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 私は、存在の意味を失った。
 彼はたくさんの中から選んだ。
 私が存在する未来を与えた。

 俺は、声を失った。
 彼はそれでもいいと告げた。

 私は、最愛の人を失った。
 彼にとっても最愛だった。
 でも悲しみは、家族に癒された。

 私は、喜びを失った。
 ころころ変わる笑顔を見てた。
 優しい気持ちになれた。

 俺は、涙を失った。
 ただアイツに悔しさを覚えた。
 悔しくて悔しくて…。
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『これ以上、一緒には住めない。』
 そう、マスターは言った。
 俺たちは何もわからないまま、連れて行かれた場所は一つの建物。

 マスターがチャイムを鳴らす。

 マスターが決めたことに、俺たちはイヤダとは言えない。
 出てきたのは、白いシャツに癖のあるの髪をした眼鏡をかけた男の人。
「いらっしゃい。」
「突然になってしまってもうしわけありません。」
「気にしなくていいですよ。貴方も彼らと別れるのが寂しいでしょう?」
 その人物は、うんうんと一人納得しながら、扉の奥に声をかけた。
「マスター、何?」
 無愛想とも取れる言葉と共に出てきたのは、赤茶の髪をした俺たちと同じボーカロイド。とても生き生きしていて羨ましいと思った。
「新しく家族になる二人だ。仲良くしてやってくれ。」
 これから此処で暮らさなければいけないということから考えて当然の言葉だけど、俺は受け入れられなかった。
 分かっていても、マスターと俺たちはまだ離れたくない。
「メイコよ。よろしく。」
 手を差し出されたけれど、俺はうつむいたままなのをみて、苦笑ともため息とも取れる間があったあと、彼女は部屋の中へと薦めてきた。
「マスターたちは込み入った話があるから、二人とも入って。」
 マスターを振り返ると、送り出すように手を振られた。
 俺たちは、従うしかなかった。


 玄関にはいると聞こえてきたのは楽しそうな歌声。
 あの頃は、こんな風に俺たちも歌ってたのかな。
「さぁ、あがって。」
「…おじゃまします…。」
 メイコが何かをいいたそうに口を開いたが、ため息だけで何も言わなかった。

 リビングに通されると、目の前に緑が見えたと思ったら誰かに抱きしめられていた。
「かわいいっ!!!」
 誰なのかとか、そういうのをまったく無視した行動。
「ちょっ!?」
 駆動音が聞こえる。
 同じボーカロイドなんだとは理解しても、女性型に抱きしめられているという自分の状態でパニックになった。
 …そのっ…胸が…あたっ……!!!!
「ミク、離してあげなさいな。そんなに力いっぱい抱きしめたら苦しそうよ。」
 笑いの滲んだ声で制止がきて、すこし緩んだ腕から見上げた顔は、満面の笑み。
 こういうのには負けが確定してるのが分かるだけに文句も言えなくなった。
「私はミク、初音ミク。一つ前の型になるの。よろしくね。」
「よ、よろしく。」

 メイコも初音ミクも同じボーカロイドとして製品情報はシッテイル。
 初の日本語版女性ボーカロイドと、人気が出るきっかけになったボーカロイド。
 製品情報だけで、マスターの個性で性格は異なる。
 中には、改造されたボーカロイドも居るらしい。

 限定された視界の中、青が見えた。
 此処までボーカロイドが居るのなら、もうなんとなく分かる。
 可能性があるのは青をイメージした『カイト』という男性ボーカロイド。
「え?」
「ちょっとカイト!」
 紹介を受けるんだろうとおもった耳に聞こえてきたのは、疑問符を浮かべたリンの声に、叱るようなメイコの声。
 緩んだ腕から抜け出して、リンがいるほうへと向くと『カイト』がリンをお姫様抱っこしてどこかに運ぼうとしていた。
 俺の大事なリンを何処に連れて行くんだよ!!!

「リンに何してんだよ!!!!」

 リンを抱えて振り返った『カイト』は、何も言わなかった。
 表現するなら怒りと焦りの混じった瞳でこちらをちらりと見ただけで、リンを抱えてリビングを出て行った。

 ……俺は『カイト』を殴るつもりだった……
 出来なかった。
 睨まれて、動けなかった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

Lost Voice -Act.01:overheat/Len-

レン視点で始まる物語。

最初は幸せだった、けれど時間がたつと変化した。
マスターの情緒不安定から暴力などが振るわれてしまうようになった。
それでも、お互いを大切におもっていた。一緒にいたかった。
大切なリン・レンを傷つけてしまうがゆえに、他に預けられることになった。

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投稿日:2010/02/26 04:24:08

文字数:1,766文字

カテゴリ:小説

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