!!!Attention!!!
この話は主にカイトとマスターの話になると思います。
マスターやその他ちょこちょこ出てくる人物はオリジナルになると思いますので、
オリジナル苦手な方、また、実体化カイト嫌いな方はブラウザバック推奨。
バッチ来ーい!の方はスクロールプリーズ。
「――っつーこった。
まあ・・・あいつも自分で飛び込んだってことはそれなりの覚悟はあったんだろうがな」
ルカさんに説明を終えた後、計ったかのように約束通りやってきた例の男性は、出したお茶に手を付けず、小さく息をついた。俺の口からは「そうですか」としか言葉が出てこなかったが、ルカさんに至っては口から言葉も出ない様子だ。ただ、その表情にはいつもの笑顔ではなく、何か様々な感情が入り混じったような表情が浮かんでいる。
ただ、決して暗いというわけではなかった。それは、男性ができるだけ明るく話したからだろうか。それとも、ある程度のことを予測していたからなのか。男性はそんなルカさんに笑んだ後で、ようやく出されたお茶に気付いたように、それを飲み干した。
そのまま立ち上がって去っていきそうな男性に、思わず立ち上がる。だが、慌てた俺よりも落ち着いていたルカさんが「待ってください」と声をかける方が早かった。その声を聞きながら立ち上がった男性は、後ろ首をさすりながらどうしたものかと考えるように黙り込む。時間にすればほんの数秒だったが。
「あー・・・・・・おっちゃんがいない方がいいと思うんだがな・・・お前さんらの判断に任せるとするか」
諦めが混じった声を聞きながら、今更ながらに疑問が浮かぶ。そう言えば、この人は昔からマスターのことを知っているような口振りだった。どこで知り合ったのかはわからないが、隆司さんのこともあの男のことも知っているということは、何かしらあったはずだ。まさかマスターが警察の世話になるようなことをしたわけではないだろうが。
そんな風に考えを巡らせていた時、ルカさんが俺に向けて言葉を紡いだ。
「私自身は伝えた方が良いと思いますが、
カイトさんのマスターのことです・・・最終的な判断はあなたが」
ようやくいつもの微笑みを浮かべたルカさんのその言葉で、俺は今まで考えていたことを消し去る。
ルカさんは、強制しているわけではない。自分が進む道は自分で決めろと言っている。マスターの意思ではなく俺の意思で・・・マスターにとって何が大事なのかを自分なりに考えて動けと。
言われなくとも、心は決まっている。それ以外にあるはずもない。それが、またマスターの状態を悪くさせるだけだとしても。
「起こしてきます。数分経ったら・・・入ってきてください」
「・・・わかったよ」
男性が、その強面には一見不釣合いなおどけた調子で笑い、椅子に座りなおした。少し呆れた様子が見て取れるのは、俺が考えていた通り、後のことは俺たちに任せて早々に立ち去ろうとしていたからなのだろう。だが、俺が言おうとしてもマスターはおそらく取り合ってくれない。第三者が言ってくれた方が、マスターもいくらか冷静に聞けるはずだ。
廊下を歩くとひたひたと音がする。それはどこかよそよそしく、あの家に踏み込んだ時の感覚を呼び戻した。
嫌な感覚を押し戻してマスターの部屋の扉に触れる・・・と、中から声が聞こえたような気がした。
目が覚めたのだろうか。そっと扉を開くと、ベッドの上で上半身を起こしたマスターがちょうど涙を拭ったところだった。深い後悔が浮かぶ表情。躊躇いがちに開かれた口からは、謝罪の言葉しか出ないようにも思える。
「――私一人で全て終わるなら・・・」
また自分が悪いわけでもないのに謝罪の言葉を口にするのだろうと思っていたのに、マスターの口から出たのはそんな言葉。その先に俺が一番聞きたくない言葉が見えて、止めなければと考えた時にはもう遅かった。
「何馬鹿なこと言ってるんだ? そんなことしても、誰も喜ばないぞ」
口にしてからはっとする。俺の言葉を、マスターはどう受け取ったのだろう。俺は今笑えているだろうか。渦巻く考えを、マスターとの距離を埋めてその頭を軽く叩くことで払拭する。
マスターの表情に朱がさす。それは、行き場のなかった怒りが声をかけられることで爆発してしまったかのように。
立ち上がったマスターは鋭い視線で俺を射抜き、小さく開かれた口から「あ」と小さな声を漏らした。その後は、せき止めるものが完全に消えてしまったように、言葉がマスターの口から流れ出す。
「あなたに何がわかるの!? 私がいるだけであの人も司くんもいなくなったんです!
