[某所 廊下]
時はすこしさかのぼり、デフォ子たちがヘリコプターで出陣しようと忙しく準備をしていた頃。
マイクを渡し終えたネルは、一人廊下を進んでいた。行く先は…あの部屋。
早く行動にでないといけない。そのためにはやつの協力が絶対だ。あいつなら、きっと解決策を…いや、ヒントくらいはくれるだろう。そう思いながら歩いていると、背後から声がした。
「…どこにいくの?」
「…テイ」
やれやれと言った調子でネルは振り向いた。テイはネルの表情をうかがった後、もう一度言った。
「…どこにいくの?」
「関係ないだろ、こっちにはこっちの事情があるんだよ」
そう言ってネルは歩き出そうとするが、テイはそれをさせなかった。
「…ハクの所に行くんでしょ?」
思わずネルは踏み出した足を止める。…止めてしまった。
図星ね、といわんばかりにテイが近寄ってきた。そしてポン、と肩に手を置き、耳元でささやいた。
「まさか…裏切るなんて考えてないよ、ね?」
普段のテイからは考えられえないその低い声に、ネルは動揺した。
「…そんなわけ、ないだろ」
ネルは目をそらし、低い声でそうつぶやいた。
テイはその回答には興味を示さず…胸のポケットに手を触れた。
「じゃあ…これ、返してよ」
ネルの胸には硬い金属の感触があった。それは…鍵だ。
ネルはこの建物内のすべての鍵のついたキーホルダーをあの方の部屋から拝借していいたのだ。
「…分かったよ。…とりあえず気味が悪いからどけ!」
ネルはテイの手を振り払うと、やれやれ、といった感じで胸ポケットを探る。
すぐに、十数個の鍵が付いたキーホルダーが出てきた。それをヒュッ、とテイに投げ渡した。
テイはそれを受け取るとすぐに自分のポケットにしまう。…テイの追及がこれ以上なかったことにネルは内心で胸をなでおろした。
「…で、ゲームの状況はどうなってる?さっきマイクは渡したわけだし、やっぱりすぐに介入にはいるのか?」
話題転換しようとネルはテイに質問したが、彼女は「さあ?」と肩をすくめて見せた。
「…そうか」
「そんなことより、分かってるんでしょうね?今後の私たちの行動は」
逆にテイが聞き返してきた。この場を去ろうと踵を返しかけていたネルはやれやれ、と背中を向けたまま答えた。
「分かってるさ」
「本当に?」
「本当だ」
テイの言いたいことはネルも十分把握していた。
彼ら、そしてネルは、はあの方に召集されたいわば単なる進行係、または調整係だ。
…本来は。…そう、本来は。
「…もう、動くのか?まだ生存者のほうが多いのに」
「さあ?そこは知らないわ、テト次第だもの」
「…そうか」
「ええ。…まあ、その辺はテトから伝令がそっちにもいくでしょうから…ちゃんと、やってよ?」
後半を、まるでネルの内側を探るようにゆっくりと、テイは言った。
「…ああ、わかっているさ」
背中を向けた状態でネルは答えた。テイは一瞬顔を曇らせたが、特に深追いはしないようで、「じゃあね」と、モニタールームへと戻っていった。
ネルはそのまま黙って後ろ目でテイを見ていた。
本来ならば、私も…テイに協力したかった。この世界であいつらに隠れて名もあげられない私たちが時代を手にするには…絶好のチャンスだと言える。…全く、あの方も未熟だ。
でももう今の私にはそれができない。あの方の真実を知ったほかにも、私は見てしまった。…おそらくあの方は、十分承知の上なのだろうけど。
それは…
本物(オリジナル)なしでは…私は…存在できないこと。
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MVライフ
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ご意見・ご感想
enarin
ご意見・ご感想
風のファンタジー様、初めまして、enarinと申します。
当方のボカロ小説をブクマ頂きまして、有り難うございます♪ 私もこちらに遊びに来ました~♪
そして早速拝読させて戴きました。緊迫した掛け合いと行動で、スリルがあって面白かったです。”本物”というキーワードも出てきましたね。
フォローもさせて頂きましたので、この話から拝読をスタートさせて頂きますね。
最近は、”悪ノ”、”カゲロウデイズ”を筆頭に、動画からスタートした共通点はありますが、ボカロ色が濃くないボカロ小説が大人気ですよね。凄く嬉しい流れだと思ってます。
それでは、また。
2012/11/14 16:30:39