休日だと言うのに何故こんな朝っぱらから出掛けなきゃならないのか…侑俐に頼まれていた物を持ってのんびりと歩いていると急に侑俐から電話が掛かって来た。何で支給携帯に掛けて来るんだ?アイツは…。
「もしもし?」
「ああ、先輩。今菫さん見掛けたんですよ。尾行してるっぽいので一緒に来て貰って良いですか?公園に居ますから。」
「え?ああ、別に良いけど…。」
「どうも、それじゃ。」
礼を言うと素っ気無く電話は切れた。菫…侑俐のパートナーか、あの結構とろくさそうな…あ、居た。声を掛けようとすると向こうから話し掛けて来た。
「お帰りなさい、電話済みました?」
「えっ?」
お早う御座いますならまだしもお帰りなさいと言われる覚えは無かった。言い間違えたのか?いや、どんな間違いだ、メイド喫茶じゃあるまいし…。
「館林さん?」
「あ、いや、えーっと、侑俐から荷物持って来いって頼まれててさ。」
「何ですか?それ…糸…?」
「いや、ウィッグ。」
蔭澤はキョトンとした様子で袋の中を見ていた。此処で突っ立っているのも変なので蔭澤を促し公園へ入って行った。と、やたら目立つ金髪と黒髪が目に飛び込んで来た。
「のきゃっ?!」
「どんな悲鳴だよ…。」
「わわわ…見ちゃダメですっ!サイに蹴られます!」
「それを言うなら馬だ、それとサイなら蹴るより踏むだろ。」
馬の代わりにサイが出て来る脳も興味深い、純粋に馬鹿の可能性もある訳だが。焦る蔭澤は何故か俺の後ろに隠れて2人を見ていた。騒ぎつつ見たいらしい。
「侑俐。」
「あぁ、先輩…と、菫さん?」
「あ、お、お早う御座います!」
顔を赤らめてぺこりとお辞儀をする。何だ、満更でも無さそうだな。持って来た荷物を確認すると侑俐はそれを金髪男、もとい旋堂に渡した。
「何?ヅラ?」
「旋堂さんは目立ち過ぎますから。」
「これだけ長いと黒でも目立つんじゃ?切って染めれば良いのに。」
「そんな事したら緋織が寂しがる。」
「呆れた、その為にわざわざ?馬鹿じゃないの?みかん先生。」
何やら惚気なのか馬鹿話なのか解らない言い合いをしている。何だ、女の方鶴村だったのか。ふと横を見ると蔭澤が有り得ないほど真っ青な顔になって居た。
「だ、大丈夫か?!」
「みかん先生が男…私の憧れのみかん先生が男…ふぅっ…。」
「わぁ?!倒れるな!!」
何なんだコイツは?!
コメント0
関連動画0
ブクマつながり
もっと見る朝の6時過ぎに手を踏まれて目が覚めた。まどろみながら目を開けると、明らかにこそこそと出て行く姿。あの子は確か昨日泣いてた睦希ちゃんよね?トイレかしら?
「ふざけないで。話してくれる約束でしょう?それとも反故にする?桃栗みかん先生。」
ドアの隙間から聞こえた声に思わず体が固まった。声自体に驚いたのも勿...いちごいちえとひめしあい-29.第一印象-
安酉鵺
電話から30分程経って、私の部屋は実にわいわいと賑やかになっていた。
「緋織ちゃんの家って豪邸ね~良いなぁ。」
「うっうっうっ…ごめんなさ~い。」
「鶴村さん、もう泣かないで。」
どうやら睦希先輩は軽くパニクッて参加者の女の子全員に電話やメールを送ってしまったらしい。自分の携帯に自分でメール送ってる...いちごいちえとひめしあい-27.修羅場を期待した-
安酉鵺
ちくちくと刺さる視線を避ける様に調理室の前を通り掛ると、チョコレートの甘い匂いが漂って来た。
「良い匂~い、ここだぁ!」
「密佳、犬じゃないんだから…あれ?しふぉんちゃん。」
「睦希先輩、味見に来たんですか?丁度もう直ぐ焼き上がりです。」
エプロンを着たしふぉんちゃんがパタパタと片付けをしていた。テ...いちごいちえとひめしあい-85.悪夢へと-
安酉鵺
少し眠ってしまったらしく、軽く頬を叩かれて目が覚めた。ゆっくり目を開けると旋堂さんの姿があった。金色の髪に一瞬緋織かと思った訳だが。
「酒抜けたか?」
「多分…すいません。」
辺りを見回すと解散したのか人影は無く、旋堂さん以外は片付けをしている雉鳴弭だけが動いていた。起き上がった俺に気付くとトコトコ...いちごいちえとひめしあい-73.残念な美人-
安酉鵺
鷹臣さんを呼んだ時間が近くなり私は来客用の駐車場で待っていた。背中にはカメラを構えた密佳が張り付いている。
「ねーねー、睦希にゃん、その『旋堂さん』って、どんな人?可愛い系?カッコイイ系?ラテン系?」
「少なくともラテン系じゃないよ…って言うか…やっぱり向こう行ってて欲しいんだけど…駄目?」
「好奇...いちごいちえとひめしあい-84.古本屋の常連客-
安酉鵺
彩花と一緒に自販機でジュースを買っていると、何やらキャンキャンと甲高い声が聞こえた。見ると鶴村先輩が友達に纏わり付かれている。溜息を吐きながらこっちを見た先輩と目が合うと、何故か先輩は私にバットを手渡した。
「何でしょうか?このバット。」
「これで天城会長殴って来てくれない?」
「解りました。」
「...いちごいちえとひめしあい-80.蚊帳の外-
安酉鵺
クリップボードにコピーしました
ご意見・ご感想