18.長き話(ストーリ)の後で
シンデレラが自分の過去の話、外の世界の話を長々と話した後――
彼女の膝下で一人の少女がすやすやと寝息を立てて眠っている。
「無理もないか、あんなことがあったんだもんね……」
――どれだけ気丈に振る舞っても、やっぱり怖かったんだな。
それにしてもここの遺跡の人たちは、クミを何かから守ろうとしていたように思えてならない。
今回の事はその何かによる襲撃だったのだろうか。
シンデレラは少女のかわいらしい寝顔を覗き込む。
――ぱっと見は、かわいい普通の女の子なのに、でも確かに私に触れても平気だったし、
特別な『何か』があるのは間違いないかも。少女を狙う『何か』がその『何か』を狙って。
それでもって、遺跡の人たちはこの子を『何か』から守るために、外に出さなかったり、
外界から隔離したような生活をしてたのかも。
シンデレラはイライラしたように、自分の頭をバサバサと掻いた。
――もう全然、わからないな。『何か』ってなんだよ。全部推測でしかないし。
とにかく、この子は誰かに狙われてるってことだけは、はっきりしてるな。
ライジュウは本来、野生にはいないし、集団で襲ってくることも考えられない。
誰かが襲わせたんだ。とすれば、相手はやっぱり……。
程よい振動の中、少女が眠りから覚めた。
「お? やっとお目覚めかい。お姫様」
耳のすぐ近くで、昨日うんざりするほど散々聞いた声が響く。
少女はシンデレラにおぶられて、森の中を出口に向かって進んでいる。
「はわわ、降ろしてよ。私は自分で歩くから」
少女のほほはかわいらしく紅潮している。
「その足で?」
シンデレラは少女をおぶったまま、短い質問を投げかけた。
クミは自分の足を覗き込んでみる。
「つっ」
少女の足首に突然痛みが走る。見れば自分の右足首が真っ赤に腫れあがっている。
「くじいちゃってたみたいだな。昨日は興奮してて気付かなかったんだろう」
シンデレラは依然として歩みを止めることないまま、少女にそう言った。
観念した様子で、クミはシンデレラの背中にぴたっと身を寄せた。
「今からどこへ行くの?」
シンデレラの耳元で少女が質問した。
「んー? ひ・み・つ。もう少しで着くよ」
シンデレラは、にやけ顔で答えた。
しばらく森を進むと、急に視界が開ける。二人は森の出口まで到着したのだ。
森の外。それは少女にとっては世界の端のさらに向こう側だ。
例えそれが森よりも色の少ないただの荒野だとしても、少女にとってそんなことは関係ない。
子ども特有の好奇心。少女は目をきらきらと輝かせて、色あせた世界を見つめている。
「初めてだろ? 森の外は。どんな感じだ?」
シンデレラの質問も少女の耳には届いてはいないようだ。
まったく仕方ないな、という顔をして、少女をおぶったままさらに森の外周に沿って少し歩く。
その間も少女の目は、移動に伴いわずかに変化していく荒野を飽きることなく見続けている。
やがて、シンデレラにとっては見たことのある風景が飛び込んできた。
ここは彼女が最初に森へと入って来た場所である。その証拠に自慢の二輪車が停車してある。
「クミ、ちょっと降りててくれるか?」
今までずっとおぶていた少女を、ゆっくりと優しく地面に座らせた。
シンデレラは森の出口に停車してある二輪車に近づき、なにやら作業を始めた。
少女はその作業を傍らで、興味深そうに眺めている。
作業は数分で済んだようで、再び座っている少女の方へと近づいてきた。
二輪車の横にはいつの間にかサイドカーがついている。
「よし、それじゃ行こうか」
まるで承認済みであるかの様に言い放ったその内容を、少女は承認した覚えはなかった。
「え? 行くって……どこに? 一緒に?」
少女は少し戸惑っている様子で質問した。
「もう、わかってるくせに。当てなんてないんだろ?
私と一緒に来ない? 世界中旅してまわろうぜ」
シンデレラはおもむろに右手を差し出す。そして少女の答えを待った。
少女は無言のまま、シンデレラが差し出した右手をそっと握りしめる。
「よし、決定な。これからよろしくな。クミ」
シンデレラは少女の手を握り返すと、軽く引っ張って少女を立ちあがらせてあげた。
「……もちろん、私の方が立場は上だからな? シンデレラ」
今日初めての笑顔を見せながら、少女は年上の女性に対して半ば命令であるように提案した。
――このくそガキが。
しかし、大人としての対応をと。「わかってますわよ。クミ様」少しひきつった笑顔で答えた。
「クミでいい。昨日も言っただろう?」
子ども特有の理に合わぬ言動。
――こりゃ、これから楽しくなりそうだね ハハハ
半ば自虐的にシンデレラは自分にそう言い聞かせた。
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たっかんP
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