※諸注意

・カイト×マスター(女性)
・妄想による世界観
・オリキャラ満載
・カイトは『アプリケーションソフト・VOCALOID・KAITO』の販促用に開発されたキャンペーン・イメージロイド(?)機械的な扱い、表現を含む
・女性マスターの一人称が『オレ』

恐らくツッコミ処満載ですが、エンターテーメントとして軽く流して楽しんで頂けると幸いです

上記が許せる方は、自己責任でスクロールして本編へどうぞ








☆☆☆☆☆





「マスター、どうですか?…気持ち、いいですか…?」
「んっ、…んー…いや、あんまり。むしろ、全然?」
「そんなっ!!??」


〈シャングリラ・第一話~日々~〉

SIED・MASATAKA


「何が悪いんだろうな、力加減?指の置き場所?妙にずれてるって言うか、ツボに入らないんだよね、」
 カイトのマッサージが相当お気に召さないらしく、肩に手を回して首を捻る篠ちゃんは、不満気に眉根を寄せている。
 作曲の合間、休憩中に『肩が凝った』と言い出した彼女に、『では、オレに揉ませてください!!』と力強く立候補したカイトが、嬉々としてマッサージをし始めた…までは、よかったんだけどね。
「こんなに頑張ってるのに、何がいけないんでしょうか…、」
 ソファの後ろに回りこみ、さっきまで一生懸命篠ちゃんの肩を揉んでいた自分の指を、悔しそうに見つめているカイト。
 心なしか、若干涙目になっているのは、気のせいじゃないだろう。

「やっぱりマッサージなら、正隆さんにやってもらった方が断然効くなー。…あ、久しぶりにお願いしてもいいか?」
「え、僕?」
「ちょ、いけませんマスター!!!オレ以外の男に、身体触らせるなんて、絶対にダメですから!!!!!」
 突然こっちに振られて、一瞬キョトンとした僕が返事をするよりも早く、慌てたカイトが割って入ってきた。
 たかが肩揉みくらいで、こんな大袈裟な反応するとは。
 この二人を引き合わせた僕が言うのも何だけど、まさかここまでカイトが篠ちゃんに懐くとは、正直思ってもみなかったな。
 ボーカロイドがマスターを思慕するのは、至極当然の行為だけど、カイトのこれは些か過剰すぎる気もしないでもない。
 何しろ彼女がマスターになる前から、こんな調子だった。
 カイトの執着心はここ数日見ていて痛感したけど、好意で済めばいいが、依存レベルまでいくと少し厄介だな。

「こらカイト、変な言い回しをするな。―ね、正隆さん、頼むよ、」
「うん、僕は構わないけどさ。カイトが睨むからなぁ、」
 じっとりと、粘着質な視線に晒されて、居心地が悪いったらない。
 全く、いつの間にそんな顔ができるようになったんだ。
 いや、開発者としては、複雑化していく感情プログラムの成長と、高い環境適応性を喜ぶべきなのか?
「…カイト?」
「うううぅ、…わ、かりました、」
 篠ちゃんの低くなった声に窘められ、不本意だと言わんばかりの顔で、それでも渋々場所を譲ってくれる。
 『マスター』には従順っていうプログラムが機能を果しているからか、単に篠ちゃんの言うことだから聴いているのか、判断に困るところではあるが。
 
「んっ、あっ、凄…。やっぱいいねー、」
 彼女の華奢な肩に手を乗せて、掌全体を使い絶妙の力加減で揉み解せば、明らかに変わる反応。
 ふふん、自慢じゃないが、マッサージにはちょっと自信があるんだ。
「ああああ、ママママスタァァァァーっ!!!!!そんなに気持ち良さそうな声なんか出して…!!」
「うん、本当に気持ちいい。あー、そこそこ、」
「…くッッ!!!!!」
 上機嫌な篠ちゃんに、僕の頬も思わず緩むけど。
 キッと今にも、ハンカチでも噛み締めそうな目で睨みつけてくるカイトに、背筋が冷たくなる。
「うーわー、もう最っ高、」
「…オレの、マスターを…オレの…!!」
「篠ちゃん、ちょっと黙っててくれないかな。カイトが今にも僕を刺し殺しそうで怖い…、」
 これが巷で噂の『ヤンデレ』フラグか…?いや、ただのヤキモチか。どっちにしてもイチゴソースは勘弁して欲しい。本気で。

 なんて、ちょっぴり身の危険に恐怖していたら。
「北澤さん、お願いします!!今すぐオレに、オレに最上級マッサージテクニックのデータをダウンロードしてくださいっ!!!!!」
 いきなりカイトが、半泣きで僕の腕にしがみついてきた。
 お前、常人よりも腕力があるって、わかっているのか?地味に痛いぞ。
「ちょっと待て。お前、何のための人工知能だ?何でもかんでもプログラムに頼らず、経験から学んで成長してかなきゃ、ダメだろう?」
 そのために、わざわざ篠ちゃんにお前の面倒を見てくれるよう、頼んだってのに…。
「それはぁ、…わかってますけどー、」
 仮にも、成人男性が口を尖らせて拗ねるな。

「別に、カイトはボーカロイドなんだからさ、マッサージなんて上手くなくたっていいんだよ?」
 あまりにも必死すぎるカイトの様子に、篠ちゃんが苦笑する。
「だ、ダメです!!これ以上マスターの大切なお身体を、オレ以外の男にいいようにされるわけにはいきませんから!!マッサージの習得は、最重要必須項目に値します!!」
 それ、どんなボカロ?
 明らかに情熱の向けどころを大間違いしているだろうが。

「だから、際どい言い回しはやめろってば。…おい、コイツに羞恥心ってものは搭載されていないのか?」
「はは、…ゴメンね、」
 はぁ、と呆れて溜め息をつく篠ちゃんに、協力を仰いだ手前、申し訳なく思いながらも笑うしかない。

(うーん。この分じゃ、まだまだ人前に出せないかな、)
 こんなにも、彼女に対してこだわりを見せるカイトに、何処と無く不安を抱きつつ、僕はほんの二週間前のあの日を思い出していた。
 

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ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

シャングリラ・第一話~日々~【カイマス】

兄さんの性格がおかしいのは仕様です。(←)
第一話が途中からですみません。
次からが実質の第一話っぽくなります。

補足
マスター:木崎篠武
開発責任者:北澤正隆

閲覧数:170

投稿日:2011/04/08 23:24:32

文字数:2,412文字

カテゴリ:小説

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