シアンの髪を持つ美女―――――イズミ草さん。通称イズミさん。つかさ君とは先輩後輩の関係だ。


彼女はしるるさんによって、『かなりあ四天王』なんて呼ばれたことがあった。最もしるるさんは大見得切って呼んだことはなく、表で呼んでいるのは俺ぐらいだが。


イズミさんがかなりあ四天王と呼ばれていた理由は、しるるさんが寄せる絶対的信頼と、確かな実力だ。


特に小説では恋愛ジャンルで比類なき甘さを引きずり出し、イラストも鉛筆画において素晴らしいものを描いている。


もちろん上には上がいるんだろうけど、少なくともかなりあ荘の中ではトップクラスじゃないかな(まぁバトルでは負けるつもりはないけどとは俺の言葉)。



……とまぁここまでまるで完璧のように描いてきているが、人間無くて七癖という。イズミさんだって一癖ないわけじゃない。


その一癖というのが――――――――――





「そういえばイズミさん、もう『裏方アンチノミー』は読みましたk」


「そう!!!!!! もうずっと誰かに叫びたくて仕方なかったんですよおおおおおおおおお!!!!! 忙しかったのと自分から言うのは憚られて言えなかったんだけどようやく叫べるううううううう!!!!! もうカイムラルかっこよすぎですよカイムラルカイムラルカイムラル!!!!! ルィとラムに殺気を放つシーンはもうブルっっときましたねぇ……!! あと妹ちゃんの本当の名前を呼ぶシーンとか!! うるうるぼろぼろですよあれはあああ!!!!! ああああでもやっぱり一番はミルカちゃんとのデート!!!!! あれはもうミルカちゃんはかわいいしカイムラルはもう言葉にできないぐらいカイムラルでフゥゥゥオオオオオ―――ンンッッ!!!!!」


そこまで言ってハッと気づいたようだ―――――ゆるりんてぃあの『(°Д°;)』とした顔と、しるるさん・つかさ君・そして俺の妙に納得したような表情に。オカワリノナイヨウデナニヨリデス。


「あ、あははは……すみません……」

「い、いや、元気そうで何よりですよ、イズミさん……」


この小説「囚人と紙飛行機」シリーズに出てくるキャラ『カイムラル・フラグ』への灼熱のLOVEである。

彼女の熱狂的な愛情はゆるりーさんのどっぐちゃんLOVEや雪りんごさんのカイトLOVEさえも霞むぐらいの暴走愛。

勿論それが健在でこそイズミさんというのが俺の認識ではあるが……『四天王』というよりカイムラルに倣って『四大狂種』とか言った方がしっくりくるんじゃないかなという感じである。



それはともかく。



「それにしても、普段来ないのに急にどうしたんです?」

「ああ、ちょっと暇ができたから覗きに来たのと……」


ぐっ、と体を乗り出して、俺の目を見据え―――――



『ターンドッグさん……剣道やってたって聞きました。一つ、お手合わせ願えます?』



……!!


