「にゃははー」
「・・・」
楽しそうに笑うマスターと無言の僕は、台所にいた。
「見事採用された、煮物・蒸し物・揚げ物の調理方法で調理する食材はこちら!」
別にカメラがあるわけじゃないんだから、そんなに1人で盛り上がらなくてもいいのに。どうせ、
「食べるのは、僕なんですよね?」
半ばあきらめて問う僕に、
「そうだよ。全部の味見担当だよー」
今更何言ってるの、とでも言いたそうな棒読み口調でこくこく頷くマスター。僕は予想通りの結果に、心の中で思いっきりため息をつく。でも、
「大丈夫だよ、ちゃんとまともな調理方法なんだからさ」
の、後の、
「それに、私が食べさせてあげるからねー」
という、マスターにとってもはや確定事項となっている何気ない言葉で、食べる気やら元気やらが出てきた。
「マスター・・・いいんですか??」
それでもやっぱり不安になって、つい聞いてしまう。
「いいよ、カイトだもん」
そんな僕の言葉にも、にっこり笑ってそう言ってくれる。心がとろりとろりと溶けてくる。
「それで、今日使用する食材は、ネギとみかんという異色のコンビだよー!」
「なんだかリンちゃんに似てますね」
「ん?」
「いえ、口調が似てるなって・・・」
「そうだね、だってリンちゃんのことも好きだもん」
僕の言葉に、あっさり頷くマスター。
「さて、最初は煮物ということで、こちら!」
「あ、もう用意されてるんですか」
「・・・ネギとみかん、どっちがいい?」
ぼそっと低い声で聞かれる。
「え・・・ネギですかね、やっぱり」
みかんは食べたくないとは言えないままに、僕は言う。
「じゃあ、こっちは・・・あ、あった!」
「どこにしまってあるんですか」
食器棚からネギの煮物が入ったお皿を取り出すマスターに、思わず呟く僕。
「いいじゃん。それにこれは食器棚じゃないよ、置き棚だよ!」
「置き棚・・・?」
「物を置いておくための棚。最近は、ガラス戸もついてて便利だねー」
「・・・」
それ、意外と身近な棚だと思います。
「はい、あーんしてよー」
ネギをはしでつかみ、僕の口に近づけてくるマスター。・・・ちょっと表情がツンデレのツンで、なんというか・・・。
「・・・・・・意外と、照れますねw」
「なら自分で食べる?」
デレる僕に、にべもなくマスターは言う。
「いえ、ちゃんと食べますよ」
にっこりとして口を開けるとマスターは、はしを引っ込めて何やらネギを多くつかもうとしている・・・。
「・・・やっと全部つかめた―。はい、カイト、あーんしてよー」
「・・・・・・」
さっき言った発言を撤回したくなってきた。こんなネギの束・・・ではなく、もはや固まりという表現がしっくりくるネギの煮物は、はっきり言って無理である。・・・ちなみに、ネギの煮物は柔らかく煮込んだもので、僕でも何ら問題なくおいしく食べられる。でも・・・これは一度に食べれる量の限界なんじゃないだろうか?
「・・・マスター、僕には無理ですよ。こんな・・・一度に多くは食べれません」
「あーんして、あーん」
マスターの少し大人っぽい声と可愛い笑顔に、つい口を開けてしまう。もうどうとでもなれと覚悟を決めていたら、口の中に入ってきた煮物ネギの量が明らかに少なかった。
「マスター・・・?」
「私だって、そんなに意地悪じゃないもん」
そう言って、そっぽを向くマスター。・・・僕のマスターは、どこがどうというわけもなく全てが可愛いです。
「で、どう?」
「ネギの煮物は別に良いですよ。普通においしいです」
「じゃあ、お次は、みかーん!」
普通の棚・・・マスターいわく置き棚から、みかんの煮物が入っているであろうお皿を持ってくる。
「・・・色は、なんだかおいしそうですね」
「さすがに塩とかしょう油とかはだめかなと思って、砂糖で煮込んでみた!」
「マスター・・・」
夜だけじゃ足りないから今から全てを放り出して襲ってもいいですか?とは言いたくても言えなかった。
「カイト、あーん」
今度は少し幼いような声。僕は言われるがままにする。
「どう? カイト」
「ん?」
煮物みかんを食べながら、つい首を傾げる僕。
「・・・おいしくない?」
心なしか、不安そうなマスター。
「おいしくないってなわけでもないし・・・これ、なんか微妙ですね」
「つまり、可もなく不可もなくっていうことか・・・。ふーむ、改良すればおいしく食べれる・・・か」
低い声でぶつぶつ言うマスター。僕のマスターは、たくさんキャラが豊富で使い分けるのが上手です。
「じゃあ、次は、蒸し物だけど・・・」
「ああ・・・」
次を思うと、気が10kgぐらい重くなったような気がする。
「茶わん蒸しに入れるって確か言っていたような気がするけど、ムースに変えようかなー」
