次の日、リンは学校を休んだ。正確には、レンが休ませた。
朝になってみると、リンは体がだるいと訴え、仕方がないのでとりあえず休ませて、様子を見ることにした。少し過保護なように思えなくもないが、リンは風邪もひいたことがほぼないので、レンが騒ぐことが当たり前のようにも思われる。
グミヤはその日、苛立っていた。リンがいないことが直接の理由ではない。リンがいないことでレンが常に上の空であること、グミ
がリンの心配ばかりをして天然に拍車がかかったことが、その理由だった。
いつもは突っ込みに徹するはずのレンが、リンがそばにいないと言うだけで、グミ以上の天然振りを発揮する。
例えば、昼休み、弁当箱を開いて、突然、
「…俺、何しようとしてたんだっけ」
と言い出す。他にも、授業中に、徳川家康とヒトラーを間違えたという。何を聞いてもさらっと当てて見せるレンの不調に、先生が本気で心配して、保健室送りにされる所だったという話だ。
仲間内で突っ込みの役を担っていたのはグミヤとレンだったから、レンが使い物にならなくなると、必然的に、グミヤの仕事が増える。そのことに、グミヤは絶えずイライラしていたのである。
帰り際、グミが
「リンちゃんのお見舞いいこーよ」
と言い出した。正直、面倒くさいし、そもそも行きたくもないし、それを聞いたレンも嬉しい顔はしていない。
多分、レンは、家に帰ってさっさとリンの世話をしてやりたいのだろう。いくら親しい友人とはいえ、態々こられても邪魔に思うだけに違いない。グミヤはフォローした。
「今日はやめとけ」
「なんでよぅ。リンちゃんのこと、心配じゃないの!」
「レンに任せとけば平気だろ。お前がいると、寧ろ邪魔だ」
あまりフォローにはなっていなかったかもしれなかったが、グミは渋々ながら、見舞いに行くのをあきらめたらしかった。
その後、レンと別れて、帰る。
「グミヤさぁ…。今日、ずっとイライラしてたでしょ」
グミが言った。
「おう…。誰かさんの所為でな」
「だってリンちゃんのこと心配じゃん…」
「ばっか。ただの風邪だろ、すぐ治るっつの」
「でもぅ…」
まだ不満そうなグミの頭をぐしゃぐしゃと引っ掻き回して、ショートヘアーを乱すと、グミヤは数歩先を歩き始めた。
グミはその後を追って、少し足を速めた。グミヤの腕に自分の腕を絡めて、グミヤの歩幅にあわせて歩き始めた。わずかにグミヤはそれを拒もうとしたが、少し考えて、グミをとがめることなく、歩いていった。
レンは家に戻ると、リビングに顔を出した。
「…寝てろっていっただろ」
リビングでは、パジャマ姿のリンがぬいぐるみを抱きしめて、身を乗り出すようにしてテレビを見ていた。
「だって、正子の旦那の不倫相手はお姉さんだったんだよ? だから正子はお姉さんの旦那と不倫しちゃうんだよ? でも実は二人の旦那同士も兄弟で…」
「…昼ドラ?」
「…うん」
どうやら、昼ドラみたさにベッドから這い出してきたらしい。そういえば、新聞のテレビ欄に、昼ドラのシリーズ一本を一度に再放送するとかって、書いていたような。
「熱は? ダルさとかは?」
レンはリンの隣にしゃがみこんで、そっとリンの額に手を当てると、朝より熱が下がっているような気がする。ほっとして座り込むと、リンはふにゃっと力の抜ける笑顔を見せた。
「大丈夫―」
まだ少しぽーっとしているように見える。それでも、朝や昨日よりかは具合がよさそうだ。
「食べたいもの、ある?」
「…カレー」
「じゃあ、カレーな。いつもより量は減らすぞ。吐いたら困るし」
「はぁい」
カレーの材料ならそろっているはずだ。レンはキッチンへと向かった。
「――で」
リントは言った。隣の席で、リンがへらへらと笑っている。
「お前の世話をしていたレンが風邪を引いて休んだ、と」
「そうみたい」
あはは、と笑いながら、リンはさして気にした様子もない。
不憫な奴だな。
「そりゃあ、風邪ひいた人の隣にずっといたら、風邪もひくよね!」
本当に不憫な奴だな…。
そのうち、見舞いにでも行ってやろうか。嫌な奴だと思っていたが、こうなってくるとただただ不憫である。
そんなことを、リントは考えていた…。
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ご意見・ご感想
美里
ご意見・ご感想
こんにちわ!
グミヤ君いいですね~。今回の話で一番目立ってると思います。主役です。
そして、リンちゃんが風邪をひいただけで騒ぐレン君もいいお母さん役ですね。
そして、しまいには風邪が移ると。素晴らしく当たり前のことを成してますね。
ミヤグミはいいですね。今回でますますミヤグミ愛が増したと思います。
次回も楽しみにしてます!
2011/12/07 20:32:36
リオン
こんばんは、美里さん!
グミヤいいですよね、多分一番まとも! それゆえに活躍も少ない…。
そうですね、双子といいながら親子のような鏡音が激しく好きです。愛してます。
レンはリンのために付きっ切りになるので、それも当たり前です。それでもレンはリンが好き。
本当にミヤグミ可愛い。もう可愛いです。何でこんなに可愛いのかっていうと、可愛いからです。
次もがんばります!!
2011/12/07 20:37:33