その黒ずくめの少年の名は―――『死神』。
生き物を殺す鎌を持てないが、あらゆる命の期限を知る者だ。
退屈な死神は、時々期限が近い人間の元に現れる。
が、彼を見る事ができる人間は僅かだった。
死神は、伯爵家を訪れてみる事にした。
自分が見える人間がいると、不思議と確信できる期待を胸に。


一方伯爵家では、上を下への大騒ぎとなっていた。ド=クロエ伯爵の一人娘リーリアの病が手遅れだと判明したからである。
伯爵夫人は意識を失い、伯爵は天を仰いだ。家人達も仕事が手に付ないが、侍従長も怒るに怒れない。
黒衣の少年が壁をすり抜けて部屋に入ってきたが、誰も彼には気付かなかった。
当のリーリア=ド=クロエはただ一人、冷静に言った。
「じゃあ、殺して」
この台詞には部屋にいた全員が驚いた。伯爵夫妻や主治医、使用人に加えて、死神の少年さえも。彼の記憶には、死を宣告されてそんな事を言った人間は初めてだった。
「なんて事を! リーリア、今の発言は撤回なさい!」
伯爵夫人は半狂乱になって叫ぶ。
「そうだぞ、リーリア! 兄さんに謝りなさい!」
伯爵も青筋を立てて怒鳴った。だが、その台詞が少女の逆鱗に触れたのか。少女は病人とは思えない勢いで立ち上がると、伯爵夫妻を睨みつけた。
「何よ、二人とも! 兄様兄様ってそればかり、兄様はもう死んだのよ? もう10年も経つのに、いい加減私を見てよ!」
怒鳴った事が身体に障ったのか、少女は激しく咳込む。
「とにかく・・・出てってよ! 出てって! 皆、大っ嫌い!」
あまりにも激しいリーリアの剣幕に、両親や使用人達は渋々出て行った。主治医は「ちゃんと飲んで下さい」と薬を置いていくのを忘れなかった。


「―――誰もいなくなったわね。一人以外」
少女の主観では誰もいないはずの部屋で、少女は呟く。
その澄んだ蒼い瞳が、ひたと死神を見つめた。

「貴方、死神?」

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【白黒P】鎌を持てない死神の話・2

短くてサーセンww

閲覧数:237

投稿日:2011/05/26 17:16:13

文字数:798文字

カテゴリ:小説

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