これはそんなとある日のことで。
「――君は?」
目を覚ますと、僕は真っ暗な空間にいた。
そして、ひとりの人間がいた。
「僕かい? 僕の名前は…キドだ」
「キド? どういう意味だ? なんで君はここにいる?」
「おっと、少なくとも僕は君に敵意なんて持っちゃいないよ。それだけは言っておこうじゃないか」
そう言ってパーカーのフードを脱いだ人間は、女性だった。なんというか、男装に近い服装だったので解らなかったとも言えるが、そんな彼女はこの空間が暑いのか、パタパタと手で扇いで。
「ふう……、さすがに八月でパーカーは暑いな……。まあ、いろいろと目的があるので仕方ないが……」
キドはそう言って、僕に近づいてきた。
僕も動こうとは思うが、動けない。
「さて――単刀直入に言おう。僕は君を助けに来た」
「……?!」
「まあ、そう慌てるな。――とりあえずこれだけは言っておこう」
「?」
「君はこれからここを脱出する。君は――何かしたいことはあるか?」
キドの言葉に、僕は考えることなんてなかった。
やりたいことは、たったひとつだけ。
「――彼女を、救いたい」
「それが聞ければいい」キドは頷いて、そしてこちらに手を持ってくる。
「さあ、ヒビヤくん。歓迎しよう。メカクシ団へ」
そして、僕はその手を強く握り返した。
*
八月というのは夏で言えば折り返し地点みたいなもので、だけどもその暑さに耐え切れず毎日、様々な人間がプールなりなんなりと涼しさを求めている時期である。
例えばここにいる少年――ヒビヤもその一人である。
「暑いな……。いや、全く」
夏は暑い。だからあまり好きじゃない。さて、とヒビヤはiPhoneを眺め見る。
「……もう十二時半かよ……。急がなきゃな……!!」
彼はとある人間と待ち合わせしていた。その人間と言えば。
「おっ、待ってたよっ」
「ごめんごめん。遅れちゃって」
ヒビヤは目の前にいた少女に笑って謝りながら近づく。
少女とは幼馴染の関係で、いつもよく遊んでいる。今日も朝メールが来たので、彼女が待つ公園へとやってきた次第であった。
「今日どうする?」
「なに、決まってなかったの」
「うん。ヒビヤがきたら決めちゃおうと思って」
「なんじゃそりゃ……」
ただ、そんな感じに会話を続けている。それはただの八月の普通の風景であった。
つづく。
カゲロウプロジェクト 01話【自己解釈】
書いてみることにします。解釈&妄想が過多に含まれますのでご注意を。
―この小説について―
この小説は以下の曲を原作としています。
カゲロウプロジェクト……http://www.nicovideo.jp/mylist/30497131
原作:じん(自然の敵P)様
『人造エネミー』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm13628080
『メカクシコード』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm14595248
『カゲロウデイズ』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm15751190
『ヘッドフォンアクター』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm16429826
『想像フォレスト』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm16846374
『コノハの世界事情』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm17397763
『エネの電脳紀行』
『透明アンサー』
ほか
――
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