「雲・・・綺麗だなぁ~。」
空に浮かぶ雲を見て、川沿いに立つ少女は呟く。
綺麗なエメラルド色の髪の毛をなびかせて。
フワフワと自由に何も気にせず流れていく雲。
現実とは全く別の世界。
何ものにも縛られず、自分の思うように過ごせる。
窮屈な世界と広く自由な世界。
近くて遠い世界。
手を伸ばしたら届きそうで届かない世界。
ふと視線を川の方へ戻す少女。
1人の少年は、なぜか川の中を歩いていた。
「・・・?」
少女は少年に近づく。
少年は川の音で少女に全く気づかない。
「あの・・・危ない、ですよ?」
小さい声で話しかけてもかき消される。
どうしようと悩んでいる間にも少年は進んでいく。
いまにも足をとられて溺れてしまいそうな深さにいる。
「あっ、あのーーー!!危ないですよーー!!」
さっきよりも数倍大きな声で叫ぶ。
少年はチラッと少女の方を振り向く。
綺麗な顔立ち。
不覚にもドキッとした少女。
自然と顔が赤くなる。
「あの・・・?」
少年は、数秒間、少女を見たがまた前を向いて進んでいく。
気が気じゃなくなった少女は持っていた鞄を放り投げて川に飛び込んだ。
無我夢中で少年を追いかける。
川の水が冷たく、そして少女の歩みを妨げる。
途中、滑りそうだったが、なんとか追いついて少年の手を掴む。
「待って!!」
息を切らして少女は言う。
「・・・離せ。」
やっと開かれた少年の口。
とても低く小さな声が2人の間に響く。
「離せ・・・って、このままじゃ危険ですよ。」
「・・・離せ。」
「溺れちゃいますよっ!!」
「・・・離せ。」
何を言っても‘‘離せ’’としか言わない少年。
少年の目は少女を向いているはずなのに何も映っていない。
ただの暗闇。
「しっ、死んでしまいますよ!」
川の音に負けないぐらいの声で言った。
しかし少年は何の反応もしない。
ただボソッと呟く。
「・・・構わない。」
「かっ、構わないって、死んでもいいってこと?!」
「あぁ、そうだ。」
「どうしてっ?」
「・・・こんな世界、もううんざりだ。」
何も考えず質問した答えは、少女には計り知れないものだった。
「・・・何があったかは、分かりませんが、命を粗末にしてはいけません。」
「・・・そんな言葉、響かないね。
命を粗末にするな?
でもこの国で自殺する奴は大勢いる。
そいつらはどうなるんだよ?そいつらは命を粗末にしたとは言わないのか?」
「それは・・・。」
言葉に詰る少女。
少年はお構いなしに追い討ちをかける。
「お前の言う事は、ただの綺麗事。
それに俺の命だ。他人にどうこう言われる筋合いはねーよ。」
「っ・・・。」
少年は力ずくで少女の手を離して進む。
他人、もっとも過ぎる言葉。
呆然と立ち尽くす少女。
「他人なんかじゃないっ!!」
数分後、少女はまた叫んだ。
振り向き、少女の顔を凝視する少年。
「今日、川で出会いました。
お話しました。
それだけで、私達は他人ではなくなるんじゃないんでしょうか??」
「・・・なんだよ、それ。」
「あなたがこの世界に絶望したなら、私があなたの見る世界を変えてみせます!
あなたが死にたいのなら、私が止めます!!