「……てことは、イズミさんもやってたってことですか?」

「はい! と言っても、初段ですけどね」

「えっ!? 先輩初段取ってたんですか!? やってたのは知ってたけど……すっごいすっごい!!!」

「そ、そんな強くないよつかさん……むしろなんで取れたってぐらいだよぉ……」


苦笑いしながら答えているが、段持ちには変わらない。こいつは参ったね……。


イズミさんの言うとおり、俺も確かに剣道をやっていた。

……とはいえ、イズミさんが初段なのに対し、俺は―――――一級。即ち初段の一つ下だ。

たかだか一つ下でも、初段と一級の差は大きい。これが一級と2級とかならまだいい。だが初段は訳が違う。初段を取れる者の最低条件とは《基礎ができている》ということ。

その初段をとる審査に、俺は過去2回落ちている。即ち、基礎が完璧ではないということだ。

こんな俺と、初段保持者のイズミさんがやれば勝敗はほぼ決まったようなもの……。



……だが。そんな理由で売られたケンカ突っぱねたら、バトル専門の書き手としては書いてるキャラに申し訳が立たないね。



「いいでしょう、受けて立ちますよ!」

「受けてくれますか!!」

「もちろん手は抜きませんよ? 位はイズミさんのほうが上なんですからね、手加減してフルボッコされたらダサいし」

「わかってますよー! こっちこそ容赦しませんからねー!」


話はついた。さてどこでやろうか。


「ヴォカロ町を借りてやることはできないの?」

「常人パワーアップ補正はイズミさんにも適用されるから、ヴォカロ町でやったら面で山を砕き胴で町を薙ぎ払う破壊戦闘になりますよ」

『うわぁ……』


しるるさんとイズミさんがドン引きである。仕方ないじゃん、あの世界そんぐらいしないと死ぬんだよ。つーかあんたらよく似てんな。

文句を言っても始まらない。いい場所がないか思案を巡らせていると、どっぐちゃんが手を挙げた。


「だったら、ネルに超特急でかなりあ荘の地下にでも亜空間で道場作ってもらったらいいじゃない?」

「そっか! その手があったな!!」


ネルは独自の空間操作ネットワークシステム『ネルネル・ネルネ・ネットワーク』で時空をいじくることができる。新しい空間を作り出すくらいならお茶の子さいさいだ。


「よし! じゃあネルを呼んで、空間一つ作ってもらいましょう! あいつの腕なら道場ぐらい1時間あればできる、1時間後に勝負ってことで!」

「りょ―かい!!」



ということで。


急遽ネルが呼び出され、1時間後にはかなりあ荘の地下に巨大な道場が出来上がっていた。





「ねーねーつかさくぅん。イズミさんって強いの?」

「たぶん強いと思いますよ、多分」

「へー! じゃあイズミさん応援しよーっと」

「え。そ、そんな理由でいいんですか……?」

「だいじょぶだいじょぶ、ターンドッグさんならどっぐちゃんとかネルちゃんとかが応援してくれるだろーし」

「う、う~~~~~ん……」

「でも何だかんだでイズミさん勝ちそうですよねー」

「Turndogさん何だか弱そうだし……」


更衣室の外でしるるさんたちがやいのやいのと騒いでいる。ははは丸聞こえだよこんにゃろ。

だが実質、素人目にもわかるぐらいの実力差はあるだろう。

基礎は全てを支える土台だ。剣道とて例外ではない。

恐らくそれがしっかりと身についているであろうイズミさんに、打ち勝てるか―――――……。


いや、考えるのはよそう。そうだ、いつもの通りで行こう。


自分よりも強い相手と戦う時は、俺は必ず2つのことを心掛けて戦う。



―――――相手を殺す覚悟と、生き残る意志―――――



研ぎ澄ました“殺意”。固めた“生への執着”。それが実力以上のものを生み出すことが多々ある。

弱くてもいい。弱いなら―――――『“殺”る気』でカバーするんだ。


……さて。行くとしようか―――――。





一礼して道場に入ってみると、既にイズミさんは待機していた。白の道着と袴に、黒の胴・垂を身に着けている。

そしてギャラリーが続々と入ってきた。しるるさんにつかさ君に、ゆるりーさん、雪りんごさん、茶猫さんの受験生トリオ。

その後ろから、ネルにルカさんにリンレン……。


……ん?


「おい待てぃ」

「ん?」

「ネルはまだわかるが、なぜルカさんとリンレンがやってきた!?」


びしりと指さすと、ルカさんが頬を膨らませる。


「なーにー!? 私がいちゃ悪いってわけ!?」

「い、いやそういうわけじゃなくてね……」

「何だよTurndogー!! かなりあ荘の皆が全員イズミ草さんの応援に回るっていうから可哀想に思って応援に来たのに、なんだよその言い草はー! なぁリン?」

「そうよー!! それともそんなにぼっちがいいの? やーいぼっちぼっt」

「応援よろしくお願いします<m(__)m>」


あれ? 何この疎外感……まいっか。


「Turndog!! イズミ草さん!! ほら、竹刀!!」


ネルから竹刀を渡される。今どきのカーボン製ではなく、昔ながらの普通の竹の竹刀だ。やっぱ竹刀ってこっちの方がいいよねー。カーボンのほうが危なくないのかもしんないけど、こっちの方がやる気沸いてくるよね。


「……さ、ターンドッグさん!! 始めましょうか!!」

「……おっし!!」


共に開始線に立った。片方は白く穢れの無い道着に身を包み、片方は黒く傷と紅い染みの付いた道着を身にまとう。ギャラリー側から見たら、そんな光景なんだろう。


「……準備は整ったみたいね」


静かに声を上げたのは、紅白の旗を持ったどっぐちゃん。仮にも俺の精神体であるどっぐちゃんなら、一応審判のやり方はわかっているはずだ。


「……お互いに、礼ッ!!!」


どっぐちゃんの号令と同時に、礼をする。

そして腰に竹刀を当てる。「帯刀」。

そこから三歩前に歩み出て、抜刀。

膝を立てて腰を落とす。「蹲踞」。


さぁ、始めよう。





『始めっ!!!!』





『面!!!!』『胴ォ!!!!』










開始1秒。初手の激突で俺は気づいてしまった。





あ、これイカン。『殺る気』全開で行かないと1分持たずに負けるわ、と。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

dogとどっぐとヴォカロ町! Part8-2~TurndogVSイズミ草!!①激闘の始まり~

イズミさん本格的に立ち回り。(おかげでつかさ君も立ち回りw)
こんにちはTurndogです。

イズミさんにはカイムラルLOVEが欠かせません。
個人的にカイムラルLoveでイズミさんの6~8割は占めると思ってます←
因みに私はミルカさんLOVE!! 猟奇的なルカさん大好き。
『アンチノミー』でミルカさんが惚れた『種族』は実は俺なんだぜと言いたくなr(ピチューン

そして次回に続く剣道。
イズミさんが初段だと聞いたときにもうこれは入れるしかないでしょうと!ww
因みに武道では段が二つ違えば生物が違うと言いますが、個人的には、段二つ分の違い=一級と初段の違いじゃないかなぁとか思ってます、比率的に。

次回はルカさん視点だぜ!

あ、タグが入りきらなかったんで受験生トリオまとめちゃった。めんごめんご。

閲覧数:207

投稿日:2013/09/26 22:22:39

文字数:3,856文字

カテゴリ:小説

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  • イズミ草

    イズミ草

    ご意見・ご感想

    うわああああ!!!!!!!!!!!
    ありがとうございます!!!!!
    もうカイムラルへの愛は文句なしですよ!!
    もう普段の私そのものです!!!!!!

    しかもすごい人みたいに書いてもらっちゃってwww
    イズミ草、出世しおってからに……ww

    でも私そんな強くないですよ!?

    2013/09/23 19:40:49

    • Turndog~ターンドッグ~

      Turndog~ターンドッグ~

      もう普段の会話からしてこんな感じですもんねぇwwww
      (少々やりすぎた感とそれでいて表現の足りなさが感じられてイズミさんに怒られないかはらはらしてたなんて言えない)

      じゅーぶん凄い人じゃないですかやだーw
      少なくとも『天然×不良』の時のイアちゃんは俺はかけない←

      いやいや、一級と初段が同程度じゃかっこよくないじゃないw
      イズミさんには強くあってもらわないと困るのです。
      私が失礼にも『殺る気』出さなきゃならないぐらいじゃないと困るのです(物語的な意味で←)

      2013/09/23 23:30:58

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