「――チッ」
 露骨に嫌な顔をして舌打ちをしたリントに、レンは
「やめろよ、お前人がいい気分で話してんのに」
「リントはまた自分たちが一番距離のあるカップルに舞い戻ったから気分悪いんだろ」
「破滅してしまえばよかったのに…!」
「どんだけ悔しいんだよ! 応援してくれてたじゃん! 裏でそんなこと考えてたの? 怖ッ」
 昨日、レンはリンから告白された。
 くだらないジンクスに乗せた、どこかの恋愛漫画で見たような、代わり映えしない告白だった。
 ゆっくりと眼下に広がっていた夜景が近づいてきて、しばらくの間、二人は何も言わなかった。相手が何かをいうのを待っているように、ちらちらと目を向けはするものの、無言で、気まずい空気が漂っていた。
「――答えを、聞かせて欲しいの」
 勇気を振り絞ってリンがいった。
「答えなくたっていいだろ」
 リンのほうを見もしないで、レンは言った。深くため息をついて、レンは続けた。
「嫌いな奴を雨の中探しになんか行くはずないだろって言ってんの」
 顔をあげて、リンがレンを見た。窓の外に目をやっているはずなのに、視線は最早夜景を見てはいない。顔までは分からないが、リンは微笑んだ。
「耳、真っ赤じゃん――」
 そんな惚気話を聞かされて、素直に祝福してくれる友人でないことくらい、レンにもわかっていたのだが、誰かに話さなければ落ち着かないほど、レンの気持ちは舞い上がっていたのだった。
「今度はリントがデートすれば?」
「どこ行けばいいんだよ」
「そういえば、ホラ、お化け屋敷できるって、新しく」
「ああ、なんか言ってたな。女子が。でも、リントとレンカがそんな所行ったら、お化けもリントも怖くて、レンカ失神するって」
「失礼きわまりねぇな。…おい、グミヤ、頷くな」
 レンとグミヤが一発ずつ拳骨を喰らった所で、離れていた女子組が、三人に近づいてきた。
 三人が振り返ると、リンが一つ、提案をした。

「お泊り会ぃ?」
 三人の声がキレイにハモった。
「そ。お泊り会」
「タンマ。誰んちに?」
「六人で家一つは狭いでしょ。三つに分かれるよ」
 嫌な予感がして、グミヤが小さく手を上げた。リンがグミヤを指差して、先生がよくやるように、ハイ、グミヤくん、とやった。
「まさかとは思うけど、男女一対一とかじゃ…」
「その通りですが何か!」
「俺リンとがいい!」
「俺レンカと!」
 必死な男子二人を差し置いて、リンはさっと一枚の紙を取り出した。それは六人の名前が書かれた表らしく、グミヤ&レンカ、りんと&リン、レン&グミとある。
「この通りで」
「嫌だ!!」
 本当に必死なレンとリントを、それぞれリンとレンカが説得して、どうにか了承させると、リン企画、『ドキドキ☆男女ペアお泊り会~ヤキモチ焼かせてやろーじゃん~』が始動したのだった…。

 戸惑いながらレンは家にグミを上げた。
「わー、広いねー」
「普通だと思うけど」
 電気をつけて、レンはわずかにため息混じりにリビングに戻っていく。
 グミは一度家に戻って着替えなどを一式持ってきていて、流石に女の子らしく、身の回りに気を使うことが多いのか、荷物は思っていた以上に大きい。
「一晩お世話になりまーす」

 同じ頃、ちょうどリンがリントの家についていた。
 ドアを開け、リンを中へと招きいれたリントは、リンの荷物の少なさに少し驚いていた。いくら男勝りと言っても、流石に女の子であるから、もう少し荷物が多いものと思っていたが、リンの荷物は少し大きいショルダーバッグ一つである。
「お前、それで荷物全部か?」
「え? うん、だって、着替えでしょ、歯磨きセットでしょ、タオルでしょ、それだけだもん」
「明日の授業の道具は?」
「レンが持ってきてくれるって!」
「お前、実はアイツのこと執事程度にしか思ってねぇだろ…」

 レンカはインターフォンを押していいものか、かれこれ十五分以上も迷っていた。
 リントくんにメールして、聞いてみたらいいかな。でも、そんなことしたら、リンちゃんと楽しくやってるリントくんの邪魔をすることになる。そうは言っても、突然インターフォンを押して、グミヤ君を驚かせちゃ悪いよね…。
「…寒くないの?」
 いつの間にかドアが開いていて、グミヤがこちらを見ていた。
「あっ、えっ、えっと、ごめんなさい!」
「いや、謝らなくてもいいけど。…ホラ」
 ドアを開いて待っていると、レンカは少し戸惑いながら入ってきて、グミヤに軽く会釈をした。
「お邪魔します…」
 言いながら玄関に入り、靴をそろえて脱いで上がると、一度しゃがみこんで靴を恥のほうに寄せた。礼儀正しいというか、堅苦しいというか…。
 なんか調子狂うな…。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

Some First Loves 21

こんばんは、リオンです。
今日はいつもよりちょっと早いです! 私がんばった!(笑
決してリトリン、ミヤレカ、レングミフラグではありません。
ご了承ください。
まあリトリンとかも好きですけど…。リトリンレンとか好きですけど…。
ミヤレカはみないですね。見たことないです。新境地開拓でしょうか。
考察してみると、実はこれも可愛かったりするかもしれません。

閲覧数:513

投稿日:2011/12/30 22:45:19

文字数:1,952文字

カテゴリ:小説

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  • 美里

    美里

    ご意見・ご感想

    お泊り会!萌える…

    フラグが立つ前にあの人達は男女二人で何をやるつもりだったんでしょうか。やきもちはやくかもしれないけどやることない!
    召使レンと王女リン!まさかアレですか!?
    レンカちゃん…いい子!すごく律儀ですね。

    グミヤ君の活躍を楽しみにしてます。

    2011/12/31 12:07:23

    • リオン

      リオン

      遅くなってごめんなさい! お泊り会といえば沢山フラグがね、立ちますよね…。

      リン「昨日、レンに一本とられた感があってなんか腹立つ。手伝って」
      違います、悪ノじゃないです。でも悪ノは大好きです。
      レンカちゃんはちょっと気が弱すぎます。リントくんの悩みの種です。

      男の子達がどうするかとかが見所ですー^^

      2011/12/31 20:27:22

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