だって・・・、もう出会ってしまったんですから。」
少女の目は少し涙で潤んでいた。
今は秋、寒いはずなのに少女は興奮して汗をかいている。
そして少女は少年に向かって走っていった。
少年はビックリして声をあげる。
「おい、走るな!!あぶなっ・・・」
少年の忠告も虚しく、少女は水中の小石に足をとられた。
「きゃっ!!」
一気に水中に沈んでいく少女。
朦朧とする意識の中で、少女の視界に映る雲。
「雲・・・綺麗だなぁ~。」
声にならなかった言葉を残して少女は目を閉じた。
「ケホッ、ケホッ!!」
再び少女の視界に光がさした。
綺麗な雲が少女の目に映る。
「雲・・・。」
呟く少女のおでこを叩く少年。
「お前、馬鹿かよ。
なんでお前が死にかけてんだよ。」
ヒリヒリするおでこをさすりながら、エヘへと笑う少女。
「私、ドジだから。」
「意味わかんねー。」
微笑み続ける少女。
雲がゆったり流れる青い空。
少年は、ただ少女の隣で座っている。
「もう、川の中になんて・・・行かないよね?」
「・・・、さぁな。」
目を合わせず、曖昧に答える。
すると勢いよく起き上がって少年の頬を思いっきり叩いた。
「てめっ・・・」
「馬鹿っ!!
あなたなんかと出会わなかったら良かった。
勝手に死んでしまえばよかったのよ!!
うぅっ・・・・・・・・・。」
ボロボロよ零れ落ちる涙。
初めて出会ったただの他人なのに、勝手に前を通り過ぎても良かったのに。
どうしても気になった。
多分、自分と似ていたから
少女も窮屈な世界にあきあきしていた。
でも少女は、そんな世界でも愛そうと誓った。
1度きりの人生、こんな世界でも認めようと誓った。
たとえ雲みたいに、自由でなくとも。
少女は、一生懸命ゴシゴシと涙を拭う。
「お前・・・何様って感じなんだけど。」
「えっ・・・?」
「いきなり現れて、さんざん怒鳴り散らかして、叩いて、泣いて。」
「それは・・・」
「初めて見たよ、こんな奴。」
少女の腫れかかった目を優しく撫でて、苦笑する少年。
「笑った・・・。」
嬉しさのあまり、少女は少年に抱きついた。
固まる少年。
「私が必ず、生きていて良かったと思わせてあげます!!」
自信満々に宣言する少女に、また笑う。
「だから何様?!」
「何様でもないです、あなたの友達です。」
そっと差し出された小さな手。
少年はジッとその手を見つめる。
「あの・・・手を。」
少年は、その手を握る。
と思ったら、その手を引っ張り強く少女を抱きしめた。
「キャッ!!」
「・・・必ず言わせてみろよ。
生きてて良かったって、俺に。」
「・・・はいっ!!」
「言わせれたら、友達、解散な。」
少女は目を見開いて少年を見る。
あからさまに‘‘どうして?!’’と訴えかけている。
「多分、その頃にはお前、俺に惹かれてると思うから。
付き合ってやるよ。
俺の人生っていうおまけも付けて。」
「なっ!!ひっ、惹かれません!!」
「どうだか。」
「・・・誓います!!」
「無駄な足掻きは止めとけ。」
「そんなことっ。」
少女は顔を真っ赤に染めて、反論。
周りから見ればしょうもない痴話げんかだ。
少年の言うとおり、惹かれるのも時間の問題かもしれない。
まぁ・・・それはまた別のお話。
「俺、グミヤ。」
「あっ、私はグミです!!」
2人は笑いながらその場を立って地面を歩き始めた。
雲が流れる空の下。
2人は、歩き続ける。
窮屈で束縛だらけの世界を。
たとえこの先が厳しくとも、2人は平気だろう。
それを支えあえるパーツを見つけたのだから。
組み込むのは簡単でも取り外すのは難しい。
硬くきつくはめられたパーツ。
雲が2人を追いかけるように流れている。
~END~
パーツ
なんとなく即興で書きたくなって書いちゃいました♪
こういう話を書いてみたかっただけです(汗)
ごめんなさい(泣)
いや・・・これから中間テスト・模試・実力テストが待っているので更新できないから・・・
何かをやっておきたかった・・・
10月は3つもテスト・・・
あっ、これ一応ミヤグミっす!!
イチャイチャするのは、まだ先のお話(笑)
いいですね、人生っていうおまけ付き(笑)
私にもください・・・なんてww
グミちゃんだけの特権っすね!!
ってことで、読んでくださった方ありがとうございます!
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