私達は何も言わないのに手を繋いだ。

まるでテレバシーみたいに・・・

そういえばグミが恋人にはテレパシーがあるんだよって言ってたっけ・・・

すっかり日も暮れて、辺りの光はキラキラ光る街明かりだけ。

「着いた。レン、どーせお母さんだけだし上がってよ」

レンは少し戸惑ってから頷いた。

「リン！？心配したのよ！？」

「ごっ、ごめんねお母さん・・・」

「レン君・・・ね。この間はごめんなさい。痛かったでしょうし、ショックだったでしょう」

「いえ、いいんです。大事な一人娘ですし、心配なのは当たり前です」

「ところでリン。大人になったわね？」

「へ？」

「ごめんなさい。リンちゃん食っちゃいました。」

く、食う！？

「あらあ♪若さ故の過ちかしら。話があるの。上がって頂戴」


＊


「レン君は私の夫と貴方のお父様の関係は知っているかしら。」

「はい。大体勘付いていました」

お父さんの勝手な嫉妬ね。

「そう。じゃあ、貴方のお母様が専務になるという話は？」

「確定したんですか！？」

「ええ。それでうちの父親はまた嫉妬を重ねたのよ。だからレン君を受け付けなかった」

「仕方ないですよ・・・」

「話はここからよ。うちの父親は、専務の仕事を増やして、レン君とリンを引き離すためにニューヨークに行くと言い出したの。勿論、またみじめな想いをしないように勉強するってのもあるでしょうけど」

「え！？聞いてないよお母さん！」

「リン、お父さんに内緒ね。言うなって言われてたんだから」

「ここからは貴方達で考えるのよ。このままじゃ、リンは間違いなく連れて行かれるでしょうね。密かに準備をしていたから、出発は一週間後よ」


悲劇のジュリエットになるか、喜劇のシンデレラになるか。


「お母さん、今日、お父さん帰ってくるの？」

「今日はいないわ・・・日本での仕事が忙しいのでしょう」

「レンの家に泊まってもいい？」

お母さんはニヤニヤしながら頷いた。

「そっそんな顔しないでよっ」


＊


レンはゆっくり歩いてる。

多分考えてるんだろうな。これからのこととか・・・

「あれ～？レンだ！久しぶりー」

「・・・ネルか」

「そういえばレンのお母さん、専務になったんだってねー♪」

「それで？」

レンはあからさまに機嫌が悪い。

それにしても綺麗な人だなぁ・・・

黄色くて長い髪をサイドテールにしてるし、スタイルもいい。

「ヨリ戻そうかと思ってんの」

この人・・・

レンの元カノ？

ネルさんの綺麗な手がレンの頭に触れる。


すっごく嫌な気分になった。


「触んな」


レンは今まで見たことも無いような怖い顔をして睨んでいる。

「俺彼女いるし」

「あー横にいるの彼女さん？」

「鏡音リンです。同じ苗字だけど決して親戚とかじゃありませんので」

「へぇ～可愛いじゃん。じゃ、もうアンタに用はないから。」

ネルさんは身を翻して去っていった。

「あれ、俺の元カノ」

「うん。分かったよ」

「大丈夫。俺はリンが好きだから。絶対離れないから」





＊





「あ～リント？鏡音リンってあれ？」

『なに？ネル会ったの？』

「そー。またレン騙して巻き上げようと思ったんだけどね」

『リンちゃん、レンと付き合ってるしな』

「リント、あたしと協力しない？一石二鳥だよ」





二人は知らず、夜道を歩き続ける。