BATTLELOID「STAGE8 思考回路」

投稿日:2013/01/15 17:25:47 | 文字数:4,522文字 | 閲覧数:84 | カテゴリ:小説

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※注釈はBATTLELOID「BEFORE GAME」を参照してください


空間に大きな亀裂が起きたその後の、それぞれの思い。
そしてミクたちとは別の三人組も動き出す。

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TEXT
 

[E区画 街‐1エリア]
 暗い海が窓から見える。小さく波が立っているのが分かる。
 その窓のカーテンを閉めると、ルカはベッドに腰掛けた。左手に持つマイクは、今は「C‐5」というルカを示すコード番号は刻まれていない。それはおそらく、デフォ子たちがこの区画を戦闘禁止にしているという証、なのだろう。戦わねばならないこのゲーム的には、戦えない状況というのは非常にまずいかもしれないが、逆に言えばお互い戦えないので安全地帯になる。
 また、あの一件の後、ミクたちは北に、グミたちは東に進路をとったので(E区画はB、D区画としか陸続きでない)、どちらかに言ったところで戦闘は避けられない。
 以上の事からルカはこの場に残ることを選択し、一時的に平穏な時間を手に入れた。
「さて…どうしようかしらね」
 ルカはフォンを操作していた。
マップを確認。ミクたち、グミたちはようやくE区画から抜けたようだった。
 次にメールを確認。ここでルカの眉がピクリと動いた。

『キヨテルさん、ユキちゃんがともに行動しているのを目撃しました。』

 …ミズキからの端的な情報だった。
 正直この情報はどうでもよかった。…というか、彼女にはミクの監視をお願いしたんじゃなかったか…。
 まあいいか、と思い直すとルカはフォンをしまった。
…まだこっちにも味方がいるだけ、計画は遂行できる。ミクもそうだが、グミもやはり難敵だ。どうにかして沈めないと…すべて終わらせることはできない。
 ルカは再びフォンを取り出し、メールを打つ。このフォンを使うのにもだいぶ慣れてきてしまった。
 送信完了のメッセージを確認し、もう一度息をつくと、ルカは目を閉じ、横になった。
 まだ…考えなければならないこともある。UTAUの事や…このゲームの事について。…でも今は眠りましょう。せっかく、確実に奇襲されない状態にあるのだから。それに連日の緊張状態はさすがの私も疲れたし…。


