#13「崩壊する自我」
私はその日……一限も授業に出ずに学校を早退した……
グミも心配していたけど、精一杯の笑顔で「大丈夫だから」と言って……
そうやって……また嘘をつく……
嘘の積み重ねが、今回の原因なのに、私は結局、グミのように素直になれない……
……仕事で両親はいないし、アイツはまだ学校……
私は自分の部屋に帰ってくる……
いままで溜めに溜めたものを吐き出すかのように、あたりにあるものにあたる
言葉ではなく、叫びに近いものを発しながら、私はあたりかまわず……
机の上のものをすべて床にたたき落し、窓際にあるぬいぐるみも壁に叩き付ける
カーテンも引きちぎり、小さな本棚も横倒しにする
部屋の中が、まるで強盗に襲われたかのような惨状になって……私の体の動きが止まる
すると、今度は膝に力が入らなくなって、すとんと崩れた
そして、そのまま床に伏せたまま……泣きに泣いた……
あれからしばらく経った……
部屋の中が暗い……
ふと、転がっている時計を見ると午後5時を過ぎたあたりだった
私は部屋の壁に寄りかかって、体育座りをしていた
何も考えていない……
もう、疲れた……
その時、私の部屋がノックされる
「リン?大丈夫かい?」
ドアの向こうから聞こえるのは、一番聞きたくないアイツの声だった
「グミさんから、リンが早退したって聞いてさ……」
グミ……か……
「……入るよ?」
そういって、アイツは部屋のドアを開ける
廊下の明かりが、私と部屋の状況を照らす
「?!……リ、リン!これは、ど、どうしたんだ!?」
アイツはすぐに私に駆け寄った
「……」
しかし、私は何も答えない
「……リン?……泣いてたのか?」
アイツは私の顔をのぞく
「……うるさい」
私は膝の間に顔を伏せた
「……そうか。ごめん」
そうやって……コイツはすぐに謝るんだ
そして、ソイツは私の横に座って、無言で頭をなでる
もはや、それを払いのける元気もない……
「……何があったかは聞かない。リンがこんなになるなんて、よっぽどのことなんだろう?」
それはいままで一緒に生活してきた兄だからわかること……
「ねぇ……」
「……ん?」
私の力ない言葉に優しい雰囲気で反応する
「……グミの唇、どんな感じだった?」
「え?!あ、え?あ、ええ?ど、どうしたんだ急に?!え、グミさんは、そんなことも話したのかい?」
アイツはものすごく慌てていた
「……その慌てぶりからすると、したんだ……変態」
「ぐっ……かまかけたのか……」
アイツは渋い顔をしていた
「……どうして、アンタは私じゃないの?」
「は?」
私の言葉を理解できなかったアイツ
「ねぇ?私とアンタ……何が違うの?顔もそっくりだし、声だって似せれる……」
「リン?」
ソイツは私を心配そうに見る……その目は腹が立つ
「私の方が……ずっと想ってきたのに……先に好きになってもらえたのに……私が……女だからなの……」
「リン?何言ってる?」
グミは言ってくれた……もし私が男なら好きになっていたと……
「どうして……後から入ってきたアンタは、私の大切なものを奪うの……どうして、私に男を譲ってくれなかったの……」
「……ごめん、何言ってるか……」
私はすくっと立ち上がって、床に落ちていたハサミを拾う
「リ、リン?」
先端が鋭くなっている昔ながらのハサミ……これで刺したら痛いよ?
「ねぇってば……どうして?どうして?……ねぇ?」
私はハサミの先端を自分に向ける……
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