1月8日 イヤホンの日

 夕食後のまったりとした時間、ソファでのんびりするのがしあわせ。買ったばかりの文庫本を開いて、耳に入れたイヤホンからは読書の邪魔をしない程度に音量を絞った音楽を流して。忙しない毎日の中で、ひととき、ほっと息をつく。
「マスター、寒くないですか?」
 柔らかに呼びかけられて視線を上げると、ブランケットを差し出すKAITOがいた。もう片方の手には湯気の立つココアの入ったマグカップも持っている。まったくできた嫁だなぁと思う。
 お礼のついでにそう言ってみたら、えぇ、とKAITOは顔を赤くした。
「嫁って、マスター、俺、男性型です……!」
 あ、そこなんだ。KAIKOじゃないです、などとよくわからない方向で言い募るKAITOにはいはいと頷いて、ソファの空きスペースをポンポンと叩く。
「ほらカイト、座って座って。ブランケットもココアもありがたいけど、それだけじゃ足りないのですよ?」

 片手にココア、片手に文庫、耳には心地良い音楽を流すイヤホン、隣にKAITO。ふたりでもふもふのブランケットに包まれば温かく、軽くもたれかかってみればなおあたたかい。
「ふふ。寒がりさんですね、マスター」
 ブランケットの下で腕を回して、KAITOが嬉しげに擦り寄ってくる。わんこみたいなひとだなぁ、とは常々思っているのだけれど、前にそう言ってひどく拗ねられてしまったことがあるので口を噤む。人は学習するのです。代わりにイヤホンを片方外して、ご機嫌なKAITOに差し出した。
「はい、カイト。はんぶんあげる」
 これは最近のお気に入り。文字の海に沈む私と、それを隣で眺めるKAITOを音楽が繋ぐ。それぞれの時間を過ごしながら、同じ時間を共有もしている。それでも、あまり本ばかりに没頭してしまうと、おおきいわんこが拗ねてしまって苦労するのだけど。
 KAITOは甘く瞳を蕩かして、片方だけのイヤホンを受け取り、慣れた手つきで耳に差し入れた。そうして今夜も二人、手を繋ぐようにイヤホンで繋がって、ささやかで贅沢な時間を享受するのだ。

ライセンス

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日めくりKAITO <1/8>

あ ま い (吐血

えー。今回のこの日めくりシリーズは基本ほぼ即興、思いつくままに たーっと書いちゃってるのですが。
……書き始めたその瞬間までは、こんなはずでは……。
普通に仲良しなマスターとKAITO、でも通る程度に、カイマスと見ればカイマスかなくらいになる見通しだったのだが←

閲覧数:207

投稿日:2015/01/08 23:11:25

文字数:870文字

カテゴリ:小説

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