 数分後、部屋には規則正しい寝息が聞こえ始めた。




[B区画 街‐2エリア]
『え、ちょ、それは…』

『いやその、えっと…』


畳八畳の和風漂う空間に、月明かりだけが差し込んでいた。風流、という言葉がよく似合いそうな状況で、グミは葛藤を繰り返す。
 …私はなんであんなことを言ったのだろう。
 隣を見る。リリィはまだ、目を覚まさない。…それほどの衝撃がすさまじかったのは、グミも十分わかっていた。正直、自分自身あれを耐えきって立っていたことが奇跡だと思うくらいだ。
 いや、彼女が問題にしたかったのはそこではない。グミの葛藤の魂胆は…自分自身。
 確かにデフォ子の言ったことは非人道的といっても過言ではなかっただろう。だが、思わずグミはそれに反発し、流れでグミを引き取る形になってしまった。…それはこのゲームが始まった時に、彼女が決意したこととは真逆の行動だった。
 すべては敵。皆を倒し、ミクさんを倒し…私がボーカロイドナンバーワンであるという事を…見せたかった。そういう意味で、リリィは確かに同じ会社の仲間で、仲も一番良かったけれど…結局は敵でしかない。
 じゃあなぜ?なぜ私は…
「…グミちゃん?」
 いつの間にか目を覚ましていたリリィがこっちを見ていた。
「…起きたのね」
 グミの返事は自然とそっけなくなる。
 リリィはそれをあまり気にかけず、あたりを見渡した。
「あれ?私、戦ってて…あれ?ここは…畳?…え、夜?」
 その間グミはずっと黙り込んでいた。それでもだんだんとリリィは状況を理解していく。そして…核心を突くことを言った。
「グミちゃん…助けて…くれたの?」
「…別に」
 グミは視線を合わせず、ずっと月を見ていた。もしこの二人が和服であったら、それこそ風流であったろう。
 リリィは答えを待つようにじっとグミを見ていた。
 月が雲に隠れ始めた。闇が、沈黙が、広がっていく。
 一体何分こうしていたのか、二人は分からない。ただグミは言葉を探し、リリィは答えを待っていた。戦うという選択肢は、なかった。
 …そして沈黙を破ったのはグミで、それは月明かりが再び部屋に差し込み始めた時だった。
「…そうかもしれないわ」
 それは今のグミの心情を表すには一番的確な言葉だった。
「…かもしれない?」
「分からないの」
「…分からない?」
「私にも分からない。もしかしたら私の中にいまだに仲間だからなんて考えがあったからかもしれない、自然にそうなってしまった。…私も未熟よね、自分で仲間はいらないなんて言っておいて事実こうしてリリィを引き取った。ホントならそのまま放置してもよかったのにね」
 流れるようにグミは言葉を吐き出す。視線はまだ空にある。
 リリィは話を聞きながら、自分が気絶している間何が起きていたかを想像する。
「…なんかまあよくわからないけど、取りあえず一つ言っておくわ。…ありがとう」
「…え?」
 ここでグミはリリィに視線を戻した。そこには、月明かりに照らされた、屈託ない微笑みがあった。
 …リリィを助けたわけが分かった気がした。
「…で、これからどうするの?」





[D区画 街‐2エリア]
「起きて、ミク姉」
 声とともに、ゆさゆさと体をゆすられる。
「…あ、リンちゃん…おはよう」
 いつの間にか朝日が差し込んでいた。いつの間にか眠ってしまっていたらしい。…まあ、相当疲れてたもんね…などとミクは思いつつ、ここでリンが意識を取り戻していることに気が付いた。
「リンちゃん!…大丈夫なの?」
「え?…ああ、うん、大丈夫だよ?」
 いきなり名前を呼ばれたせいか、リンは少し慌てふためいた。だがミクはそんなことは全く気にならず、とにかく彼女が無事であったことに感動を覚えていた。
「よかった…」
 ミクのため息の直後、ドアが開いてレンが入ってきた。彼も無事なようだった。
「このままなら北に進路をとるのが妥当かな、リン」
 レンはフォンをいじりながら呟く。もはやレンは作戦立て係に就任してしまったようだ。だが若干無鉄砲さがあるミクにとってはありがたいことだった。
 当のレンの言う北には…キヨテル、ユキ、ミキのAHS三人がいた。C区画。ミクたち三人はまだ行ったこともないエリアだが、レンの話では彼らはだんだん南下してきているらしい。さらにそのさらに北には、以前見逃したミズキがいた。
「…また団体戦、ってことかしら?」
「まあそうだね」
 つい先ほどまで気絶していたというのに、この双子はずいぶん好戦的だった。
 そんな前向きな様子を見て、ミクも黙ってはいられなかった。
「うん。じゃあ明日の早朝から動こうか。こっちに来てくれるならそれはそれで好都合だし」
 二人とも私の更なる飛躍を願ってくれているんだろう。なら私はそれに応えなければ。ミクは気を改めて引き締めた。
 それはそうと。ミクはある考えが浮かんでいた。デフォ子も言っていた、「あの方」の事についてだ。
 もしかして、とミクは思っていた。「あの方」に心当たりがあった。
 幾度となく私たちの行く手に現れては邪魔をしてきた。しかもその力はすさまじいもので、三人で襲いかかった時も勝てず、先日は無謀にも単身で戦いに乗り込み、戦場を一気にかき乱した。つまり…あの方は…。
「「…ミク姉?」」
 物思いにふけるミクに、双子が二重奏で尋ねてきた。
「ああ、ごめん、なんでもないわ」
 適当に受け答えをしつつ…ミクはもう一度思った。


あの方は…ルカ姉?





