――雨が降っていた。その日の予報は曇りのち晴れだったはずの土曜日……。
楽しみにしてたその日を憂鬱な気持ちで迎えるとは思っていなかった。
朝だとは思えない暗い窓の外に目を向ければ、何かを洗い流すように雨は降り続ける。
(……晴れてほしかったなぁ…)
普段はどんな天気も好きなミクでも、今日だけは違った。
今日はそう、特別な日なのだ。
普通の日じゃない、特別な日。
あの人――君が生まれた日。
君が居なかったら世界はこんなにも美しく、そして儚くなることは無かったかもしれない。
裏表の私の気持ち。素直になれない私は振り続ける雨を恨んでしまいそうだった。
深く深く沈んだ気持ちを振り切ろうと、私は部屋をでた。
外はまだ、雨の音がしていた。
*
「……おはよう。」
パンケーキと甘いシロップの匂いがした。
キッチンへ降りていくと、メイコ姉さんがいた。
朝早くからいつも私たちのご飯を作ってくれたりする、優しい姉。
お酒を飲むとものすごく強くなって、私たちだけで抑えるのも大変だ。
怒ると怖いけど、私たちの事をしっかりと見てくれてる。
メイコ姉さんは起用にパンケーキを返しながら顔だけこちらに向けた。
「おはようミク。今日は雨になっちゃったねぇ。どうする? 行くの?」
私が沈んでる理由を見透かされてた。
姉さんは人の気持ちの揺れに聡い。いや、私が表に出やすいせいなのかもしれないけど…。
しかも既に今日のことは伝えてある。姉さんが気づくのも当然だ。
私は席に着きながら、ふうとため息をついた。
「うーん…向こうが大丈夫なら行きたいけど…。雨の日は体が重いんだって。」
「でしょうね。動けないなら無理しないほうがいいかもしれないけど、でも今日は特別なんでしょう?」
そう。今日は特別な日。
けれど、君は私と違って体に重い病気を抱えていた。
普段は普通に過ごしていれば何ら問題ない。
けれど、雨の日には気が滅入るのか、体が重たくなるそうだ。
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