建物の光が町を照らす。
ゆらめく街灯はぼんやりと人の影をうつし、淡い光を地に放っている。
蠢く自動車も歩く人々も上からは点のように小さく見える。
室内に灯るのは机上に置かれた蝋燭の光と天井を薄らと照らす光のみ。
深紅の絨毯が暗闇に合わせるように黒ずみ、光に映し出される人を引き立てていた。

肩まで伸びた栗毛色の髪に胸元を肌蹴させた服。
服も装飾品すらも艶やかな赤色に統一されており女性の美しさをより一層深いものにしているよう。
一方向かいに座っている女性は長い薄水色の髪を下の方で二つに束ね、おちついた淡色系の色で服や装飾品を統一していた。
対照的ではあるがどちらも美しい。

「メイコちゃんだったらきっといい人に出会えるわ」
「そんなことありませんよ。マスター」

メイコと呼ばれた女性は落ち着いた声で返した。
そう? とマスターと呼ばれた女性は笑い返す。

「私はそう思わないのだけれど。メイコちゃんはいい男の人と出会って幸せになるべきよ」
「それだけが幸せじゃありませんし」
「まぁ、そうだけど」

メイコの口調は否定の意が強かったがそれ以上に“これ以上言うな”と威嚇しているようにも捕えられた。
それに臆することなく言葉を続けるマスターは穏やかな外見に見合わず意外と相手の領域に攻め込んでいく性格のようだ。

「私が与える愛情とはまた別のものよ」
「……そこまで言うなら私を捨てればいいでしょう」
「いいの?」

メイコの眉根がよる。
自分が口にした言葉はほんの冗談のつもりだったのにマスターは本当に受け止めて真剣な声色で聞いて来る。
言葉を詰まらせているとマスターはくすっと笑った。

「嘘よ。王子様がメイコちゃんに来てくれるまで捨てたりしない」
「意地が悪いですね」
「やぁだ。これでも優しいのよ。私」

知ってます、とメイコは穏やかな笑みを浮かべ、グラスを手に取り口に運ぶ。

「来ませんよ」
「来るわよ。だぁって相思相愛の仲なんだもの。貴方は好きでしょう?」

酒のせいか照れているかは分からないがメイコの頬はほのかに赤く染まっている。
妖艶な笑みを浮かべるとメイコは「ええ」と答えた。


「ほんとはどう思う?」
「来なかったら、私が殴りに行きますよ」
「メイコちゃんはそうでなきゃ」

弾んだ声でマスターは言い、にっこりと三日月のように唇をゆがませた。


(きっといつか来てくれる)
(来なかったらメイコちゃんの変わりに殴りに行こうかしら)

終

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

待ってる

待ってる人はカイトです。
マスターは穏やかそうで内心結構荒れてる。

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投稿日:2009/08/29 23:47:52

文字数:1,036文字

カテゴリ:小説

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