「暇だなあーっと、そういえばさ、もうすぐバレンタインだねぇ、ばあさんや」
「ちゃんと今年も下さいね、マスター?」
「そこは、じいさんや、でしょ?もうノリわるーい」
「可愛く言われても・・・」
・・・等と、いつも通りのかみ合わない会話を僕らがしていると、
「俺にも、1つくれ。本命じゃなくてもいいしさ」
と、アカイトくんがやってきた。
ちょ、ちょっと。そんなにマスターに近づかないでよ、僕の・・・ものなんだからさ。
「じゃあ、アカイトには、ぎ・り・チョコあげるね」
はっきりと主張するマスター。
・・・あれ、本命って、誰なんだろ?もしかして、僕かな?
「ああ、別にチョコだったら、義理だろうと何でもいいぜ。あ、だけど、思いっきり苦くていいからな。俺、甘いのは嫌いだし」
さっぱり、とした様子で受け答えするアカイトくん。
いいなぁ、アカイトくんのこういうところがきっと女子にいいんだろうなぁ。
「分かってるよ、これでも去年ちゃんとビターテイストで、あげたでしょ?」
「まあな」
これ以上マスターと話さないでほしいな・・・。
僕はこれが嫉妬だと気づかない振りをしてから、
「ほら、もう帰ってよ。用済んだよね?」
と言って、マスターとアカイトくんの間に割り込んだ。
「・・・分かったって。ちゃんと、帰るから、な?」
そんな僕に、アカイトは軽く苦笑してから、「じゃあな」と言って去った。
「ちょ、ちょっと、カイト。悪いでしょ?いくら言ったって・・・」
「いいんですよ。だって本当のことなんだし・・・」
気まずそうなマスターに、僕は視線を逸らして言った。
マスターは、優しいから。
「・・・その優しさが、色んな危険を孕むんです。分かりません?」
試しに言ってみると、
「分かってるさ、そのぐらい。私はある意味推理少女よ?そんぐらいちょっと考えたら分かっちゃった」
そう言って、マスターは笑った。
普通に聞き流すと何でもないはずなのに、よく考えてみると意味があるような気がする。あり過ぎるともいうかな。
「推理少女ですか、何だか探偵みたいですね、事件を解決するあの主役みたいな」
「あはは。冗談として全然笑えなーい」
そう言いながらも楽しそうに呟く。笑う。
「それに、私は主役でも脇役すらないよ。私は風に消える客観的立場を何より愛する存在なのだ」
「なんかかっこいいですね、それ」
素直に感嘆してしまった。マスターの言語力は底知れないと、僕は改めて思いなおしたのだった。
「でしょ?まぁ、・・・・えっと」
「・・・どうかしました?」
「にゃはは、たまに猫化する・・・かな」
「・・・・・・・」
なんとなく納得の一言だった。返す言葉が見つからない程に。
「・・・・で、えっと何の話してたんだっけ」
「何気に忘れてましたか。多分、それ「あ、思い出した。バレン・タイン・デー、だね!」
「すいません、それだったらバレンタイン・デーじゃないんですか」
遮られたあげく、訂正までする羽目になる僕。
・・・僕は、やっぱり尽くす方なのか。ちょとがっくしだ。どうせなら尽「ちょっと、カイトぉ?やだ聞こえてるのかしらこのこ?」
「・・・え?」
「あ、やっぱり意識飛んでた。もう、何か変なことでも考えてたんじゃないのこのぷーた」
「・・・別に僕はそんなこと考えて・・・ないですし、それに何ですかぷーたって」
「何か思いついたから、いいじゃん」
「よくないですよ」
「別にほんとにぱっと思いつき実行だから、いーの。これ以上言ったら君の人質をこの世に送るよ」
「・・・人質、いないですけど。それにこの世に送ってどうするんですか。それ言うなら、郵便局じゃないんですか」
「手紙じゃないんだから・・・」
また無駄話。そう思ったけど、マスターと仲良くなるためには何か話しかけないとダメで。これ以上関係を深めたいと思うなら触れるしかなくて。
・・・でも、もう叶わないわけで、少しだけ切なくなる。これから失恋関係の歌でも聴くとしようかな。
「・・・」
「・・・でね、カイト」
何かうれしそうなマスター。また、あの人を見かけたのか。僕のマスターを奪った僕みたいなそんな人。
その人はマスターと同じ世界にいる、りあるびとだ。僕は電子の世界のじゅうにんだ。
そんな些細な小さすぎる差に、僕は負けたということか。
でも、しょうがないっていうものか。・・・少し、悔しいけど。
「・・・・・・すいません、僕、ちょっとやることがあるので」
今日はそこで、ぎぶあっぷした。
・・・ほんとは、もう少し話をしたかったけど。
うれしそうに、たのしそうに、そんなますたーのえがおをむけるのが、ぼくではなくべつのひとだから。なんとなく、いやだから。
そんな子供っぽい理由で、ぎぶあっぷしておいた、そんな僕はやっぱりだめな人なのかな。
今や、2人にはそれ以上道は続かず、2人には未来が続いて、それが幸せというものなのか。
・・・なんて、じょーだんだけどね。哲学的なことを言ってみたかっただけ。
「・・・・そう?」
マスターは知らないふりをしているのかそれともほんとに気づいてないのか首を斜めに傾ける。
「そうですよ、僕にだって興味あることはたっくさんなんです」
「ほぉ、君にもそんなものがあったのかねー」
「む、失礼な。あのですね・・・」
言いかけて、ついいつものペースになってしまっている自分に気づいて、
「もう、キリがないので失礼します。」
そう言って、今日の会話を締めくくった。
また、明日も続いていくんだろうけど。
また、明日も変わらず過ごしていくんだろうけど。
まぁ、それもいいと思える僕はやっぱり何かが足りないのだろうか。
そう自問自答難問回答しながら、僕はくるりとマスターに背を向け、自室へと戻ったのだった。
マスターだけでなく、空にも背を向けて。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

拝啓 やっぱり叶わぬ思いと切なさと過去を想起するはほんのりビターテイストで

こんばんは、毎度毎度小説(もどき)が長くなってすいませんと半分反省半分気にしない対質のもごもご犬です!
最近は妙に楽しい毎日が続いてますが、昨日一昨日は友達がいなくて少し寂しかったです、やっぱり。でも、あのこと過ごしてました、あとあのこにくっついてる少しお邪魔友達とも。そういや今日の放課後いなかったな・・・だから2人で相変わらず話してました。
くだらん近況はさておき、今回はまたかよと誰かが呟きそうな・・・そう、マスカイですよ皆さん。←
今はごたごたごたついてるからがたごと落ち着いて他の話が書けないんです。なので、書けない分、マスカイに行ってしまうわけです。
多分3月の中旬頃には全て、す べ て 終わっていると思うので、それまでは気にせずに、ですよ!
それでは失礼しました!

閲覧数:64

投稿日:2010/02/10 19:40:22

文字数:2,394文字

カテゴリ:小説

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