一面に広がる花畑。

赤、青、黄色、白。沢山の美しい花々や、木。青い空。

その中心で、私は歌う。
あぁ、楽しい。

…………え？あれ？何、どうして？

どうして、急に真っ暗になるの？

花は？木は？空は？どこへ消えたの………？

「…………ふふっ………」

「なっ、誰……！？」

奥から人が出てきた。ピエロのような姿をしている。

仮面を付けている為、女性なのか男性なのかも分からない。

そして、その人の手には、銀に光る刃。

「いや……近づかないで……こないで……」

何故か、指一本動かせない。いや、動かない？只、怖いだけ……？

怖い。嫌だ。やめて？こないで………っ

目の前の仮面の人は、私の手を掴んで引くと、その手に持ったナイフを私の胸に向け、思い切り……


「………やっ…………！？」

見慣れた天井。家具。

「…………ハァ、夢かぁ……」

ここ最近、見るのは悪夢ばかり。

怖くて眠れない。眠ってしまったら、また夢を見てしまいそうで……

「２時４５分………」

朝までは長い。どうしようかな、、これから……




『何処から来たの？』

教えない。

『どんな姿をしているの？』

ボクは鏡に映らない。誰にも見えない。そして、知らない。

夢喰い白黒バク。それが、ボクの名前……のようなもの。というか、これで名乗ってるから名前だろう、きっと。

「あーあ、お腹減った。今日は誰のどんな夢を食べてしまおうか……」

辺りを見回す。愛用の黒いステッキに乗った僕の現在位置は、夜の闇に包まれた空。どうせボクの事は誰にも見えてやしない。

「ん？あの子……」

こんな夜更けに明かりがついてるとは珍しい。まだ１５，６歳くらいだろう。そのくらいなら一部の人を除いては大体寝ているのが普通だ。

しかも女の子。緑の長い髪は風呂上がりだからだろう、少し湿っぽく見える。

上がって、また落ちた肩とその様子から、溜息を吐くぐらいには悩み事でもあるのだろう。しかも、あの顔。ボクには分かる。その理由が。

「……きーめた」

あの子にしよう。

夢、喰べてあげようか。