とりあえず、あの後はいつもどおり国を滅ぼして王宮に戻った。
それから何度か国を滅ぼしに行ったが、その間の記憶は無い。
あの日からリンのことで頭がいっぱいになってしまったから。
そして、ついにこの日がやってきた。
幾百年繰り返してきた結果だ。
残るのは・・・彼女の居る国だけになった。
そして、最後の命令・・・
「さぁ、お前の片割れの居る国を滅ぼして来い。そして・・・」
「え・・・」
今、この人はなんて・・・きっと聞き間違えだよな。
「なんだ聞いてなかったのか?片割れの国を滅ぼして来い。
そして、お前の片割れのエネルギー体を持って来い」
他の奴に取られても癪だしな。そう言った王は楽しそうに僕を見ていた。
それって・・・・リンを殺せってことだよな・・・
そんなこと僕に出来るわけが・・・
「爆破装置。出来ないなら今ここで使っちゃうよ?」
あぁ・・・人は自分のためなら何でも犠牲に出来るんだな・・・
とりあえず・・・とりあえず・・・
「わ、かりました。行き、ます」
そう言うしか僕に道は残されていなかった。
どうするかは後で考えよう。
今はあの装置を使われないようにすることだけが先決だ。
この日のうちに僕は支度をして向かった。リンのいる国へ。
僕は国を滅ぼすことよりも何よりも早くリンに逢いたかった。
けれど目立たないようにしなければいけない。
それが僕の仕事の中で最優先しなければいけないこと。
怪しまれないようにゆっくり歩いているのに鼓動はその何倍もの速さで動いていた。
早くしないと時間がないのに・・・。
制限時間は1ヶ月。それを過ぎた場合はリンを爆破すると言われた。
この期間で僕は何とかすることができるだろうか。いや、しなきゃいけない。
やっとあの、枯れた森に着いたときには既に1週間が過ぎていた。
ゆっくりゆっくりリンの部屋に近づく。
この扉の前に立つまで長かった。
被っていたフードをとって深呼吸を一回して、ドアを開けた。
「・・・っ!!」
驚いた顔でこちらを見ている少女。
あの時と変わらない。
僕と同じで歳をとっていない状態から見て多くの生命を奪っていたのだろう。
いや、“奪っていた”ではない。現在進行形で奪っている。僕からも。
今まで奪ってきた生命エネルギーはたくさんある。がこのままでは僕も直ぐになくなってしまう。
仕方が無いからリンから同じ分だけもらって相殺することにした。
でも、やっと逢えた。自然と顔が笑顔になり、彼女の頬に触れた。
リンはずっと震えていた。きっと怖かったのだろう。
部屋に来る人の生命を自分の意思とは関係無しに奪ってしまうことが。
やっぱり僕には出来ない。彼女を犠牲にするなんて。
「どうしてよ・・・平気なの・・・」
やっと口を開いたリンだったが驚いたような顔で僕を見ている。
「だって、リンと同じ能力を持ってるんだよ?」
僕の言葉にリンは目を丸くした。
どうしたのだろうか。様子がおかしい。
「リン・・・?」
「あの・・・彼方は誰?」
まさか、あの時・・・記憶ももらってしまったのか・・・?
確かに僕には記憶がなかった。
いや、違う。
頭が割れると思った、あの暴走をした一瞬だけ頭に浮かんだリンと手を繋いでいる映像は僕の記憶のはずだ。
ということは、記憶は僕にもあったんだ。
「何も、覚えてない・・・?僕だよ。レンだよ?」
「レ、ン・・・?」
リンは本当に何も覚えていないようだった。
でも、それなら・・・僕が何をしても彼女は悲しまないだろう。
僕は決めたんだ彼女を解放するって。
もうその決心が揺らぐことは無い。
大好きな彼女を守るためなら何だってする。
「大丈夫、ほら笑って。僕はリンを自由にするために来たんだ。もう、独りじゃないよ」
「王子・・・様?」
リンの腕を引っ張り抱きしめた。
細い体。ちょっと低い身長。昔と同じ何も変わらない。
泣いている彼女の涙を指で掬い上げる。
「僕も昔、此処にいたんだよ」
子供をあやすように背中をトントンと叩いてあげる。
一向に泣き止まないリンの顔は酷いものだった。
顔を見なくて済むように思いっきり抱きしめた。
いや、顔を見られたくないのはきっと僕だ。
こんな泣きそうな顔を今の彼女には見せられない。
リンが落ち着くまで暫くそうしていた。
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