ある、高級住宅の部屋の中。
カチッ。
「はじめまして、私はボーキャラのIAといいます。」
「おぉ!動いた!」
今日新発売されたばかりのボーキャラの新モデル、「IA」が机の上で軽くお辞儀をする。
その滑らかな動きにルカは感動した。
クラスの友達の中でボーキャラが流行っているというのを聞いて、
早速お父様に買ってきてもらったのだ。
その事をIAに話すと、
「マスター、クラスの友達とは誰ですか?」
と、可愛く首を傾げて質問してきた。
「あぁ、カイトとかメイコとかグミとかね。私が知ってるのはそのくらいだわ。」
「なんのボーキャラを持っているのでしょう?」
ライバルの事は気になるのかな?とルカは思ったが、口にはしない。
「カイトは「ミク」を持ってるわね。メイコは「リンレン」、グミは「がくぽ」のはずだけど?」
するとIAは少し顔を強ばらせた。
こんな表情もできるんだな、とルカは感心する。
「ミ、ミク先輩・・・!」
・・・やっぱり、気になるらしい。
~~~そして、IAを買ってから一ヶ月だったある日~~~
「ルカー!」
「メイコ、おはよ。」
同じクラスのメイコが駆け寄ってくる。
彼女もボーキャラを持っているクラスメイトの一人だ。
「あ、そうだわ。ボーキャラ買ったわよ。」
「え!いつ!?いつ買ったの!?」
瞳をキラキラさせてメイコが聞いてくる。
「一ヶ月前。」
「結構前じゃんっ!!んで?何のボーキャラ買ったの?」
ルカは満足気に答える。
「IAよ。」
その言葉に、周りの人が振り返る。
「「い、いあ!?」」
ルカは心の中で「ふふん」と笑ったが、顔には出さない。
発売日から1ヶ月たった今でもIAは大人気のボーキャラである。
豊かな表情などが見所なのだが、ミクよりパワーアップしている。
「発売日に買ってきてもらったの。ミクより性能がいいらしいから。」
そう言ったとたん、カイトが勢いよく振り返った。
「・・・ミクも十分性能いいんだぞ。」
「・・・そう。」
ルカはカイトに微笑む。
カイトはむすっとした表情になってしまったが、それ以上は何も言わずに席に戻る。
その日はもうボーキャラの話題が出ることはなく、ルカは家に帰った。
「ただいまぁー」
「お、お、お、お帰りなさいマスター!!!」
自分の部屋の扉をあけると、IAが急いでパソコンをシャットダウンしている所だった。
ルカは目を細める。
「なにしてたの?IAちゃん?」
「えっと・・・し、新作のモジュールを見ていただけよっ!!」
後退りしながら答えたせいで、
机の上にあったシャープペンシルに足を引っ掛けて転んでしまった。
「いたっ!!」
IAが自分の足を見ている隙に、ルカはパソコンを取り上げ、スイッチを入れる。
「履歴は・・・っと。あれ?ナニコレ?」
IAは履歴を消していなかったらしく、何を見ていたかがはっきり分かる・・・のだが。
どうやらネット生放送の視聴予約をしていたらしい。
その生放送が今、ちょうど始まったところだ。
「あっ・・・!マスター!!」
IAが慌ててルカの制服の袖を引っ張るが、ルカは画面を見続けている。
動画から、聞き覚えのある声が流れてきたからだ。
「カ・・・カイト?」
今日学校で聞いたばかりの声にそっくりな気がする。
似ているだけかな?
『ちょっとカイト!!また音声だけになってる!!』
・・・間違いなくカイトだ。
ルカがパソコンを机の上に置くと、
IAは恥ずかしそうに、スイッチを切ろうと電源に手を伸ばす。
その瞬間、画面にミクが登場した。
『こんにちは!ちょっとひさしぶりの生放送になっちゃったけど、楽しんでいってね!』
後ろには手作りのステージがある。なかなか頑張っているな、とルカは思った。
IAのほうを見ると、電源に伸ばした手が固まっている。
妙にぼ~っとした表情で、頬は赤く、画面に釘付けだ。
「IA?どうしたの?」
ルカが声をかけると、IAがハッとしたように振り返った。
「もしかして、ミクちゃんが見たかったの・・・?」
そう聞くと、IAの顔が真っ赤になった。
「そ、そそそそそ、そんなワケないわっ!
ミク先輩なんかより、私のほうが性能いいんだからっ!!」
大きな声で喚きながら、ぶちっと電源を切った。
(・・・ミク先輩って言ったね。)
実は視聴予約だけでなく、どこから見つけてきたのか、
ミクの画像などもたくさん閲覧していたようだった。
ミク専用のモジュールまで大量にお気に入り登録してあるようだ。
なんていうか、その、まるで・・・・・・。
・・・・ストーカーのようだった。
続く。
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