はらはら、と殆ど葉桜になっている桜の樹から遅咲きの桜の花片が一枚、寂しげに落ちてきた。あぁ、もうそんな時期なのだな、と思いながらレンはフゥ、と息を付いた。
 高校に入って一ヶ月余り、大分高校生活に慣れてきた。そうすると訪れるのは何か詰まらないな、と言う感覚だ。高校、と言っても中学の延長線の様なモノで大して変化はない。正直言って、暇だ。何か面白い事無いかな、と思っていた矢先、レンは一人の少女を見つけた。
 いや、少女自体、いるのは全くもって珍しくは無い。制服はレンの通っている高校のモノだ。そして、極め付けなのは、その少女は見事なまでの金髪をしていた、と言う事だ。
 レン自身、金髪だから人の事をとやかく言える立場ではないが、金髪ははっきり言って、目立つ。しかも自分と同じ高校ならば噂位たちそうなモノだ。
 己と同じ、金髪の少女がいる、と。
 けれどレンはそんな噂一度も聞いた事が無い。ならば彼女は転校生だろうか、でもこの時期に転校生って何か微妙じゃね? とか色々と思考を巡らせつつレンは少女は近付いていった。
「あの、如何かしましたか?」
 レンが声を掛けると少女は驚いた様にビクリと肩を震わせ、此方の方を向いた。晴れ渡った空の様なブルースカイの瞳もレンとそっくりだった。
「・・・なんですか・・・?」
 少しだけ驚いた様な、それでいて警戒している様な口調で少女は言った。
「その制服、さ、俺のとこの高校と一緒だから。何? 道に迷った?」
 そう言うと少女は何で分かったの、と言う目でレンを見た。元々レンは勘は良い方だからそうではないのかと思って聞いてみたのだが、どうやらそうらしい。
「なら案内するよ。着いて来て」
「え? あ、ちょっ・・・」
 ス、と前に出て歩き出したレンの後を慌てて少女は追いかける。何だか鴨の親子みたいだな、と思って少しだけ笑ってしまった。その様子を見て少女は不思議そうに首を傾げたが何も言ってこなかった。
 少女の歩く様子を時折見ながら歩く速さを調節する。意外とレンが普通に歩いても平然と着いて来るので内心少しだけ驚いた。
 そんな事をしている間に高校が見えてきた。
「ほら、あれがうちらの高校。道は分かった?」
「あ、うん。有難う」
 振り返ったレンに少女は礼の言葉を述べながらその顔に可愛らしい笑みを浮かべた。その表情に思わず顔が赤くなる様な気がした。
「・・・あ、そういやぁさ、名前、何ていうの? 俺は鏡音レン」
 ふと思いつき、そう尋ねついでに自分の名を言うと、少女は え、と言う声を漏らした。
「あたしはリン、鏡音リン。苗字、一緒だね」
「あ、ホントだ」
 プ、と二人して吹き出して、少しの間クスクスと笑いあっていた。と、不意に少女―リンはハッと顔を上げた。
「・・・もうそろそろ行かないと。じゃあね、レン君。また会えたら良いね」
「会えると思うよ」
 レンがそう言うとリンは少しだけ顔を赤らめながら嬉しそうに「だと良いな」と言ってはにかんだ。
 そしてリンとレンは学校内に入ると、それじゃまた、と言って別れた。

「え~、今日は、転校生の方を紹介しようと思います」
 SHR時、レンのクラスの担任がそう言うと、教室がどよめいた。ザワザワと騒ぐ教室の中から先生は廊下に向かって「入ってきてー」と良く通る声でそう言った。
 ガラリ、と扉が開き、入って来た人にレンは驚きつつも、やっぱりな、と言う表情を浮かべた。
「じゃあ、自己紹介して」

「はい。今日からこのクラスに新しく入る事になりました。鏡音リンです。宜しくお願いします」

 リンはそう言うとペコリと頭を下げた。そして、頭を上げた時、レンと目が合い、嬉しそうに微笑んだ。
 なのでレンも同じ様に微笑み返した。













 春はもう終わってしまったけど、俺の(あたしの)春はこれからの様だ。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

春は其処に

なんて季節外れな小説だろう・・・! でも書きたかったので満足です。

・・・昨日、部活の時に
「lunarを抱き枕にして寝たい」
て言われました。・・・男子にです。

・・・いや、そういう意味じゃないんですよ、ホントに。えぇ、ホントに(必死
何か私といると落ち着く・・・らしいです。喜んで良いのか悪いのか・・・。

・・・作品解説しますね。取り合えず学パロです。再会シリーズではないですけど。
とりまリンが転校生。で、レンリン・・・? 的な、です。お互い一目惚れ、みたいな。
まぁ、この二人はすんなりくっ付きそうですね。これっきりだと思いますけど。

それでは読んで頂き有難う御座いました!

閲覧数:263

投稿日:2010/07/23 22:47:58

文字数:1,601文字

カテゴリ:小説

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