「くそっ、リンのやろう…ほんとに実行しやがったな…」
レンは歯噛みしていた。家来になだめられながらも、眉間にしわがよったままだ。
…だからあんな女にやらせちゃだめだったんだ。あいつは人の命を軽視しすぎるんだ…
レンは小包を棚の奥から取り出した。それを家来に手渡し、言葉を添えた。
「もし生類憐みの令を取り消すよう持ちかけて、だめだったらこいつを食わすんだ。中にはヒ素という外国からの伝来の毒が含まれている。これを食わせて、あいつの野望をとめてほしい」
家来は少しためらいつつも、「はっ」と返事をし、邪悪極まりない女将軍のもとへと向かっていった。





私の元にはもう手に負えないほどの人数の罪人が集まっていた。確かに腕を折ったり、目を抉ったりするのは気持ちいい。とてつもない快楽だ。だが、ここまでの人数に制裁を下すのは時間がかかる。
「もうっ、なんとかならないの!?あいつら馬鹿じゃない?もっと動物を大切にしないと許さないわよ?」
独り言を部屋でもらす。今は十分間の休憩だ。実際、殺めたり手にかけるのは一日10人で十分だ。どうにかならないのだろうか。心苦しいとか、人を殺したくないとかじゃないが、単に疲れる。ほかの事に時間を回せないというのがいやなのだ。
「リン様。レン様より使いが送られてきました。お通しいたしましょうか」
…レンか。そろそろ殺す手立てを考えないとな。まぁ何を差し向けてきたか楽しみでもある。
「よし、通せ。家来は一人なんだろう?私と二人きりで話がしたい」
家来は扉に手をかけ、「お入りください」と一言、レンからの使いを部屋に入れた。





「で?なんの話をしにきたの?一応いっておくけど、将軍も法令もやめる気はさらさらないから。それを踏まえたうえでお話をどうぞ」
先手は打っておく。どうせあの馬鹿のことだ、またやめろとかいうんだろう。とりあえず、レンが死ぬまでやめるつもりはない。
少々使いはうつむくと、はぁっとため息をつき、もう一度こちらを見た。そしてかしこまった姿勢に正すと、懐から小包を取り出した。それを私のほうへゆっくりと差し出した。
「いえ。今日はこちらを渡してほしいと使わされた次第でございます。中身は何か食べ物のようで、その場で一口食べていただき感想をよこしてほしいとのことです」
それを無言でもらい受け、丁寧な包みを両手で開く。どうやらこれは、砂糖の塊のようだ。こんな高級なものを、と一瞬使いの表情を伺うが、家来は気まずそうによそを向いた。
…わかりやすい。あいつはとことん残念な男だ。こんなの、毒か何かが仕込まれていることくらい用意に考えられる。確かに将軍に物を収めるのは当然のことだが、あいつのことだ。絶対に食うつもりはない。
「わざわざありがとう。こんな高級な砂糖をいただけるとは。これほどいいものは、やはり食べるよりもお供えとしてのほうが縁起がいいでしょうし。かわいそうな動物たちの墓に添えてほしいわ」
なっ、と言わんばかりに使いは身を乗り出してくる。ばればれだ。見え透いたうそはやめたほうが身のためだと、なぜ気づかないのだろうか。あきれてものも言えない。
使いがおどおどとしていると、私は彼の胸倉をつかみ、顔を目の前へと寄せる。
「おい、この毒入り砂糖をレンに突き返せ。あたかもこれが私からのものだと振舞うんだ。こいつを食わせらんなかったら、お前も生かしちゃおかないよ…お前らの身元はきちんと把握しているから逃げることはできないからな」
にらみを利かせてそうささやくと、ふっと手を離す。使いは息を荒くして、弱々しく頷いた。
私は座席へと戻り、レンからの使いに帰るよう促した。
「ほら、また制裁再開するから、さっさと行きな。それとも私の代わりに返り血でも浴びたいか?」
無言で使いは首を横に振ると、扉へ手をかけた。はずだった。
「後悔するようなことになっても、知りませんからね…」
部屋から出る瞬間、そう、使いはつぶやいたように聞こえた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
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生類憐みの令3(グロ注意)

とりあえず、私立入試が終わりました。。
滑り止めとはいえ、合格したときの達成感はひとしおでした^^;

閲覧数:205

投稿日:2011/01/19 22:38:51

文字数:1,645文字

カテゴリ:小説

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  • かたつむり

    かたつむり

    ご意見・ご感想

    ふぽおおおおおおおお!!!大分これなくてごめんね!!!><
    入試おつかれ!合格したんだね!^^やっぱりさすがだよ、ミミ~!おめでとう!

    物語・・・リンの洞察力に脱帽です((ぇ

    2011/01/25 19:02:58

    • 初音ミミック

      初音ミミック

      ありがと??(>ん<)/))
      とりあえずまた今年も生きていられますわww

      更新ペースあげるつもりだから、よろしくねん★

      2011/01/25 19:09:02

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