時々こんな話を聞く。『鍵を置き忘れてオートロックの扉閉めちゃったんだよね』正直言って冗談だと思っていた…が!

「暑い…。」

鍵は持っていたが上着のポケット、ついでに携帯も。暑いからと言って上着を脱いだのが間違いだった。もうサウナ状態の倉庫に閉じ込められてどの位経つだろうか、暑さで眩暈がして喉もカラカラだった。

「誰…かぁ~…ゲッホ…!ゲホゲホ…!」

声が擦れて来た。このままじゃ熱中症になるな…影に居てもたかが知れてるし…せめてカメラ見て気付いてくれる事を祈るが…。

「あっちぃ~~~~!!」

暑さに苛立ち壁を殴るが、しまった埃が舞って余計暑い、マジで死ねる…。

「…何してるの…?」
「―――っ!!お前っ…朝…じゃない花壇!!」

ドアの小窓からぴょこぴょこと髪が見えた。

「…大丈夫ですか…?」
「ちょ…開けて!鍵開けて!上着のポケットに鍵あるから!」
「はぁ…。」

天の助け…!神様ありがとう…!

「はぁ~~~死ぬかと思った…。」
「何やってたんですか?」
「いや、備品整理だけどさ…うっかり扉閉まっちゃって、もうほんとありがとう!」
「それじゃ失礼しますね。」

朝吹浬音は握った手を思いっ切り振り払うと、そのまま踵を返して立ち去ってしまった。密さん以外にはとことん愛想無いな…。

「…っ?!」

急に目の前が黄色く見えたと思うと、立って居られず膝を着いた。目が回って立ち上がれず暫く蹲っているとふっと影が落ちた。

「…はい、お水…。」
「え…?」
「…立てますか?手を貸しますから日陰迄行った方が良いです。」

手を借りても尚フラ付きながら何とか木陰に移動した。貰った水を飲むと顔から熱が引く様に楽になった。既に軽い熱中症だったのかも知れない。ペットボトルで顔を冷やしてると額に冷たい感触があった。濡らしたハンカチだった。

「これでおでこと首冷やして頭低くしてれば大丈夫です。」
「詳しいな。」
「…慣れてますから…。」
「…膝貸して?」
「は…?」

固まってる内に横になり膝に頭を乗せた。焦って顔を叩く手はそのまま捕まえた。

「お、重いです!」
「ちょっとだけ。回復したら退くから。」
「もう十分元気じゃないですか!」
「帽子屋さんなら良いの?」
「…っ!!」

彼女はそのまま言葉を詰まらせると、トマトみたいに真っ赤になって俯いた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

DollsGame-40.カタクリ-

熱中症には充分注意して下さい

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投稿日:2010/08/01 14:26:39

文字数:990文字

カテゴリ:小説

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