寒い日が続いている。
雪が降るとか、身を切るような寒さでは決してないのだが、それでも寒い。
年々暖かくなっているとはいえ、前後の季節に比べるとやはり寒い。
要するに、家から出たくない。
外の気温は辛うじて日中十度を越えるぐらいだ。そんな寒い所にわざわざ行きたくない。
そう自分では思っているのに、外に出たいと騒ぐ奴がいる。

「みみっみー!」

嫌だ。
騒ぐコウを一蹴して肩掛けを頭から被る。肩掛けといえども馬鹿に出来ない。暖かい。今はこうやって引きこもりたい気分なのだ。外になんか出たくない。
しかしコウは騒ぐ。泣く、いや鳴く。
なんでそんな外に出たいんだコイツは。モカと遊んでいればいいだろう。
コウを無視してぬくぬくしていると情けなさそうな声が届いた。
見るとどこと無く気落ちした様な雰囲気で、コウが座り込んでいた。

「みー……」

呟く姿は、駄々をこねる普段からは考えられないものだ。
…どうした。
思わず心配になり尋ねると、少し離れた所にいたモカが寄ってきた。
小さな声で話しかけてくる。

「……………雪…」

…雪?

「……雪が、見たい………って…」

なんでまた、雪なのだろう。
最近、特に雪の話しをしたわけではないし、当然ながら降ってもいない。
何か、コウの琴線に触れるものがあっただろうか。
哀愁漂う姿を見て一つ息をつく。腕を伸ばして頭を撫でると僅かに顔を下げた。
コウ。
呼びかける。コウはしゅんとしながらこちらを向いた。
なんで雪が見たいんだ?
視線を合わせ、聞くと小さくみーと返ってきた。それをモカが訳してくれる。

「………………何かがあるわけじゃ、ないけど……見たいと思った…………そうです………」

見たいと思った、ねぇ…。
確かに無償に何か見たくなったりしたくなったりすることはある。そう思ってもどうしようもない事は諦めるしかない。大人になるにつれ仕方がないと思うようになってきたが、コウにそうしろというのは酷かもしれない。
かといって雪が見たいと言われても、どうしようもない。
……悪いがコウ、諦めてくれ。

「……………み!」

僅かに考えたコウはいつものように元気に返事した。
もっと駄々をこねるかと思っていたので、少々驚いた。
モカが励ますようにコウの頭を撫でる。えっへんとコウが胸を張った。
…いつの間にか、成長していたんだな。
ただ普通の日々を過ごしていたはずなのに大人に近づいていたらしい。気づかないもんなんだな。
何となく嬉しくなり、肩掛けを降ろして立ち上がる。
アイス食べようか、二人とも。

「みっみみみ!」

跳びはねるコウと頷くモカ。
二人を肩にのせ冷蔵庫に向かう。
何となく、今日は贅沢をさせてもいいかと思うのだった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

KAITOの種28(亜種注意)

今年は暖冬ですね。
一昨年はもっと寒かった…。
今月は頑張ってさくさく書きますね!



モモイト君は雪好きかな?
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投稿日:2009/12/18 21:50:42

文字数:1,141文字

カテゴリ:小説

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