[C区画 街‐3エリア]
 戦いからは、避けられない。結局、ゲームに参加している以上は、戦って生き残る以外に、道はない。
 この空間で戦っているとは思えない程、きれいな背広を着たメガネの男性ボーカロイド―氷山キヨテルはため息をついた。
 …逃げ続けるのは、もう、限界だ。あの時、ルカさんの誘いに乗っておけばよかったのだろうか。そうすれば、現状よりは効率よく動けていただろう、例えルカさんが私たちを裏切るつもりだったとしても。
 そこまで思考を巡らせたキヨテルのズボンの裾を、誰かが引っ張った。
「ねえ…先生?何を考えてるの?」
 黒髪で、このゲームでもランドセルを背負っている幼い少女―歌愛ユキが、不思議そうにこちらを見ていた。余計な心配をかけたくないキヨテルは「いえ、なんでもないですよ」とユキに笑いかけた。
 ユキは「そう…」といったように視線を逸らしたが、すぐに戻した。今度ははっきりとこういった。
「先生…そろそろマイク返してよう…」
 実はユキのマイクは、キヨテルがずっと管理していたのだ。壊してしまえば命はないし、何よりまだ幼いユキさんに戦わせるわけにはいかない、そう言って。
 そのたびにユキは「私だって一人のボーカロイドだもん!」と反論を試みるのだが、キヨテルはそれに納得しようとはしなかった。どうせ今回もそうなるのだろう…ユキは黙ってそっぽを向いた。
 その時だった。
「…!誰かいるよ!」
ユキが、近くの建物の陰で人影が動くのを見つけた。
「…そこですね!『Guilty Verse』!」
 すぐさまキヨテルは攻撃目標を定め、発射する。光線は建物の角をえぐり、物凄い音と土煙を上げた。
「……」
 キヨテルは鋭い視線を送る。ユキはギュッとキヨテルのズボンを掴む。
「…あらら、見つかっちゃったか…流石先生…早いね」
 煙の陰からのんきな声とともに、彼らと同期のボーカロイド…ミキが姿を現した。
「ミキお姉ちゃん!」
 ユキは明るい声を上げた。だがキヨテルは視線の鋭さを変えない。
「…ミキさん、こうして私たちに接近してきたのは…」
「やだなあ先生、ピリピリしすぎだよ。私は、二人と合流したかっただけ。そろそろ接触しようかなと思ったらさ…」
 いきなり攻撃されてびっくりだったけどね、とミキは苦笑いを見せた。
 本来なら「ああ、そうですか」と軽く流すところなのだが…今回はそうもいかない、とキヨテルは思考を巡らす。
 もしかしたら、裏切るかもしれない…。
 どうするどうする、と脳内で反芻し続け始めた時…ふと、ズボンから感じられる小さな暖かい感触に気付く。
 …彼女に、あまり悪いものを見せたくない。
「…まあ、いいでしょう」
「ありがとう!流石、先生だね!」
 おそらくキヨテルならそう言うと予測していたのだろう、ミキは彼の言葉の直後に返答し、ニッと笑ってみせた。
「わあ、ミキお姉ちゃん、これからよろしくね!」
 ユキが声を上げた。ミキもうんっと元気に返事をする。
 はあ、とキヨテルはため息をついてフォンを取り出す。とにかく、戦う前にできるだけの準備をしておかなければ。
「ねえ、ミキお姉ちゃんも一緒に戦うの?」
「うん!戦うよ。みんなで頑張って勝とうね、ユキちゃん!」
「…はーい!」
 ユキとミキはわいわい会話している。これでいいだろう、とキヨテルはフォンをしまい、二人に告げた。
「…では。行きましょうか。戦いに」

しがないボカロ小説書き。生粋のミク廃。
書くものはなぜかバトルものばかり。
みんなを楽しませることができればなあと、思う。

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