バタン、と戸の閉まる音がした。それに反応して目蓋が開く。
……戸はしっかり閉めたはずなんだけどな。
視線を移すと、黒い影が揺らめく。僕によく似た。
「どうした、リン」
目をこすりこすり、口を開く。
「一緒に寝よう、レン」
いきなりその影が首元に飛び付いてくる。泣いているみたいだ。
「ば、馬鹿、いてーよ。どうしたんだよ」
僕は彼女の肩を僕から引き離した。豆電球の光が小さく顔を照らす。
僕は少し顔を反らした。
「消える、の」
彼女はいつもとは違う、か細い声で僕に訴えている。
「はあ?」
彼女の細い指が僕のうなじにかかった髪の毛を撫でる。くすぐったい。
「きっと、いつか消えるの、リン」
当たり前だ、とは今の彼女にはとても言えない。
「悪い夢でも見たのか。ミク姉のとことかいったほうが安心できると思うけど」
僕は冷たいかな。
僕は無力だから君を壊しそう。
「レンのばか」
そう言って彼女は苦しいくらい僕に抱きついて、泣く。
ベッドが少しきしんだ。
僕の行き場のない腕は、青白いシーツを掴んで、冷たい。
いい言葉が見つからないうえに、起き抜けの僕は遠くを見つめる。
彼女の嗚咽を胸に感じながら夜中の幾分かが無言で過ぎる。
「すき」
目が覚めたどころじゃなかった。
「はあ?な、何?」
思考がうまくいかないのが下手に出る。口が回らない。
「すきよ、レン」
「い、いや、別に、リンは、普通に家族だから……好きだろ、普通に」
動揺してるのが自分でも明らかで、消えたくなった。
「ちがう、そう言う意味じゃないのに……」
やっと僕の胸から顔を放した、潤んだ目の彼女はしかめっ面で。
「じゃあ、なんだよ……」
彼女が僕から身体を放す。
宙しか見れない僕は情けない。
「レンだけ、すきなの」
真剣で寂しそうな顔をしたから、惹かれた訳じゃない。
だから、座り直して、腕を伸ばした。
本当は君が消えるのも、はっきり言えない僕も、嫌。
「だから、消えたくないよ」
僕の腕のなかで呟く君は、機械の光沢なんてとっくに忘れた心を持っていて。
ああ……僕もか。
僕の首元に腕を回して放さない君をそっと冷たくなったシーツの上に横たえて、
剥いだ布団を引っ張った。
明日も僕が傍にいる。
君の涙ほど、僕らの運命は冷たくない。
おやすみ。
消えるときは、一緒だから。
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