「リン、誕生日おめでとう。」
 そう言って君は、野花を摘んで渡してくれた。綺麗な花、可愛らしくて。照れくさそうに笑いながら。綺麗な包み紙で、本当に小さな、でも、これ以上ないほどの心のこもった花束だった。
「よく覚えていてくれたね、わかりにくいのに。」
「大切な日でしょ。忘れないさ。」

 その何ヶ月か前に誕生日を聞かれたっけ。君が急に、思いだしたように聞いてきた。お互いに知らないことばっかりで、大変だけど楽しかった。
「12月の27日、覚えにくいでしょ?」
「そんなことないよ。いつまでも、ずっと覚えてるよ。」
「そう? いつも忘れられてるのよ。」
「僕だけでも忘れないさ。」

「こんなものしか用意できなかった、ごめんね。」
「大丈夫よ、これで十分。」
 冬に咲いている花なんて、花屋でしか見つからないもの。この寒い中、探してくれたんだと思う。本当に、十分。笑顔が暖かい。

 いつもが思い出になった。たくさんの喜びを貰っていた。一つ一つ些細なことも、私にとっては大きな幸せだった。誕生日以外だって、優しいことには変わりなかった。悲しいことがあったときも、うれしいときも、そばにいたのは君だったよね。いつも隣にいて、いつも笑っていて、いつも温かかった。いつの日だって、笑顔だったよね。

 でも、最近は違うの。笑ってくれない。どうしてなんだろうと思っても、全然わからない。前は、温かかったのに。今はどうして冷たいのかな。付き合って最初の頃とは違っている。
「君のことが、何よりも大切だよ。」
 って言ってくれた。
「世界で一番大好き。」
 とも言ってくれた。優しさだけが変わらないよね。

 今日は、いつもよりも優しかった。今日は、少しだけ笑っていた。でも、今日は、君が大切な日って言っていた日よ。私の誕生日。前みたいに何にもしてくれない。少し、耐えられない。
「今日、何の日か知ってるの。」
「いいや。」
「大切な日っていったじゃない、いつまでも・・・覚えてるって・・・・・・。」
 悲しい気持ちでいっぱいになった。だから、涙をこぼした、うつむいて。君の顔を見れない。どんな表情で私を見てるの? 面倒そうに、迷惑そうに、哀れむように、邪魔なように、私を見ているの?
「・・・・・・これ。」
 君は、ハンカチを渡してくれた。君は、今でも優しかった。

 信じてもいいよね。冷たいけれど、優しい君はいつまでも変わらないって。ちょっとだけ、悲しいよ。でも、君と過ごした日々は、色褪せることなく変わらないから。

「ありがとう。」
「ごめん。」
「もう、大丈夫。」

 これから過ごす日々は楽しい。
 そう思ってもいいよね。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

君との思い出

チェシャ猫さんの歌詞を元に書いてみました。
・・・短いのは作者のデフォルトです。
暖かさ、出てるかなあ?


本物の小説みたく、句点改行せず、改行で一段下げるというのを初挑戦しました。
・・・・・・やっぱ普段の方が性に合う。

閲覧数:302

投稿日:2009/12/29 17:08:07

文字数:1,112文字

カテゴリ:小説

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  • 短足猫足@失踪中

    短足猫足@失踪中

    ご意見・ご感想

    わきゃーーーー!!
    私の歌詞がこんな素敵な小説になるなんて!!
    ku-yu様!ありがとうございます>w<

    リンとレンの日常物語っぽく書いたのがいいと思います^^
    リンちゃんもかわいらしくって素敵です♪

    ブクマ!ブクマさせていただきます!!

    2009/12/29 17:34:07

    • ku-yu

      ku-yu

      >>チェシャちゃん

      一応、リンのお相手が歌詞からだとわからない為、レンって書いてません。
      どっちにしろレンですが(笑)

      日常が一番暖かいかなぁと思って。よかったですか?
      ブクマまで・・・ありがとうございます!!

      2009/12/29 17:53:32

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