……もう駄目。認めよう。
自分の気持ちに嘘を付いて、見て見ぬ振りをするのは限界だ。
私は1人、そんなことを考える。

深く息を吸って、もう1度自分に言い聞かせる。
『認める?』

「…っ」

荒い息の中、私は確信する。
揺るぎない、私の想い。
『YES』

認めよう、想いを。
求めよう、彼を。
私は呟く。

「好きだよ、レン―――」
















学校。授業中。
いつものように、何気なく『そいつ』は話しかけてくる。

「なぁ、鏡音」

無表情に、淡々と。
――少し、低い声で。
私はその声に、深く息を吸ってから、こたえた。

「な、何?」

可愛らしくない言葉。自分でもそう思うけど、直せない悪い癖。
胸の内で、それを嘆く。

それに気付かない馬鹿な『そいつ』は、頬杖をついて、真っ直ぐにこちらを見つめる。

「分かってるだろ?―――ノート、取って」
「ふにゅぅ…ん、分かっ、た…」

ずるい。
胸の中で、毒づく。
さらり、と流れる金髪は綺麗で…整った顔に浮かぶ不敵な笑顔が映えていて、格好良すぎる。

『そいつ』にノートとペンを渡されて、私の胸は高鳴った。
『そいつ』のペンに、触れられる。…普通なら、どう考えても出来ないことなのに。

私にノートを渡したから、授業をサボれると思ったのか、『そいつ』は眠ってしまった。
―――ヤバい、寝顔も可愛い。

「えー、この式の場合、Xは―――」

数学教師の言葉も、耳に入らなくて、私はその横顔に見蕩れる。
ふ、と『そいつ』の顔が動いた。
どうも寝相なようだったけど、私は慌ててノートを取り始める。

ノートを取りながら、視界に何かペンに書かれていることに気付く。
名前なんて、知ってるのに。
何故かそれを見たくて、吸い寄せられるように見つめた。

「『LEN』…」

知ってたけど、口に出して言いたくて。
私はその名を口にする。
――――勿論、レンは気付いたりしなかったけれど。

「…好き」

きっかけは、些細なこと。
眠っているから、気付くはずがない。―――けど、気付いてほしい。
矛盾した感情を胸に、私はあの日を思い出す。
―――そう、レンに恋をしたのは、本当に些細なことから始まった。



師匠も走るという―――師走の月、12月。
毎月行われる席替えが、また行われた。
くじ引きで決める、この席替え。

特に特定の友達もいなかったから、どこの席でも良いや、と思って私はくじを引いた。
―――そしたら。

「……『14』……?」

引き当てたんだ。その席を。
私の恋の始まる瞬間が、来た。

黒板を見て、紙切れを手に席に向かう。
14番の席は廊下側で、扉が近く冬場は少し寒いところ。
私はその席に座ろうとする。…隣はどんな奴なんだろう。

出来れば静かな奴が良いな。男子って五月蝿いから。
独り言じみた想いを胸に、私はまた、黒板を見た。
クラスメイト達は、一喜一憂と忙しそうに黒板と紙切れを覗いている。

そんな、少し滑稽な光景を見ていた時だった。
がたん、と隣の席の椅子が軋む音がして、気配が沸く。
音に驚いて隣を見ると、私の隣の席に座っていた。

金髪碧眼の、整った顔立ちの男子生徒が。
誰だっけ、こいつ。
私は頭の中で、クラスメイトの顔を思い浮かべる。

―――あ、あいつだ。
1人のクラスメイトの名前が浮上した時だった。
その名前を口にしようとしたと同時に、隣の席に座った男子が口を開く。

「へー、隣…鏡音か。よろしくな」
「――-っ、うん。よろ、しく」

屈託無く笑って、男子生徒――レンが私を見る。
私も一応、ぎこちなくだけど挨拶を交じわせた。
それから私は、何を言えば良いか分からなくて、いつも持ち歩いている本を読み始める。

