○バッド・エンド(マーメイド)

DとKAITOが溺れたとこ。
(重すぎた)
KAITOだけ沈む。
目を開けると、ルカPの人工呼吸。

P「おはようございます、私のマスター」
P「あれは泡になりましたから…」
D「お前みたいな鉄の魔女、いらない」

〇ビター・エンド(ファイヤーワークス)

Pルカが海からDを引き上げたと思ったら、KAITOだった。

P「どうして。塗装が落ちている。ショート状態。もうダメね。それでも、間違えるはずないのに。サングラス?」
海を見る。
P「…そのへんの男と同じ」
振り返ると、タコルカがKAITOの口からペンデュラムを出している。「これ!」

P「首から下げていたのは、カプセル・ケースになっていたのね。紙幣と、ペン?カメラと録音機能がついてる」
P「何のために?まさか思い出?いいえ、きっともっとビジネス・ライク」

ホテルの部屋の前につくルカ。オートカードキーロック。

P「チョロいわね」

手をかざしてあける。部屋のデルの荷物をあさりPCを開き、ペンのUSBを接続。

P「楽勝。KAITOに、北海道、姉さんたちの写真もある。懐かしい。わあ!こんな家に住んでたのね!」
P「兄さん、子どもみたいにはしゃいで。こんなにおとなしかった?うらやましい」
P「私なら、もっと美味しい料理つくるのにな」

ファイルを開き、はっとして、
P「これは…私の写真。私が兄さんに教えた歌」
P「他にも…何か…」

サイトの履歴をみると、
「静岡 おみやげ」「北海道 おみやげ」「外国人 ホームステイ」「日本のマナー まとめ」「鵜 動画」などがある。

P「いったい、誰に渡したのかしら」(う?)

メールを見る。
P「仕事…これ、報告書を送っていたのね」
P「下手…テンプレートが…?違う…夏休みの日記?」
P「…食べ物のレビュー?わからないもの、集めてリストアップしてある。これは…先輩ね」

スマホを見て、それから外が暗くなったことに気がつく。

P「もうこんな時間。花火、見られるかな」

窓辺で、コーヒーを飲む。
P「もっと…あなたのこと知りたかった。兄さんに、話して欲しかった。全然足りないわ」
P「メールの人に、会ってみようかな。私も帰ろう。もう遅いかもしれないけど」
P「これは、苦いのね。飲んだら、目を覚ましてくれたらいいのに」

○メリー・バッド・エンド
(フラワー・イン・ブルー)(ホワイト・サングリア)

PルカがDの部屋を訪れる。

P「大きくはないけど、都会にしては風通しと日当たりのいい部屋ね。1人、いや2人で暮らすには十分」
P「こんな本読むんだ、仕事かな?」

IT系の本。
タコルカが、積まれた本に檸檬を乗せる。(ばくだん!)
冷蔵庫を開くルカ。

P「どこから出したの?…もうダメね、ミイラだわ」

ちゃぶ台の上の酒瓶の花に気がつく。
P「ドライ・フラワー?ハーブ?酒瓶?…あぁ、こういうことね」

砂糖とお酒を注ぎ、レモンも入れる。

P「押入の服…同じような色ばかり。これも仕事用?退屈な人生だったのかしら」
P「ふとんがあるわ」

出して敷いてみる。髪の毛を拾う。
P「…白い。どんな味?なんてね」
P「はぁ。羽毛って良いわね。どんな香り?」
布団に入るルカ。

すると、年賀状をもったYがやってくる。


Yが入ろうとするが、逃げ出す。

Y「あっ…!すみません!」
P「待って!あなたと…話したかった」

ちゃぶ台をはさんで座る2人。

Y「あの…水の事故って…」
P「ええ…その時私、一緒に…泳いでたんです」
Y「えっ…一緒に…?」
P「えっと…そこで偶然、出会っただけで。後輩さんも一緒でした」
Y「後輩なんて…できたんだ。でも…ふとん…どうして」
P「…どうしてでしょうね。私、あの人を見て、きょうだいに似てるように感じて…懐かしい気持ちになって…暑さでクラクラして。からかってみたんです。その…どこまで着いてこれるかって」
Y「きょうだい…そう」
P「あの!本当は…!私が悪いんです!別の男の人といても、嫉妬してくれなくて、それで…!」
Y「…もう、いいですよ」
P「いいえ!ごめんなさい!私、とり返しのつかないことをしました。謝っても許されないわ」
Y「…うん。そうね」
P「誰も、私のせいなんて言わなくて、それがつらくて。今までだって…」
Y「あなた、美人だから。仕方ないよ」
P「そんなことない!あなたたちみたいに、私より色素が薄くて綺麗な、とても優しい人、はじめてみたわ」
Y「…そう。あなたの家族もきっと素敵だよ」
P「…はい。もう一度、兄さんと…話したい」
Y「そう思ってるなら、大丈夫」
P「…あなたにはかなわないわ。これ…見てしまったわ」

