「―――…ぁあぅ」
チリン、チリリンと耳に小気味良い音色を奏でる風鈴に呼ばれて現にかえる。

いつの間にやら寝てしまってたのか…?

ボンヤリとした意識の中、視界に入ったのはたった今俺を玄奥な眠りから呼び覚ました、レンが自由研究で創作した綺麗な形の風鈴、それと天井の木の眼、いや木目。

上体を起こして暫らくボーッとしてみたりする……。
ジリリッ。
おいおい、あちーな…スゲー汗だ。
胸元も肩の辺りもビショリとした心地悪い感覚に支配されていた。
それどころか俺の背中の当たっていた畳までも湿ってて何だか罪悪感。

正午になったのか、真上に位置した御天道様が燦然と輝いては俺に照りつけ、眉間の皺を深くする。
「ったく…っとに暑いな……」とぼやいたり。

二度寝しようにも…暑過ぎるし、口の中がパサパサ…まるで舌が別の生き物みたく口内でのた打ち回っている、そんな感覚…きもひわふい…。

崖上に建てられたこの木造建築の縁側からは陽の光に当てられた海がキラキラと光っているのが見える。
意味は知らないが大パラノマである。
眼前に広がる景色には俺の髪と瞳の色と同じ色が一色。
悠然と構える真っ白な入道雲がなければ、きっと空と海の境界が見分け付かないかもしれない。

欠伸で脳に酸素を送ってやる。俺のCPUフル回転、…(点点点)。

家の中が深々となっている…誰もいないのか? それとも皆寝てるのか?
まぁ、別に構わないけど……はぁ、ちょっと億劫。

目線を端に移すとリンの自由研究の朝顔が今日も元気一杯に蔦を伸ばしている…うん、うん。成長なさい………リン共々。
一つ深呼吸して立ち上がる為のパワーを蓄える、喉、気道を通り抜けて肺に入った空気があつくて少し咽る…。

ねっとりと湿気を十二分に帯びた空気は俺からしてみれば夏の匂いとでも言い表せる。ガリガリ君を両手になら付き合ってやってもいいが…如何せん、眠りこけていた間に直射日光をこれでもかっと浴び、汗を服がグショグショになるまで掻いた俺からしてみれば服は乾かないし、息苦しいし、忌々しい事この上ない。



…別に俺はこの季節が嫌いなわけじゃない。暑くなればなるほどにアイスは美味しいし。
この縁側に吹き付け簾を挟む芳しい潮風も、
夕日に染められた橙の空と海と伸びる影法師も、
家族と囲む西瓜と花火も、
風呂上りにメイコの膝枕をかじる夕涼みも……フフッ。
ホント、嫌いじゃない。

む? って、なに俺はこんな独りで描写をしているんだ…?
とりあえず、暑い季節にあっつい陽の光を浴びることに俺は抵抗があってだな………まぁ、いいや。




「あぁ~…アヂー、しかも腹減ってんのな」
Tシャツをパタパタして裸足のまま立ち上がり、いつのまにか腹の中を占拠し籠城を企てんとす空腹感と立ち眩みの残滓を蹴飛ばしながら、フラフラの足付きの俺は夢中遊行症患者みたいに居間に向かう。



そこで良いものを発見。


誰かが今から食そうと用意したのだろう素麺。
居間の中央を我が物顔でドシンと四つん這いになった卓袱台、その上にどこぞの食品会社のCMみたく、それっぽく並べられている。
何把くらいだろうか? 結構な量がボールに装ってあり、ボールの底には家のオンボロ冷蔵庫内臓の製氷機が作る微妙に白く曇ったピンポン球大の氷が少し溶け出していた。
つゆの入った器は一つ、この食欲は…誰だ?
薬味が葱でなく山葵と茗荷って所を見るとミクじゃないみたいだな…。
…。
……。
…………ん。
ぐぅ~。
「あぁ。俺も同意見だ」



チリリリン。
風鈴の音が耳に涼しい。空腹だったからか、寝ている間に掻いた汗の塩分補給の為に身体が欲していたのか、いやに濃い目のつゆと氷に冷やされた喉越し爽やかな素麺が美味い。



あぁ。…食った、食った………しょっぱい物を食うと……甘いものが食いたいな~。

冷蔵庫、冷蔵庫。




暑い夏の正午、昼飯を食い終わる。
初めからそうしようと決めたいたみたいに俺は迷いの無い覚悟と足運びで台所へ。
別にアイスが必ずあると確信があったわけでも、買い置きがあると知っていたわけでもなしに、俺は一心不乱に目標物に一直線。

三段ある家の冷蔵庫は上から、冷蔵室、野菜室、冷凍庫。
立て膝で冷蔵庫ににじり寄って冷凍庫のドアを手前にスライド。冷気が零れる。

おぉ!


コンビニで売ってるような箱入りのアイスバーだぁ。ラムネ味だぁ~。…七本入りが二箱かぁ。
でわ、まず三本程。

バナナ感覚でビニールの包装を破り捨て、そのまま口に蒼い直方体のアイスを頬張る。
ん~、し・あ・わ・せ♪ 中のシャリシャリが堪らない♪

容易く三本ペロリと腹に放って、もう一本。
のところで、くしゃみを一つ、いや、二つ…あ、三つ。ズー。

鼻を啜って四本目をくわえて縁側のある部屋へ…。

良い噂は一回で悪い噂はくしゃみが二回って言うけど、三回って何だ?



着ていたTシャツを脱ぎ上半身裸体で風のあたる所に折った座布団を枕代わりに畳に寝転がる。

満腹と糖分摂取のおかげで再び俺を睡魔が襲う、襲うっても可愛いもので次第に瞼の重くなるもの。
目覚まし代わりだった風鈴の音も今は凄く心地よく、憂鬱だった生温かい風も肌を掠めて涼しい。

ただ、薄れ行く意識の中で玄関の戸が開く音が…俺に一抹の不安を与えたが……。


何か独り言多かったな? と自問して自答しないまま気にせず眠った。



=to be continued=


ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

八月九日 カイトの正午。

いやはや、まさかカイトさんが俺の処女作になるとはww

何かカイト兄さんっぽくならなかったのですが…まぁ、ご勘弁を。


っつか、オリジナルなんでね?w
とりま、シリーズものにします。他の子視点もいきたいんで頑張ります。


あひる♂(ゆう)

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閲覧数:201

投稿日:2011/07/13 02:45:01

文字数:2,304文字

カテゴリ:小説

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