「何だお前は?!」
俺は目の前の人物に言った。
目の前には、黒い戦闘服を纏った人影が背を向けているのだ。
その背には対戦車ミサイルと思われる兵装を背負っている。
感情に身を任せ、赤き電撃を纏う黒い彼女と俺の間に、それは立ちはだかった。
一瞬シックスかと思ったが、明らかに背が小さい。
178センチの俺より十センチ以上小さいのだ。
では、何者だ?
無論、顔はマスクにゴーグル、そしてヘルメットで隠され確認することは出来ない。
その人物は一言も語らず、両手ある大型のハンドガンを鬼神と化した彼女に向け発砲した。
「ムァアッッッ!!!」
だが、もはや彼女には弾丸など無意味に等しかった。
目の前の戦闘服は両手にしたハンドガンを彼女に向け容赦なく乱射するが、その弾丸は全て彼女の持つスタンナイフに弾き飛ばされた。
なおもそれは撃ち続け、マガジンが空になると俺に振り向いた。
そして、背負っていた対戦車ミサイルを背から下ろすと、ものも言わず俺に差し出した。
「これを俺に・・・・・・?しかし何故こんなものを。」
その者はミサイルを俺に押し付けた。
いいから受け取れ、と言わんばかりに。
俺はその者の真意を理解しかねながらもミサイルを受け取り、バックパックに収納した。
それを確認するとその者はハンドガンにマガジンを再装填し、再び鬼神の如き彼女に向け乱射した。
今度はナイフにかすりもせず、彼女の姿が赤い雷を放つ黒い風と化し次の瞬間その者の対し突進した。
幾つもの斬撃が黒い戦闘服に襲い掛かり、黒い戦闘服のその者は数発を銃で受け流した。が、間髪いれず繰り出された蹴撃に対しては防御しきれず、深紅の電撃を帯びた彼女の脚が数十発単位で戦闘服の腹部に吸い込まれ、突然姿が消えたかと思うとコンピュータの大型モニターに叩き付けられていた。
大破したモニターに食い込んだその者は自らの力でその身を引き戻し、床に降り立った。
だが、容赦ない追撃がその者に襲い掛かった。
黒い風となった彼女の攻撃に必死の防御をしながらも、その者は首のみを俺に向け、顎をしゃくった。
行け、と言っているのだろうか。
「誰だか知らないが・・・・・・すまない。」
俺は礼の言葉を残し死闘の舞台となってしまった電子演算室を後にした。
向こう側の自動扉に出ると同時に、その扉には自動ロックがかかり、後戻りは出来ない状態となった。
扉の向こう側からは、雷の爆発音と、何かが衝突しあうような衝撃音が相次いでいた。
あの戦闘服の人間は一体・・・・・・。
シックスと同じ黒い戦闘服を身につけていたが、身長は低く、それに一言も喋らなかった。
あの者が何故俺を助けたのは、大方シックスからの命令か、俺を陸軍の工作員と判断した末の独断によるものだろう。
しかし、何故対戦車ミサイルを渡したのだろうか。
ひとまず、俺は無線で少佐を呼び出した。
「少佐、人質が捕らえられているとの情報があった地下一階の電子演算室に侵入したんだが、とんでもない目に逢った。」
『どうした?』
「人質なく、変わりに俺以外の侵入者と遭遇し、成り行きで戦闘になった。」
『侵入者?君とあの部隊以外に、その施設に潜入している人間は聞いていないぞ。どんな姿だった?』
「黒いバイザーで顔を隠していたから顔は知らないが、黒いコートを着込み、中にパワードスーツかスニーキングスーツのようなものを着ていた。」
『ふむ、じゃあ陸軍の人間かもしれんが・・・・・・。』
「だが、それだけじゃない。」
『?』
「あれは少女だったんだ。」
『何だって?!』
少佐は驚きの余り声を荒げた。
「間違いない。身長は俺より十センチほど小さく、言動も全て少女のものだった。」
『そんな馬鹿な・・・・・・。』
「本当だ。だが、多分アンドロイドだろう。彼女は卓越した身体能力を持ち、警備の兵士達をナイフ一つで全滅させた。しかも殺さずにだ。」
『・・・・・・まるで忍者だな。』
少佐のその例え方には俺も賛成した。
『デルさん。ぼくも少し聞きたいことがある。』
ヤミがまた無線に割り込み、俺に問いかけた。
「何だ。」
『その、彼女の、髪色と髪型を教えてよ。』
何故そんなことを聞くのかと言い返したかったが、そんなことをしても多くは語ってくれないだろうと俺は予想した。
彼女の声色を聞けばよく分かる。
「・・・・・・バイザーから長い黒髪を二つに結んでいた。ああいうのを確かツインテールと思ったが。」
『黒い、ツインテール・・・・・・?!』
ヤミが突如驚愕した声を上げた。
『少佐。もしかしたら、あの子かも・・・・・・。』
『そんな!じゃあ何故こんなところにいるんだ。』