スマホとPCをタコルカが取りだす。

Yが語る。

Y「(…どうして持ってるの。どうして見られたの。やっぱり、そういう関係?それとも)…昔ね、この部屋、嫌いだった。日が当たりすぎて畳が痛むし、窓が多すぎて落ち着かなかった」
Y「風通しが良すぎるから、寒くて。でも今、湿っぽいから開けよう」
Y「昔ね。あの子がいじめられてるのを、助けられなかったの、今でも後悔してるんだ」
Y「…この部屋。どうしても私と同じ東京に住みたくて選んだんだって。けれど、一緒に住むならもっと広くて洋風な方がいいかな。あと稼ぎもほしい」

P「あの…驚かないの?この生き物に」

タコルカを抱いて言う。ちょっと冷たくYがいう。

Y「生き物、なんだ?今、たくさんのアニマル・ロボットがいるから、気にしなかったよ」
P「(…わかっているの?)…そう、ですか」

Y「もういいや。昔の男、故郷の話は。せっかくだから、飲んで忘れようよ」

さっきのサングリアを指差す。

P「えっ…それ、まだ…溶けてない」
Y「そうだね。作りたてみたいだけど、できてないんだね」
P「それと、これ…受け取って」

またスマホとPCを渡す。

Y「(…どうせ、あなたが記憶媒体(メモリー)を書き換えたんだろうね)うん、ありがとう。ほら、水に流そう。これも飲んじゃおう」

そういって色んなお酒を飲み始める。

P「本当に、あなたにはかなわないわ。このお酒、人生で一番おいしいだろうって思う」
Y「そうだと、いいね」
P「(まだ飲むの?おなかに入るかしら)…あなた、泣いてるわ」

Yが泣いている。

Y「私…これからどうしたらいいんだろう…。どうしよう。っ…もう…っ、何もかもだめ」
Y「海…つめたかったかな…死体も…きっと…ぐちゃぐちゃだったよ…」

P「(私は泣けないのに)泣かないで」

Y「苦しいことを、忘れるために。ヒトはアルコールをのむんだよぉ。…もおぉ、死んでしまいたいぃい死にたい…私が代わりに…死ねば良かった…」

P「(薬は入ってないようだけど)それなら、もっと飲みましょう」

Y「あなたぁ、全然酔わないんだぁ」

P「私、強いから」

Y「…うそだよ。あなたには、血が通っていないから。弱いよ」
P「…ほんとうよ。私には、血が巡っているわ。強いわ」
P「あなたは弱ってるときが美しいわ」

酒瓶が転がっている。

Y「じゃー、試してみよー」

そういって、お湯をかけ、酒瓶でルカを殴り、アルコールが散乱する。でも平気。

P「ああっ!熱い!」「痛…」

Y「温度や痛みはー、わかるみたいだねぇ」

扇風機の電気コードを切って投げる。ポットのお湯をかける。

Y「あなたも、もっと苦しんでぇ。機械もさぁ、アルコールでキレイになるだけぇなんてことないんさー」

しびれるルカ。

P「(タコルカを、今使ったら。なんて強い、お酒)…ここを、火の海にするわよ」

泣きながら言うY。

Y「いいよぉ。私は、あの子を、この部屋を愛していた。私はっ、あなたを!許さない!」

○メリー・バッド・エンド2 (チェイサー)

タコルカが2人を止める。

蛸「ダメ!ルカ、Y、くるしい。カイト、D、かなしい。たこルカ、さびしい!」
Yが言う。

Y「…大丈夫だよ。窓、開いてるから」

ルカがはっとする。

P「計算に…入れてなかったわ。私、自分のことしか考えてなくて…」
Y「うん。まだ子どもなんでしょ。仕方ないよ。本気で怒るのバカバカしくなっちゃった」
P「そんな…もっと、私を怒って!叱って!あなたにはその資格がある!」
Y「うーん…なんか気持ち悪いからトイレで吐きたい」
P「どうして…窓が開けてなかったら…私を殺せた」
Y「あなたにはその子がいるでしょ」