「えっ!?www」
それはそれは何という嬉しい提案。僕は胸の高まりを抑えきれなかった。
「だから、みかんは平気でしょ? ただ、・・・」
「いいですよ、ネギムース、食べますから」
「お? カイト、かっこいいなー」
少し意外そうな表情をしてから、にっこりとして言われる。・・・あれ? もしかして、かっこいいって言われたのって、今のが初めて? そうだよな・・・、好きとか大好きとか襲ってとか色々言われたのに、一番言われてない言葉がかっこいいだなんて・・・どうしようw
「・・・僕って、かっこいいんですか?」
聞き間違えてないことを願いつつ、マスターに聞いてみる。
「かっこいいよ」
即答で返事が戻ってきた。どうしても顔がゆるゆるになる。
「ネギとみかん、どっちがいーい? かっこいいカイト」
「じゃあ、みかんで」
僕がそう言うと、マスターは置き棚からみかんムースを持ってきた。それをマスターから食べさせてもらう僕。
「普通においしいですw」
「じゃあ、アイスからみかんムースに変える?」
「やっぱりアイスが好きですよ、僕は」
にっこりマスターに言われた言葉を、にっこりと笑って僕は返した。
「それに、マスターが食べさせてくれるからおいしいっていうのもあるんですよ」
「じゃあ次は、ネギムース行ってみよう!」
そう言うと、マスターは再び置き棚の方へ。・・・僕のマスターは、意外と妙なところで照れることが多いみたいです。
「はいあーん」
「・・・」
僕は、マスターが持っているスプーンから謎の(?)ネギムースを食べる。
「・・・・・・」
「ん? どうしたのカイト??」
マスターが可愛らしく顔をのぞきこんでくるその可愛さに萌える余裕もなく、僕は水道の水をコップに入れて一気に飲み干す。
「あはははははははははっ!!」
僕の不幸を思いっきり笑うマスター。・・・まぁ、でも、こんなにマスターが笑ってくれるんなら、それも悪くはないと思った。
「おいしくなかったんだね?」
ひとしきり笑った後マスターに聞かれて、僕はこっくこっくと頷いた。
「あははは。今のは面白かったなー♪」
「マスター、次、何でしたっけ?」
「次は、揚げ物で最後だよw」
「さ・・・最後・・・っ!!」
最後。なんていい響きのする言葉なんだろう。僕はなんだか衝撃を受けた。
「ネギとみかん、どっちがいーい?」
「ネギで」
とりあえず安全そうな方を選ぶ僕。
「ネギの天ぷらみたいな?」
そう言って、置き棚からお皿を取り出すマスター。どれどれと僕もお皿をのぞきこんでみると、なるほどマスターの言う通りネギの天ぷらみたいだった。早速、マスターから食べさせてもらうと、
「・・・なんとなくおいしいような気がします」
「つまりおいしいってことだね、良かったよー」
僕の感想を簡単に要約して、続いてみかんを揚げた物体を食べさせようとする。
「これで最後だからねー」
「うう・・・」
僕は意を決して、みかん天ぷら(仮)をマスターから食べさせてもらう。
「・・・」
もぐもぐと食べる。
「おいしい?」
「そうですね。衣の中からみかんって、案外悪くないものです」
「へー!」
僕の言葉に、マスターは意外そうな、でもとっても嬉しそうな表情で頷く。
「マスター、」
僕はそんなマスターの表情を見ながら、言った。
「これからアイス食べに行きませんか?」
「ん? デパートの中にあるアイス専門店に行きたいの??」
「そうです。・・・だめですか?」
少し甘えるように言ってみると、
「え、別に・・・。じゃあ、行こ行こ」
なんとなくほっぺたを赤に染めて、マスターは玄関に向けて歩き出した。そんなマスターを可愛く感じながら、マスターの横に並んだのだった。


マスターと食べるアイスは、きっと格別なんだろうなって思いながら。


ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

一度は試してみたいこと。 【マスターとカイト】

こんばんは、もごもご犬ですこんにちは!
ま、間に合った・・・!
にしては、やけに時間かかったなー。あれれー??
まぁ、いっか。

ちゃんとムースにしてみたよ!><
みかんの方は良さそうだけど、ネギの方は・・・!

なんだか眠たいです。作品投稿もしなきゃだけど、その前に大作戦を終わらせなきゃ。
あともうちょっと。終了報告まで、あと少しです。

次回も、お楽しみに!^^

閲覧数:188

投稿日:2011/04/30 19:41:52

文字数:3,540文字

カテゴリ:小説

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