*亜種・崩壊注意*
「重・・・」
「だから僕が持つって言ってるんですよ。」
「だって…」
持たせたら腕がもげないか心配になる細さなお前が悪い。
「…自分の荷物だし自分で持つよ。」
「今の妙な間は何?」
何でもない、と笑って袋を持ち直した。
冬でよかった。
上着を袋と手の隙間に入れて食い込むのを若干押さえられる。
「まあモヤシみたいだし持たせんのに抵抗があるのは解る。だったら俺に持たせろよマスター。」
有無を言わせず袋を取り上げられた。
「自分で持つって。」
「こんなの重いって言ってる奴に持たせらんねーよ。」
「…ありがと。」
素直ではないが彼なりの優しさだ。
「…そんなに、頼りない?」
当然申し出をやんわり断ったのに理由をズバッと言われた帯人は面白くないわけだが。
うん、頼りない。自分より見た目年上だけど白いしひょろいし。
「家では大活躍じゃない。家事もできるし勉強も…自分より…出来る…し…さ…」
というかバカイトという単語がある位だからと知能を低く設定されたハズのKAITOが数カ月で難関大学の入試問題集もスラスラ解くのは一体何事だ。
彼に何1つ勝てないのでちょっと自己嫌悪する。
「二人とも口開け。」
「へ?」
「は?」
いきなりの言葉に間抜けな声を出すと口が開いた瞬間一口サイズのアイスを突っ込まれた。袋とアイスの箱を右手に、左手にはアイスを刺すための楊子が握られている。
「ふめは!?」
「!?」
歯が悪いため急に入ってきた甘いものと冷たいものがしみる。帯人はアイスクリーム頭痛に襲われたようだ。
「何すんだ!」
「そうだよアカイトオオオオ!」
「はは、辛気臭―顔してんじゃねーよ」
あの荷物で全力質素で逃げ出した。…どこまで体力あるんだあいつ。荷物ほぼ全部持ってるのに。
「追うぞ帯人!」
「はい!マスター!」
必死で追いかけるが、差は開かず縮まらずだ。
結局家までついてしまい、玄関に飛び込んだ。
「ただいまー!」
「ただい・・・ま・・・」
「・・・。」
息切れもしてない赤糸がそのまま冷蔵庫へと向かった。化け物か。さすがに帯人は息を切らしていたし、実は一番体力がなかった自分は座り込んでいた。
「アイスは冷蔵でいいよな。」
あの野郎、全部メルトさせる気か。
「冷凍!」
共用の大きな冷蔵庫に買ったものをしまおうと扉を開けた瞬間、アカイトが固まった。
「あれ?どうした?電池切れ?」
「アンドロイドは燃えるゴミですかね?」
いつもなら突っ込みが返ってくるところだが、電池が切れかけたロボットのように彼はこちらを向いた。
「ま、マスター…いる・・・あれが、いる・・・!」
「は?」
なんかやったっけ?
Gはまだ引っ越してからお目にかかってないし種が発芽するのは早すぎだ。カイトと共謀した変なアイスも最近は作ってない。
とりあえずフリーズしてるアカイトのもとへ行く。
いた。青いのが。
「…どっちが、ますたぁ?」
それが発するは昔カイコの声を作る時聞いたジェンダーだけを0にした時のカイトの声。
見た目は手のひらサイズでなんかよく動画に出てくる感じのミニチュアカイト。
色や服のデザインは公式通りでポケットっぽいものが左腕と右腕にあってマイクまでちゃんと付いてるではないか。でも顔は幼い子供のそれで…かわいい。
カイトとの違いは訳目―つむじかもしれない―に葉っぱが生えてることか。
まだ残る一口サイズの青い個体と見比べて、ふと思う。
「というか一口サイズに入れたのに妙にでかいような…」
元のアイスと大きさが合わない。
「御免なさい。お腹がね、空いてね、みっつね、食べちゃったの」
話し方まで小さい子なんて…卑怯だ!卑怯は正義だ!何言ってんだ自分!
「…そのまま悶え死んでしまえ。」
珍しく嫉妬してくれたのか玄関で帯人がつぶやくのが聞こえた。
「大丈夫?腹壊さなかった?」
何かの黒の絵の具は普通のチューブ一本飲むと死ぬというが青い絵の具はどうだったか。
黒が入ってない保証もないわけだが。
「ううん、だいじょうぶだったの。おいしかったよ」
とりあえずこれ以上へんなもん食わせるわけにいかないので残ってるアイスを食う前に冷凍室から回収する。
手を入れると、肩までよじ登ってきた。冷凍庫にいたからか冷たい。
「俺、入れとくから・…その…」
アカイトの視線の先には帯人。うん、忘れてない。
「ありがと。帯人、アイス食べようか。君もいる?」
食ったばっかであろうカイトにも一様聞いてみる。なんとなく何か飲ませたり食べさせて解毒しといたほうがいい気がした。解毒といえば牛乳か?昔犬に飲ませて何かを解毒したって聞いたような聞かないような…。まあアイスも乳製品だしな。
「たべる!」
「…一寸なら。」
とりあえず拗ねた帯人の機嫌を直すのが目的なので彼のお気に入りのブルーベリーにする。
実を言うとブルーベリーは好まないのだが…帯人のためだ。仕方ない、腹をくくろう。
モノはついでだ。内職しているカイトにダッツの差し入れをしてから、自室に向かう。
「ほらチビ、口開けてみ。」
一人で食べるには大変そうなので小さい口に入る程度すくって入れてやった。
ゴールデンハムスターやきんくまに近いものがある大きさなのでヒマワリの種ぐらいの大きさにしてみた、が、少し多かったようで口からはみ出た。ほお袋ない分入りきらないのだろうか。
何とか食べるがそんなにうれしそうな顔じゃない。
「…これね、あまりね、好きじゃね、ない。」
・・・カイトのアイスのせいで変な味覚が付いてるんじゃないと信じたい。
「そっか。まあ好き嫌いはあるよね。」
しかし、これで確実に半分近く自分が食うことが決定した。
帯人はお腹が弱いので半分以上食べられない癖に軽い潔癖症で食べかけのアイスをもう一度冷蔵で取っといても食べない。
カイトは設計ミスでブルーベリーがアレルギー、アカイトは問題外。カイトマスターは寒いと冷蔵庫にすら近づかない。
「おいしいですね。」
「そうだね。」
気を遣わせて好きなものなのに買わない食べないになってはかわいそうだし小食なので彼には食える時食えるものを食ってもらいたい。
「ますたぁ、おうちに、おにいちゃん、いっぱいだね」
「そうだね」
そういえば幼稚園ぐらいって種語じゃなかったか…?
それに異様に発芽が早くないか…?
謎は残ったが何とか自分の分のアイスは残さないで食べ終えた。
「亜種注意」手のひらサイズの彼 その②「KAITOの種」
http://piapro.jp/content/?id=aa6z5yee9omge6m2&piapro=f87dbd4232bb0160e0ecdc6345bbf786&guid=onにて。
帯人がいるせいか4コマがヤンデレばっかなのですがそんなにやばいの各文章力ありませんぜ旦那。
はい、カイトと亜種以外は見えてない自分です。
今回は寝る前に1作、部活向かう前に2作書置きしたんでいっきに行きまーす
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