!!!Attention!!!
この話は主にカイトとマスターの話になると思います。
マスターやその他ちょこちょこ出てくる人物はオリジナルになると思いますので、
オリジナル苦手な方、また、実体化カイト嫌いな方はブラウザバック推奨。
バッチ来ーい!の方はスクロールプリーズ。
『笑ってられるのも今のうちかもしれませんけどね。
目ぇ覚まさせてあげますよ――竜一さん』
不意を突かれたように両目を少しばかり丸くした男だったが、その表情はすぐに不敵な笑みにとって変わった。その喉の奥から心底おかしそうな笑い声が上がる。地獄の底から響き渡るような、嫌な笑い声。
訝しげに眉根を寄せると、俺のそんな様子に気付いたらしく、男が笑いをおさめた。その手が彷徨うように動き、ぴたりと俺を指差して止まる。
「お前には無理だぜ、リュウジ。俺に謀(はかりごと)で一度でも勝てたことがあったか?」
思い出してみろ、とでも言いたげな男に応えるかわりに鋭い視線を浴びせる。そうすることに何の意味もないとわかっていても、男の言葉に対する答えを口にすることだけは避けたかった・・・勝てたことがないということが、まぎれもない事実だからだ。
俺の中を見透かしたように、男はくつくつと笑う。この男の前では、俺など丸裸同然だ。今は敵・・・とも呼べる相手を前にしているというのに、レベルをろくに上げもせずに初期装備のまま戦いを挑んでしまったようなもの・・・勝率は当然、ゼロに等しい。
「わかってんのに立ち向かってくるとは、見上げたヒーロー精神じゃねぇか」
変わらねぇな、と零して男は笑う。
男の言うとおり、確かに俺は変わっていないのかもしれない。変わったのは、目の前で嫌な笑い方をするようになってしまった、この人の方。
「律の元に、戻るつもりはないんですか」
一呼吸置いて男が笑顔を消し、静かに瞼を落とす。
それを合図としたかのように、空気が震えるような感覚を覚えた。人はこれほどまでの威圧感を放てるものだろうかと思うほど、体の器官全てがこの人は危険だと一瞬で叫びだすほどの威圧感。
その鋭い眼光に射抜かれた瞬間、俺は思わず震えだした手を握り締めた。
「戻るつもりはないと言ったらどうするつもりだ?」
冷たい声が、心臓を射抜いたかのような鋭い痛みを俺の中に残す。渇いた喉を潤すために飲み込んだ唾は、ほんの一瞬でさえもその渇きを和らげることもなく消えていった。
この人の口から『戻る』という言葉が出てくるわけがないということは、俺が一番知っていたというのに、何故こんなに落胆する必要があるのだろうか。
俺がここに一人で残っているのは、この人に勝てる可能性が一番高いのが自分だと知っているからだ。覚悟なら、既にある。尊敬している人と、あの頃のあいつを取り戻せるなら、俺は僅かな可能性にかけると決めた。
「無理にでも元に戻します」
「っは、勇ましいねぇ」
くくっと笑いながら、男は足音を響かせ始める。俺の隣をゆったりとした足取りで通り過ぎ、尚も歩を進めていく。
「・・・何が楽しいんですか。
律を優しく撫でたその手で律を傷つけるっていうのは・・・どういう感覚なんですか」
徐々に遠くなっていく足音。俺の言葉だけでその足音が止まるわけもなく、離れたところから言葉が飛んでくる。
「律の中に俺の存在が刻まれる瞬間ってのは、いいもんだ。
それは深ければ深いほど俺を満たしてくれる」
距離が長くなったというのにその声はまるで耳元で言われた言葉のように頭に響いた。ゆったり遠ざかる足音は、男と俺の距離を広げ続ける。何も言えずに握り締めた手に思わず力を込めた。届くと信じているのに、広がる距離が口惜しい。
振り返ると、距離は随分開いている。ずっと追い続けていたのに、まだ広がる距離。こっちが走り出せば、向こうも走る。いつでもその繰り返しだった。近付けば近付くほど、本当の距離はそんなに短いものではないと気付かされる。
走り出した俺を嘲笑うかのように綺麗な走りを見せる背中は、何も変わっていないように見えるのに・・・いや、そう見えるからこそ遠いのか。
「っ・・・他に何が欲しいんだよ! 何だって手に入れてただろう!!」
俺が手に入れられなかったものを全て手に入れているのに、それでも自慢なんてすることもなく、誰にでも平等に接する人だったから・・・俺だって追いつけないのは仕方がないと思っていたのに。
ずれた足音が耳から入って体の中で反響している。心臓と混ざって、それは更に不快なリズムになっているようだった。
振り返った男はおもむろに口を開く。その口からは、「言ってやる義理はないな」と非協力的な言葉が吐き出された。
スピードを上げても距離が全く縮まらない。男が入っていくのは、駐車場。
狙いはまだ律なのか。もう目的は果たしたんじゃないのか。
