せることが少ないなんて、おかしいよね。

部屋の隅に置いてあるピアノ目をやると、同時に見えてくるレンの使っていたヘッドフォン。
それを手に取って軽く口づけてみる。
意味のないことだとわかってはいるのにキスせずにはいられない衝動は、病気なのかな。
毎日毎日、キスするたびに溢れてくる涙をもう止めようとは思わない。
全部、仕方ないの。

歌うことが大好きなレンが、歌で悩んで私の胸で泣いた日。
まだ、こんなにはっきり思い出せるのにね。
右肩に思い出されるレンの涙の温かさも、いつか思い出せなくなるのかな。
中学2年生で止まったままのあなたの時間と、進み続ける私との溝は一日一日、薄れる記憶と比例して胸が押しつぶされそう。

ねえ、私こんなに大きくなったの。
歌だってうまくなったし、体だって成長したよ。
お化粧だってこんなに綺麗にできるようになったの。
あなたに可愛いって言われたくて、一緒に歌いたくて、この3年間全部頑張ったの。
世界が反転したあの日、レンが大好きだったことは私の嫌いなことになったけど、私、ちゃんと頑張ったの。

レン、見えてる?

ヘッドフォンをピアノの上においてピアノを鳴らしてみる。
あの日から音は全て不協和音に変わった。
歌うことはレンを思い出すことだから大嫌いになった。
思い出すたび忘れることが怖くなった。
だけどそれ以上にレンの記憶がなくなること、薄れていくことが怖かった。
だから歌うしかなかった。
レンを一番近くに感じることができるなら、嫌いでも怖くても全部頑張れたの。

始まりはなんだった?
そんなの覚えてないよね、一緒は当たり前だったもの。
レンと初めて一緒に歌った歌を弾いてみる。

「リン…まだ朝早くて近所の迷惑になるから、」
ドアが開く音とその言葉の先は、私の叩きつけたピアノの音でかき消された。
思いっきり叩きつけたピアノから出た音はまさに不協和音で、頭も鍵盤に預けるともう涙が止まらなかった。
「…っ、カイトォ……ふっ…」
抱き起こされてとりあえず部屋の隅で抱きかかえられた。
「…リン」
床がひんやり冷たくて温もりを求めた。
「ん、」

思い出がたくさん詰まったこの部屋の隅で、今日もカイトとキスを交わす。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

追憶1


のりぴーさんの「右肩の蝶」の歌詞1番のイメージというか私なりの解釈です…。
違反になるようでしたら即刻削除するので教えてください…。

どんなことでもはじまりは些細なことでしょう
どこがいいかなんて聞かれても困る
綺麗な夜に惑わされたまま行方不明だから

↑あたりはレンとカイト両方を連想させたかったのに撃沈。

じ、自己満足だから2番も書いていいよね…
この二人同棲してんの?(他人事
うちのリンはやらないよ^m^

カイトいつもひどい役ばっかでごめんね><

閲覧数:731

投稿日:2009/04/25 23:07:19

文字数:1,339文字

カテゴリ:小説

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