ネオンが輝く見上げた東京の空は、予想以上にくすんでいた。
今日は彼女の誕生日、といってももう夜。
昼間はなかなか二人とも忙しくて会えないから、どうしてもこの時間になってしまうのだ。
……とはいえ、遅いな。
別に一流ホテルのレストランを予約とかしてるわけじゃないけど。
でも約束の時間から軽く2時間は過ぎている。
僕は今駅の改札口のところで彼女を待ってるわけだけど、僕がここに来たときはまだ外はほの明るかったのだけれど、もう今は真っ暗だ。
真っ暗ではないか、訂正訂正。
少なくとも空はいつものような水色を欠片も残してないという事だ。
そこまでずっと待ってるわけだから、僕もそろそろ疲れてきて、改札口から少し離れ、外の空気を吸っていたのだ。
昼間は馬鹿みたいに暑いけど、夜になるとだいぶ涼しいものだな。
それでたまたま久しぶりに東京の夜空を見上げていたのだ。
天の彼方まで差すような、数多の人口の光。
それは隠れるようにして時とともに色を変えた狭い空を、むりやり照らし出したようだった。
排気ガス、ライト、足、機械音、信号。
ひとりひとりの声、しぐさ。
電光掲示板、自動販売機、自動扉。
ヒールの鳴る音、反響、クラクション。
それらすべてが、この小さな世界がひとときでも眠るのを阻んでいるような。
僕らが安らぐのを認めないような。
たとえればそんなふうに感じられた。
「やーっほっ」
ひどく感傷的になって、気分が悪かった僕の背後から、すべてを包み込んでくれるようなかわいらしい声がした。
「あ、ミク」
「ひどいじゃない! 改札口で待ってるって言ってたのに、全然いないんだもん!」
2時間も遅刻した奴に言われたかねぇよ、ってすこし憎まれ口をたたくと彼女はあははと笑った。
「でさでさ、こんなところで何してたの?」
「んー……まぁ、いろいろ」
「ナニソレ」
「んー」
彼女がやたらと僕が自分をほっぽって何をしていたのかに興味を示すもんだから、僕はさっき考えていたセンチメンタルで厨二病丸出しのあれを彼女に教えてやった。
「うげ、ナニソレ厨二?」
やっぱり。
でもそうやって引きながらも僕のそばで笑ってくれる彼女。
さっき、安らぐのは許されないなんて言っちゃったけど、僕にはこんな贅沢な安らぎがあった。
そうやって思うと、くるくる表情を変えて笑う、ツインテールの彼女が、おかしいくらい愛しく思えた。
「ミク」
「なぁに?」
「誕生日おめでとう」
「えへへ」
彼女にはちょっとしたプレゼントを用意してるけど、なんだかアレしょぼく感じてきたなぁ。
結構自信あったんだけど。
でもまぁそれは、今、自分が彼女に選んだプレゼントよりすごいものを、僕がいつももらってることに気付いたから。
「ミク」
「何よさっきから」
「いや……」
「はっきり言って!」
「いや、その……すきだ、なぁ、って……」
「!」
もう一度彼女は照れくさそうに、えへへと笑った。
僕らは息苦しいネオンを浴びながら、そっと手をつないだ。
彼女があんまりうれしそうに笑うもんだから、僕もつられて笑った。
【ミク誕】ネオン【イズミ草】
ちょっと早い? ですが、ミクちゃんお誕生日おめでとう!!
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2014/08/30 16:21:48