舌打ちが後ろへ流れる。駐車場に停めた車の前に、律を抱いているカイトの姿。一気に空気が張り詰める。心臓が、うるさい。
男が距離をとってそこで立ち止まった時、ちょうど俺がそれに追いついた。
カイトたちに目を向けて状況を確認。カイトに抱かれている律はどうやら気を失っているらしい。これ以上何も見ずにすむのならその方が良いかもしれないが、果たしてそれを許してくれるものか。
律を真っ直ぐに見つめている男に向かって、渇いた喉から言葉を吐き出す。
「もう、やめろっ・・・!」
そう叫んだ声に、男が小さく笑う。そして口元に嘲笑を浮かべたままその口が開かれた。
「ああ、手は出さないからそう怒るな」
これだけ俺たちの張り詰めた空気を感じていながらも、男の周りだけは全く正反対の空気が流れているようだ。
「――これだけマスターを怖がらせておいて、今更『手は出さない』だと?」
俺が言葉を紡ぐより早く、その怒りに彩られた静かな声が鼓膜を震わせる。穏やかなカイトのあの声が、今はただ怒りに染まっていた。それを聞いた途端、男の口端がさらにつりあがる。まさか、ここまで計算しているというのか。
「か・・・」
「隆司さん、黙っててくれ」
カイト、とその名を呼ぶはずだった声はぴしゃりとそこで遮られる。これ以上我慢することは不可能だとその声色からはっきりと伝わってきた。カイトが本気だというのを確認してしまえば、それ以上口を出すのはいささか無神経というもの・・・しかし、それでこの人に勝てるはずもない。
「俺はこの人がマスターにとって大切な人だなんて信じられない。
そうであったとしても、今はただマスターを傷つけた犯人だ」
「許せるわけ、ないだろ」と続いた声に、もう一度呼びかけた名前を飲み込む。その通りだ・・・だが、それは『普通』ならという話で、この人にそれは通用しない。この人は、もう普通じゃないのだ。カイトにこれ以上喋らせるのはまずい。
地獄から響くような低音が押し込まれた空間を震わすようにして思考をかき乱す。その笑い声は徐々に大きくなり、カイトが男を睨む目に銃を持っていれば今にも射殺しそうなほどの殺気を込めていく。
「くっ・・・ははははっ!」
「・・・何がおかしいんだ」
冷ややかなカイトの視線が男を射抜いているというのに、男の笑いは収まらない。男は空を見上げて笑いをおさめた後、あからさまに大きくため息をついた。カイトにはいくら考えても男が笑っている理由はわからないだろう。
「お前はあいつの忠告を聞かなかったな?」
男が俺の方に視線を向けながらカイトに言い放ったその言葉。その言葉のせいで、ドクッと大きく心臓が弾む。血が沸き立つような感覚を覚えながら開きかけた口からは、熱い息が流れ出した。
「やめろ・・・それ以上言うな」
カイトが俺の声に身を震わせる。低く響く声は、その場の空気を凍りつかせていた。ところが、それすらものともしていない男が一人・・・未だに、笑っている。
「どういうことだ? 何か知ってるなら教えてくれ、隆司さん」
「――それだよ」
開いた口から言葉が出るより先に、男が待ってましたとばかりに肯定した。カイトはその表情から滲み出ている怒りの中に、困惑した表情を重ねる。ああ、もう避けられない。
男の口がもったいぶるように閉じられ、また開かれる・・・その様が、妙にスローモーションに見えた。
「お前、震えるあいつの前でその名前を口にしただろ?」
カイトの表情にはわけがわからないと書いてある。わからなくて当然だ。言うタイミングが外されたのだから。
「わからないか? なら説明してやるよ」
低い笑い声の後、俺が握り締めている手が震えているのを確認し、その口が開く。
「お前がさっきから口にしてる男の名前は、――俺の名前でもあるんだよ」
静まり返る辺りに、「え」と誰のものかわからない小さな困惑の声が響いた。周りの視線が集まるのを感じながら小さく息をつく。
できれば、知られたくはなかった。いや、できることなら俺が先にちゃんと言っておくべきだった。
「なあ、リュウジ」
――ああ、虫唾が走る。
誇りだったこの名前は、いつからか俺の重荷になっていた。それもマシになっていたというのに、この人が戻ってきて律だけじゃなく俺まで元に戻されてしまったのか。
噛み締めた歯が、内部から嫌な軋みを体中に伝えた。
「俺はやっぱり今のアンタは苦手だよ・・・竜二サン」
再会した時に俺とその男が口にしたその名を、激昂と共に今一度吐き出す。そして目の前にいる男は、これ以上におかしいことはないと言うかのように・・・また、笑った。
→ep.37 or 37,5
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