それからしばらくして町に不穏な空気が流れ始めた。
殺人事件が最近多いらしい。事件現場には必ず首輪があって、かなり猟奇的。
だからついたあだなが「魔女の首輪事件」だってさ。
被害者はいつも必ず女性。

こんなんじゃ、怖くて外を歩けないと酒場の女主人が言っていたっけ。
そして、今一番の問題は、本物の魔女がすぐ傍に居るということ。

まさか・・・とは思ったが、怪しい所は一切無かった。
夜もぐっすり寝てるし、昼だって外出することは多いが必ず僕と一緒に外出する。


いや・・・分からない。今目の前にいるこの女はもしかしたら幻覚かもしれないし。

「リンさん、買い物しに行くんですけど来ますか?」

「おう!行こう!途中でアップルパイ買ってくれるか!?」

「いいですよ。買いすぎないでくださいね、太りますから。」

「大丈夫だ。私は太らない体質だからな。」

「金銭的にも困るので4個だけですよ。」

「・・・わ、分かった。行こう。」

魔女は、ソファから飛び降り僕の元へ来た。ただでさえぼろいソファが軋む音がした。

やはり、市場はいつもより人が少ない。特に女性が。
ついでに服も買ってあげようと思い、魔女を引きずりながら彼女に会いそうなドレスを探していた。

「レン、服などいらん。あれ一着で十分じゃ。」

「毎日同じ服って汚いから僕は嫌です。だから買います。」

赤と白どちらにしようか、迷ったので彼女に聞いてみた。迷わなければ聞かなかったんだがな。

「赤は嫌だ。白にしてくれないか?」

ちなみに、今彼女が着ているドレスは赤だ。よく似合っているんだけどな。

「分かりました。買ってきますね。」

「あぁ、すまない。ありがとな。」

お金を、渡すと店主が憂鬱な溜息をついて、僕に話しかけてきた。

「最近、物騒だねぇ。」

「あぁ、あんな事件が起こるんですもんね。」

「しかも被害者は全員別嬪さん。いやぁ、女の嫉妬は怖いねぇ。」

「・・・どうして、女性だと分かるんですか?」

「いやぁ、実は俺の友人が野次馬根性丸出しで現場見に行ったんだけどさぁ、死体の顔がこれまたひどいんだよ。ぐしゃぐしゃだったみたいだよ!ってことで、多分女だろうって。それもかなりブスな。」

店主はそういうと、下品な笑い声を上げた。あぁ、なんて不快な笑い方。殺意が沸いてくる。今ここにナイフがあったら殺してやったのに。あぁ、なんで犯人はこいつみたいなクズじゃなくて美人さんばっかり殺すんだろう。中にはいいひともいたかもしれないのに。あれ?言ってることがなんかおかしい気がするな。

「お嬢ちゃんも、かなりの美人さんだねぇ。狙われるかもしれないから気をつけな!」

「やれるものならやってみろ。返り討ちにしてやるわ。」

「おっ!強気だねぇ!!うちの娘とは大違いだわ。」

「どういう意味じゃ。」

「いやいや褒めてるんだよ。」

「そうか。じゃあな。」

市場はやはり今日も騒がしい。商人たちの、客を呼び込む甲高い声や客の笑い声が耳から離れない。
あぁ早くここを出たい。そう思って、彼女の手を引こうとした。

場違いな、涼やかな声が、彼女の方から聞こえてきた。

「あら?レンじゃない。珍しいわね、ここに来るなんて。」

一度見たら目に焼きついて、離れることのない特徴的な桃色の髪が光に透ける。色素の薄い水色の瞳はキラキラと輝いていて見る者に明るい印象を与える。まぁ、ようするに明るい活発なお姉さんだ。お姉さんって言っても僕と同年代だけど。

「いや、少し買い物しにきただけ。」

「そう。レン、そちらのお嬢さんは・・・?」

「居候だよ。しばらく僕の家で預かることになったんだ。」

ルカはにっこりと笑った。相変わらず人当たりのいい人懐っこい笑顔だなぁ、感心するよ。

「そう!私ルカって言うの!レンの幼馴染よ。お名前は?」

「リンだ。よろしくな!」

「よろしく。なんか困ったことがあったら言ってね。レンのこと、こってり絞ってやるから!」

「あぁ、頼んだ!」

「リンさん、そこ頷いちゃいますか?それにルカ、おまえなぁ・・・。」

「まぁ、いいじゃない!幼馴染だし。」

「親しき仲にも礼儀ありって言葉、知ってるか?」

そう言うと、ルカは誤魔化すように笑い始めた。こんなことばっかり言うやつだが、憎めない。
彼女もルカのことを気に入ってるようだし、よかった。

彼女は魔女の癖に意外と社交的だ。ルカと話す彼女を見てそう思った。
「魔女」と聞いたら、まず思い浮かぶものは暗い部屋、怪しい薬。卑しい笑みを浮かべる醜い老婆、足元に黒猫。
なんとなく、コミュニケーション能力が無さそうというか暗いジメジメとしたところで一人薬の調合をしたりしてそうな感じがする。

「あはは、じゃあねレン、リン!」

逃げたな、コイツ。ルカの後姿を目に焼き付けながら、僕たちは帰路についた。
彼女は珍しく満足そうな顔をしていた。うれしい筈なのに、不思議。胸が疼く。



狙われるのは美人。女の嫉妬。あぁ、怖い。
あれ?そういえば、あの女主人最近見かけないな・・・。どうしたんだろ?



女の嫉妬。犯人は何に嫉妬したのか。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

私は魔女。人間ではなく魔女。3

ルカねえがやってきた!

昨日ディスカバリーチャンネルで「拷問と処刑の歴史」とかいうのを見てたんですけどヨーロッパ酷すぎるだろ・・・!、魔女裁判とかの処刑で、火あぶりってあるじゃないですか。あれってただ燃やすだけじゃないんですね。炎より高い位置につるし上げてじわじわと苦しめるってのもありましたなにあれこわい。

レボルビングドラムだけはいやだ。見てるだけでもおなかいたくなった。というか、なんか処刑器具とか拷問器具の名前が結構かっこいいんですがなにこれ。


瓶底眼鏡さん、ぼちぼちですが進めていきます。そんなに長くはならないと思います。シベリアちゃん、ごめんね今がんばって書いてます。

閲覧数:156

投稿日:2012/03/24 17:42:08

文字数:2,146文字

カテゴリ:小説

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  • 雪葉

    雪葉

    ご意見・ご感想

    おお、まさかのルカ様登場!
    ヨーロッパのそれは怖いんだよね・・・知ってるよ。かわいそうだよね。
    殺人事件か・・・大好物がきたな・・・(おい
    失礼しました

    2012/03/24 19:50:00

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