けれど、何故かレンは私をずっと見つめてて―――。
視線が痛くなって、私はレンに尋ねた。

「な、何?何か顔に付いてる?」

男子と話したことなんて、殆ど無いから、かなりたどたどしく言う。
するとレンは不敵な笑顔を浮かべた。

「ん、あ――いや。読書の邪魔をするつもりは無かったんだけど…ちょっと鏡音に頼みたいことが」
「…私に頼みごと?」

私はレンの言葉を復唱する。
レンは頷いて言おうとした。

「実は―――」

―――レンの呟きと同時に、始業を告げる鐘の音が響いた。
レンの声はそれにかき消され、私は慌てて聞き返す。

「え?何て…?」
「起立!礼!授業を始めるぞー」

担当教師が声を張った。その声が煩わしくて、皆が着席してノートを開くと同時に、私は再度尋ねる。

「ごめん…今、何て?」
「あ、聞こえてなかった?…えぇと、俺のノートを取ってほしいんだけど…」
「へ?」

私はきょとん、とする。
ノートを取る?
意味が分からずにいる私に、レンは苦笑した。

「鏡音。…これで、俺の言った意味、分かってくれるか…?」
「意味って…?――-!」

レンは右手を私に見せる。
レンの右手…正確には、右腕には白い包帯。

「怪我したの?」
「ん、まぁ…前、ちょっとミスって」
「ふぅん…」

同情するべきか。
私はあまり見たことのない包帯を凝視した。

…確か、レンってサッカー部だ。
怪我をしたのは腕と言い、サッカーは当分出来ないんだろうな。
私は少し気の毒に思う。

「骨折して。全治4週間なんだ。…つまり、次の席替えまでこんな感じ」
「…それは気の毒な」
「いや、冷ややかな目はやめろよ。…っていうことだからさ、ノート取って欲しいんだ」

男子と馴れ合うことは苦手だ。
けれど、骨折をしたクラスメイトの手助けをするのは…それとこれとは別のこと。
私はレンが差し出したノートを掠め取り、教師が黒板に書き連ねたことを写す。

「…鏡音。写してくれるのか?」
「…っ、見て分からない?怪我して大変そうだから。て、手伝ってあげる」
「―――サンキュー」

何故だろう。
レンがそう微笑んで私に告げる言葉が、耳にこそばゆかった。
私は聞こえない振りして、ペンを走らせる。
恋の音が聞こえたのは、それから間も無くのことだった。



今日見たような寝顔だったり。


起きている時に見せる、柔らかい笑顔だったり。


レンが楽しそうにしゃべっている時だったり。



きっかけは様々で、色々なレンを見つける度に、私の想いは募っていった。

そしてある日、気付いたんだ。
この気持ちは、恋だと。

そう、恋だと。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

淡い、恋心。≪上≫

純情リンの淡いうわ言です。
淡い恋心というタイトルも、勿論意味がありまして。
というより、これはその…←

淡い、儚いというイメージで、書いてみました。

もっと見る

閲覧数:790

投稿日:2010/12/16 18:42:25

文字数:2,664文字

カテゴリ:小説

  • コメント4

  • 関連する動画0

  • マルセーユ←元syogyou

    マルセーユ←元syogyou

    使わせてもらいました

    こんばんわー。この物語を読んでピアプロ内でものせましたが、http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=17437080
    にものせさせていただきましたので、ご報告です。

    2011/03/18 23:06:43

    • 鏡美

      鏡美

      ありがとうございました

      2011/03/19 11:19:44

  • 虹の龍

    虹の龍

    ご意見・ご感想

    は~青春だねえ(←他人事
    というわけで2828させていただきましたw

    ちょっとツンの入ったリン可愛いよリン

    続き待ってるぜ~!

    2010/12/20 16:58:36

    • 鏡美

      鏡美

      うん、青春だよ☆
      だって鏡音2人は14歳ですからww
      まだまだこれからの青林檎さんですww

      続きかぁー、うん。けど、すごくあっさりとしたテイストで書いてるからなー、うん。
      多分上手く書けないと思う(オイ
      ――まぁ、トライしてみます><

      2010/12/20 17:17:49

  • ドロシー

    ドロシー

    ご意見・ご感想

    可愛い…!
    いやぁ、やっぱりこの2人が一番だね☆

    ってレン君大丈夫?サッカー部かぁ…カッコイイね!空海みたいd(黙れks
    その席、良かったね!リンちゃん優しいよぉ!!可愛いwww

    2010/12/16 19:08:53

    • 鏡美

      鏡美

      この2人は神コンビだよね!←何それw
      はっ、確かに空海みたいd(ちょ、おm

      リンはちょっとツンデレを意識してみたよ?^^
      けど、男子に話しかけられたら、しどろもどろになると思うなぁ…うん。

      2010/12/17 17:19:58

  • ねくたー

    ねくたー

    ご意見・ご感想



    レン君骨折ですt(ry
    リン、優しい・・・!(*^。^*)

    このカップリングは最高だと思う!(黙

    席替えの運、リン凄い良いな・・・!
    その席変わって!(逝け、今すぐ逝け

    2010/12/16 18:54:14

    • 鏡美

      鏡美

      うん、レン君骨折です。
      いや、色々と『リアル』と混ぜ合わせてみたんだー。

      このカップリングは良いよね、のほほん1番☆
      確かに、リンは強運だなぁ…。
      ちなみに、リンが14歳だから14番の席にさせてみたり。

      2010/12/16 18:58:14

オススメ作品

クリップボードにコピーしました