これからだってきっと、私の周りにいる人は不幸になる・・・そんなの、もう嫌だよっ・・・!」
自分の口から出ているその言葉が、人よりも自分を深く傷つけることを、この人は知らない。おそらく、今の自分の表情も意識したものではないだろう。そんなに苦しそうな顔で言っても、説得力なんてあるわけがない。マスターはこんなに、ここにいたいと願っているのに。
手を伸ばしながらマスターと呼んでみるが、興奮状態のマスターに俺の気持ちは届かなかったらしく、伸ばした手は弾かれる。
「も・・・っ、放っておいてっ・・・! 私は・・・私は、いらない人間なんだよっ!!」
「っ・・・」
一番言わせたくなかった言葉がマスターの口から放たれてしまった瞬間、俺はその手首をぐっと掴んでいた。
「マスター、いい加減にしないと俺だって怒るぞ」
怯えさせないように響く声を選んでそう言ったが、今俺はおそらく厳しい表情をしているだろう。マスターが口を一文字に結んで俯いたのは、俺が怖かったからなのかもしれない。震えている手が、彼女の心中を表しているようだ。
恐怖もあるのだろうが・・・不安で、怯えている。自分が必要のない人間だと、いない方が良い人間なのだと思い込んで。そんなこと、あるわけがないのに。
マスターの体が跳ねるのも構わず、ぎゅっと抱きしめる。息を呑む音が聞こえたような気がした。
「――お願いだから、自分のことをいらない人間だなんて言うな。
少なくとも俺にはマスターが必要だ」
人間よりも有能だと思われる機械でも、一番相応しい言葉をはじき出すことはできず、ありきたりな言葉を並べ立てる。それでも、素直に俺の中にあるものを吐き出したつもりだった。
「っ・・・必要と、してくれる、の・・・?」
ふと聞こえた声に「ああ」と言葉を返すと、すぐさま「こんな私、をっ?」と涙声が再び返ってくる。
「もちろんだ。マスターがいなくなったら俺はどうしたらいい? 俺のマスターはあなたしかいないんだ」
だから一緒にいてくれないか、と続けるはずだった言葉は飲み込む。今その言葉を言うのは、何故だか卑怯な気がした。
マスターが俺の服を握りしめるのがわかる。それが意味することがわかって、安堵した。
「わ、私っ・・・生きていたいよぅ・・・っ」
初めてマスターの口から出たその言葉は、俺の中を熱くさせた。
この人は今までどれほど自分を傷つけてきたのだろう。今までどれだけ自分を犠牲にして人を守ってきたのだろう。
護りたい。この人をずっと・・・諸刃の剣である、マスターを。
その時、響いてきたノック音に引き戻された。
「――お取り込み中のところ悪いが、入って大丈夫かい?」
閉じるのを忘れていた扉ではなく、壁を軽くノックしながら男性が苦笑を零していた。
しまった、忘れていた。そんな考えのまま、マスターから離れて男性を部屋の中へ促す。マスターの目が男性を見た瞬間少し見開かれたところから、やはり知り合いなのだろうとわかった。少し顔が強張っているのは、彼男性だからだろうか。それでも、今から何が語られるかわかっているのだろう、マスターはちゃんと男性と向き合う。
これから男性から語られることは、マスターをどう変えるだろう。マスターはきっと、今回のことで変わる。どの方向へ変わるかは、全くわからないが。
ぴりぴりと張り詰めた空気が伝わってきて、もう既に話を聞いたはずの俺まで緊張してきた。マスターの変化は俺の変化に繋がるのだから、全くの無関係というわけではないのだが・・・ここまで緊張することもないだろうに。その緊張感を男性も肌で感じているはずだが、男性の口は思いのほか重くはなっていないようだった。
「律ちゃん、二人のことだが――」
もったいぶるように・・・ではあったが、何の気なしに発されたようにも思えた言葉が途切れ、男性が一度口を閉ざす。それは、この場の空気に耐えられなくなって一度肩の力を抜こうとしたかのようだった。
時計の秒針が一定のリズムを刻む。普段はそれほど気にならないその音が、妙に響いていた。
十分な空白の時間。
俺が息をつこうとした時、ようやく男性の口がおもむろに開かれる。
告げられた言葉にへたり込むマスターは、一体何を思ったのだろうか。どうか、マスターが前を向いていられますようにと・・・願わずにはいられなかった。
→ep.41 or 41,5
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