「どうしたの?」
目の前の少女は答えない
「何か嫌なことがあったの?」
少女は蹲る
「僕にできることはないかな?」
僕は笑顔だ
「あのね、あのね……」
君が泣いてるその時は その分僕が笑ってあげるんだ
「あー、またこんなに破いてー」
誰かさんの声が響く
これは叱られてるっていうことなんだろうなぁ
でも僕は笑顔
「いやぁ、ごめんなさい」
「ちょっと転んじゃってー」
えへへと笑う僕に厳しい目つきの誰かさんだけど、納得してくれたみたいだ
人を笑顔にしてあげるのが僕のお仕事
だからその為ならどれだけ体を張っても構わない
どれだけ転んでも
どんなに痛くても
どれほど馬鹿にされても
それを嫌だなんて思わない
だってそれが僕の喜びだから
敗れた衣装をチクチク縫って修復ができたら 今日も舞台が待っている
僕の役目はおどけて皆を笑わせること
皆を驚かせるのはもう一人の役目
僕はダメダメな役なんだ
どうして僕がこっちの役になったのかは分からない
だけど思うんだ
きっと神様がそういう風に僕を見込んでくれたんだって
ほら
暗い風には考えたくないからさ
まずはボールに乗って僕が出て行く
最初は順調にころころって転がすんだ
でも舞台の真ん中辺りに来たところで足を滑らすんだ
そうすると僕はドシンって地面に落ちることになる
皆笑ってくれる
僕も笑う
気を取り直してボールに乗ろうとする
でもこれって結構大変なんだ
ボールってかなりの大きさだからさ
これまた失敗
また皆笑ってくれる
僕も笑う
そしてションボリしたふりをしてボールを押して舞台袖へ
それと交代にしっかりさんが出て行く
席からは歓声が上がる
羨ましいなんて思わない
だってこれが僕に任せられたお仕事だから
全部終わったら全員で舞台に出る
そこには太った団長さんから小さな子供まで
皆それぞれの役目を果たして此処に居る
ふと目に入った女の子
何故この時に目に入ってきたのかは分からない
きっとこういうのを『運命』とかそういう曖昧な表現で表すんだろうな
女の子――君――は笑ってなかった
とっても悲しい顔をしていた
どうして?
僕はそれを問いかけることが出来ない
あまりにも遠すぎるから
僕は君に会えない
僕は君を知っていても君は僕を知らない
どうしてかな
君はそんなにも悲しい顔をしているのにね
横に居るパパとママは笑っているよ
君に何かを話しかけてる
僕のことを指差してるのかな?
「ほら、あのピエロさんを見てごらん?」
「とっても可笑しい顔をしてるわね」
そんな声が聞こえた気がした
悲しい顔の君と目が合った
……気がした
外に出ると君が居た
パパとママは居なかったけどね
「どうしたの?」
君は潤んだ瞳で僕を見つめてくる
「何か嫌なことがあったの?」
その目には涙が溜まり……
「僕にできることはないかな?」
泣き出してしまった
「あのね、あのね……」
「……痛くないの?」
予想外の言葉だった
それは僕に対して言ってくれてるのかな
「お兄さんはいっぱい転んでいっぱい転んで頑張ってるのに」
「ぱちぱちをいっぱい貰えたのは痛くないもう一人だったよ」
「ねぇ、痛くないの?」
「嫌じゃないの?」
「私だったら嫌だよ?」
「可哀想だよ……」
そんなことないよ
僕はねそれが嬉しいんだから
「そんなの……おかしいよ」
おかしくないんだ
僕は、僕が痛くても皆が笑ってくれればそれで良いんだよ
「私は嫌だ」
「私は、頑張ったなら頑張った分だけ皆に認めてもらいたい」
「だってそんなの可哀想だよ」
「嫌だよう……」
君は優しいんだね
「そんなことないよ……」
じゃあどうして僕のことで涙を流してくれてるのかな?
「それは、可哀想だから……」
そう思ってくれてるそのことが、優しいってことなんだよ
それに僕は可哀想じゃない
だから泣くのを止めて?
「だ、だめだよ……」
「貴方は頑張ってるんだよ……」
「それを認めてもらわなくちゃ……」
十分認めてもらってるよ
「違う、違う……」
「こんなの違う……」
違くないよ
「嘘はさ」
「好きじゃないよ」
「それにこの嘘は悲しい嘘だよ」
嘘なんて一つも吐いてないよ
「おかしいよ……」
「嫌だよ……」
「誰かに探し出して欲しい」
「誰かに……」
コメント0
関連する動画0
オススメ作品
6.
出来損ない。落ちこぼれ。無能。
無遠慮に向けられる失望の目。遠くから聞こえてくる嘲笑。それらに対して何の抵抗もできない自分自身の無力感。
小さい頃の思い出は、真っ暗で冷たいばかりだ。
大道芸人や手品師たちが集まる街の広場で、私は毎日歌っていた。
だけど、誰も私の歌なんて聞いてくれなかった。
「...オズと恋するミュータント(後篇)

時給310円
ピノキオPの『恋するミュータント』を聞いて僕が思った事を、物語にしてみました。
同じくピノキオPの『 oz 』、『恋するミュータント』、そして童話『オズの魔法使い』との三つ巴ミックスです。
あろうことか前・後篇あわせて12ページもあるので、どうぞお時間のある時に読んで頂ければ幸いです。
素晴らしき作...オズと恋するミュータント(前篇)

時給310円
月夜が映し出す 紅のキス
愛はいくつ黒い涙に変わるのでしょう?
夢、乱れないで 塗り替えないで
息を殺し 重ねてゆくの
夢、壊さないで 無垢でいさせて
君の口を指で麻痺させ 塞いでる
嗚呼 バラの意味を知る
貴方は誓えるの?
月夜が映し出す 紅のキス...Sub Rosa

おんださとし
無敵の笑顔で荒らすメディア
知りたいその秘密ミステリアス
抜けてるとこさえ彼女のエリア
完璧で嘘つきな君は
天才的なアイドル様
Oh my savior
Oh my saving grace
今日何食べた?
好きな本は?
遊びに行くならどこに行くの?...YOASOBI アイドル(Idol)

wanyueding
ドッペルゲンガー / はるまきごはん feat.初音ミク
4/4 BPM217
凪いだ四角鉄塔が今日もうねる
まるで私たちを見つめるように
記憶だけじゃ君の手を取れない
私、人間じゃないから
この気持ちだけは
本物だと思うけど
小さくなった太陽
伸びた影法師...ドッペルゲンガー(Lyrics)

はるまきごはん
紙切れ舞う部屋前線特区
別け隔てなく理由など訳ない
でも欲しいかい
衛生倫理に背いてでも重ねたI know
始末に負えない暴走でも止められない
竜巻みたいに踊ってみようか?
間違い探ししに街に行こうか
マトリョーシカ
天然色には疑いようもないのはI know
記録がパンクし季節を越えもう止められない...サイレンの街

出来立てオスカル
クリップボードにコピーしました
ご意見・ご感想