『でも黒髪でツインテールのアンドロイドなら、彼女しかいないよ。』
意味深な言葉を交わす少佐とヤミ。
さっきからこの二人は、何か思い当たることがあるクセに俺に少しも教えようとしない。
俺はそのことに業を煮やし、ヤミに問い詰めることにした。
「ヤミ!少佐!何か知っているんだろう。だったら俺にも少しぐらい説明したらどうだ。」
『・・・・・・分かったよ。』
ヤミは、無線の向こうでふうとため息をつき、答えた。
『彼方がであったそのアンドロイドは、元空軍所属の戦闘用、FA-1、いえ、雑音ミクだよ。』
「雑音・・・・・・ミク・・・・・・。」
FA-1の名だったら、俺も耳にしたことがあった。
彼女言う通り、空軍で戦闘用として運用されていたらしい。
かなりの好成績を残し、後の派生型や量産型の基礎になったとだけ聞かされていた。
だが、少女型であったり、雑音ミクなどと言う通称があったり、ましてや髪型がツインテールなんてことは記録にもないだろう。
「FA-1・・・・・・あいつが?」
『そう。かつて、ぼくも空軍に所属していた頃があった。そのとき同じ基地に居合わせていたよ。だから彼女のことはよく知ってる。だけど、その後僕は事故で一度大破しちゃって、その間に彼女は軍から離れていった。その後のことは知らない。』
「・・・・・・だが、そのFA-1がなぜここに。」
『そんなことはぼくも知らない。』
『デル・・・・・・俺もかつては空軍に所属していて、彼女のいる部隊の指揮を執ったことがある。だが、彼女は軍を去ったはずなんだ軍の計らいでな。』
少佐も念を押すように言う。
一瞬沈黙が流れたが、俺はすぐに話を切り替えようとした。
「ところで少佐。そのFA-1と対峙したとき、シックスの部下が俺を助けてくれたんだが、そのときにそいつから対戦車ミサイルを貰ったんだが。」
俺はバックパックからあのミサイル発射筒を取り出し今一度確認した。
それはただの鉄の筒ではなく、モニターやボタン類などが見られる精密機械が取り付けられている。
『対戦車ミサイル?』
「そいつが背負っていたものだ。これは・・・・・・ニキータだな。」
『ニキータ?無線ビデオカメラ誘導の?』
「ああ。」
『ふむ。もしかしたら今後必要があるために、君に渡したのかも知れんな。』
「戦車と戦う機会があるとは思えんが・・・・・・。」
『それ以外にも使い道はあるだろう。一応持っておくといい。』
「分かった。」
『デル。ところで電子演算室にいた人質はどうなった?』
「分からない。どこかに逃げていってしまったかもしれない。」
『そうか・・・・・・では、先ずはそこの近くにある大型雑庫にいる人質の研究員と接触するんだ。救出すると同時に有益な情報も手に入れろ。逃げた人質については後回しだ。』
「・・・・・・了解。」
了解とだけ言って無線を切ったが、実を言うとシックスにも訪ねたいことがあった。
しかし今はそこまでしている余裕はない。
俺は大型雑庫の中にまだレーダーの反応があることを確認し、その方向へと向かっていった。
背後の扉からは既に雷音も衝撃音もなく、無人のごとき静けさだった。
SUCCESSORs OF JIHAD 第二十二話「あの人」
シクちゃん再登場!!いぇーい☆
あれで終わるわけないでしょ?
ちなみにデルのバックパックのサイズにツッコまないこと
「FA-1」【架空】
日本防衛軍空軍で開発された戦闘用アンドロイド。
主に制空戦闘を主任務としていた。
2019年に空軍の試作機実験基地にて初飛行を終え、その後幾多にも渡る実験と性能評価を経て水面基地に実戦配備され、強化人間とゲノム人間で構成された「ソード小隊」に所属していた。
飛行には専用のアーマーGスーツとウィングを装着し、他の航空機では絶対に不可能な空中機動を多数成功させている。
現に実験段階でも、単機で空軍のアグレッサー(戦術教導隊)六機を相手に勝利し、対強化人間の空中戦でも僅か二分で勝利を収めている。
戦闘用であるにも拘らず人間の少女と見紛う外見をしていおり、後に開発されたタイプにも影響している。何故このような姿に開発されたのかは記録にない。
基地内ではアイドル的存在だったらしく愛称として「ミク」と呼ばれていた。
その後も水面基地に配備する予定だったが、例の事件「水面基地襲撃事件」の数日後に軍の現実権を握るクリプトンによって軍から強制退役されその後の消息はつかめていないが、クリプトン直属の民間会社に配属されたとの情報がある。
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