――少年少女、前を向け。






≪チルドレンレコード Ⅱ【自己解釈】≫






 とあるところにメデューサがいた。彼女はとても子供を可愛がっていた。しかしそれと同時に彼女は怖がっていた。
 ――ここは、人間に知られすぎた。
 ――近いうちに、人間がやってくる。
 それを彼女は知っていた。だから、子供、マリーだけは守りたかった。
「おかーさーん!」
 ふと、シオンが気付くとそこにはお花を摘んで笑うマリーの姿があった。
 この平和が――いつまでも続けばいいのに。
 彼女はそう、願っていた。


**

「このまま死んだって誰かが代わりになるから」
 彼はそんなことをアヤノに話した。今まで誰にも話すことのなかった彼の気持ちを知ることができて、アヤノはとても喜んでいたことだろう。
 しかし、彼女は――もう辛かった。シンタローみたいに思い切り自分のことを話すことが出来なかったのだ。
「……こんな世界、壊れちゃえばいいのに」
 塀を乗り越え――彼女は思った。
「カミサマなんて居るはずないのよ……」
 ――彼女の姿は、そして、消えた。


**


『駆け抜けろ、もう残り一分だ』
 ヘッドフォンから聞こえた自分の声を聞き、エネはふと思った。
「……どうして、世界って滅んじゃうんだろ?」
 思い出すは――夢にも似た記憶。
 自分の目の前で、男子生徒が倒れている。
 そして、それを嘲笑うように立ち尽くす先生らしき白衣を着た男。
「なにしてるんですか? 助けなくちゃ……!」
 エネの声に先生は答えない。エネは急いでそこへ向かおうとするも――まるで見えない壁に包まれているらしく、助けることができない。
「……な、なんで助けられないのよ!!」
 悲痛な叫びに先生は笑う。そして――はっきりと言った。
「ねえ、次は君の番だよ?」


**

 ひどい夢を見た気がした。
 それがコノハという少年の一夜の感想だった。
 なんというか、懐かしいようで、新しい記憶。
 いったい彼女は誰なんだろうか。
「……理不尽な構成、か……」
 彼はなんとなくつぶやいてみた。
 そんなものを肯定しては未来を生み出すことはできない。
 だから、ヒトは抗う。
 それは――そのコノハも一緒だった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

チルドレンレコード Ⅱ【自己解釈】

閲覧数:1,239

投稿日:2012/07/21 18:39:18

文字数:949文字

カテゴリ:小説

オススメ作品

クリップボードにコピーしました