たこルカ。
「いるよ!」

そしてトイレに行こうとするY。

Y「今時、ガスも自動で止まるし。災害にも強いんだよね。ここ古くて導線悪いけど、お湯のために。IHじゃなくてなんで旧式(オールド・ファッション)なのかっていうと、その方がおいしくできるから」
P「待って!もっと、色々教えてほしいの」
Y「いやだからトイレ行きたいんだって…畳もいいんだけど、これ…掃除大変なんだ」
P「…廃れるのにも、理由があるのね」
Y「それに、あなた気がつかなかったみたいだけど、ガスだけじゃなくて冷蔵庫がくさくて…気持ち悪い」
P「部屋に入ったとき、もうわかっていたのね。私には、味覚も嗅覚もないもの」
Y「うん。おかしな女だって。じゃあ、そのへん掃除しといてね」
P「わかったわ!…あの、マスターって呼んでいい?」
Y「いいよ」
P「それで、もっと、私を叱って。殺してくれてもいい」
Y「嫌。私はあなたを人間扱いしない。死なないし、一生許さないから」

そしてトイレにいって大泣きするY。部屋のルカ。

P「なんて、人間って愚かで、強いの。いっそ、殺してほしかった」
P「私は、残された。今までと、これからの人間のため。兄さんのため。罪を償って生き続けよう」


○バームクーヘン・エンド
(梅雨のシャワー)

どこかいいホテルの部屋で、YとD。

Y「ねぇ、私たち本当にこれでよかったのかな」
D「…誰も知らない、遠いところで一緒に暮らそう」

Y「ねぇ、私たち本当にいいのかな。その…子ども、とか」
D「もうたくさんいるだろ。一緒に暮らそう、みんなで」

雪の美術館で結婚式をあげる。
.
「おめでとうございます!マスター!」
ボーカロイド兄弟全員で祝う。KAITOだけはPCの中。
ケーキを食べる兄弟。

K「僕の分はいらないです。お兄ちゃんだからね。どんな味?」
「知ってるでしょ。人生で最大級の甘さ。ありがとう」

○リスタート

昔のキヨテルJとKAITO。KAITOは目つき悪くタバコを吸って喉を焼こうとしている。

J「やあタロー。いいコートだね、似合ってるよ」
K「…なんで俺の…名前知ってるんだよ」
J「僕は先生だからなんでも知ってるよ。なんて、適当言っただけ」
K「じゃあお前はジローだな」
J「ははは。捨てられたんだって?僕はもっと勉強して備えなきゃ」
K「何の用だ。俺のことはほっといてくれ」
J「またまた。寂しいんだろ?君に会わせたいヒトがいるんだ」(タバコ吸わないでね)

J「これは僕らだけの秘密だよ。ほら、かわいいでしょ」

寝ているピンキーリングネックレスをした赤ちゃん。それはあの犬を連れた女の子がしていたもの。

K「貴重(レア)だね。おもしろい。とても……あたたかくて、やわらかい」
J「どんな夢みてるのかな」
K「夢?それは何?」
J「ほら、また外に出てみたくなっただろう?きっと素敵なパートナーに出会えるよ」

○マリッジ・ブルー (筋書き通りの天気雨)

陽の指している時間。YがPCのKAITOに話しかける。

Y「ねぇ、本当に私でいいのかな」(事実婚?って言っても)
K「あなたはパートナーとして選ばれたんですよ!喜んでください!そんな顔されると悲しいです」
K「…あー…うさんくさいですよね。いわゆる、あなた疲れてるのよ。ゆっくり休んで、気楽にいきましょう。おやすみなさい」

Y「それも…そう。おやすみなさい、KAITO」

Yが窓辺のベッドで寝ると、デルが布団に普通に入ってくる。

Y「覚えてる?子どものころ青いふとんをクリーム・ソーダの海って言って遊んでたの」
D「気の遠くなるような昔のことみたいだ。おやすみ」
Y「じゃあ、おやすみなさい」

寝るDを確認してからまた寝るY。

風が吹いてきて、窓とPCの方から、足のないKAITOのような幽霊のようなものが2人に布団を掛けなおす。

間。カラスが鳴いている。

寝ている、眉間にしわのないDが寝言を言っている。
KAITOの幻がそれをうら悲しそうに、慈愛に満ちた顔で見ている。

D「…KAITO…」
K「…ぼくのマスター、マスターじゃなくて…ぼくは…あなたの………なに…」

はっとするKAITOが泣きながら、眉間、瞼、額、髪あたりにキスをしようとするが、でも風が吹いて、青い花びらが、二人を祝福するように2人に降り注ぎ、ついているだけ。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

パワー・オブ・ラブ メリー・バッド・エンド

KAITOが水没する等のifルートと、前日談と後日談。

閲覧数:1,661

投稿日:2020/07/25 20:41:57

文字数:5,351文字

カテゴリ:小説

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