「それじゃ二人とも、気をつけてね」
 「はい、分かりました」
 ルカと別れる二人。結局雅彦はミクの練習を最後まで見て、一緒に食事にいくことにしたのだ。
 「こうやって二人きりで外を歩くのって久しぶりですね」
 「そうだね、出迎えにいった空港だと、騒ぎの一歩手前だったからね」
 「…あれは雅彦さんが沢山人のいる場所で私を抱きしめるから悪いんです。あれがなければゆっくり帰れたのに」
 「確かにそうなんだけどさ、ミクも嫌じゃなかったでしょ?」
 「…はい。…次からは、あまり目立たないようにして欲しいです」
 恥ずかしそうに言うミク。
 「…うん、そこは次は自重するよ」
 同じく恥ずかしそうにいう雅彦。さすがに勢いに乗りすぎたと反省しているようだ。
 「僕さ、ミクと喧嘩して、色々と悩んだあげく、家を出て行こうと思った時、僕なんかじゃ世界的スターのミクと釣り合わないし、ましてやそんなミクを傷つけた僕が…、って思いが強かったんだ」
 「それは私も一緒です。私が初めて人間の体からアンドロイドの体を持った、世界にパラダイムシフトを起こした雅彦さんの恋人と名乗るなんて、雅彦さんに釣り合わずに、おこがましいって思ってました」
 「でも、色々な人と話していくうちに、その考えがだんだん変わっていって、そうやって家を出て行くことが逃げているって思うようになって、またミクと向き合えるようになったんだ」
 「私は、ボーカロイドのみんなと話したり、守山さんと話してから、そんな私を、雅彦さんが選んでくれたんだから、その意味を考えなきゃって考えるようになって、雅彦さんとのいかに向き合うかを考えてたの」
 「…僕たちって、色んな人に助けられてるね」
 「そうですね」
 「僕たちは、そんな色んな人々のことを忘れたらいけないね」
 「はい」
 「…手、つなごうか」
 「はい」
 そう言って手をつなぐ二人。
 (僕は、このミクの手の温もりをいつまでも感じていられるように、一生懸命頑張らなきゃな)
 そう決心する雅彦。
 「今日のお店ってどんな感じなんですか?」
 「ええっとね。そんなに大きくも、有名なお店でもないけど、ミクと一緒にいきたいなって、思った店だよ」
 「どんなお店なんですか?」
 「それはいってからのお楽しみだよ」
 「ふふ、楽しみです」
 雅彦と長年つき合っているミクだったが、雅彦が時々連れて行ってくれる店の判断基準は良く分かっていなかった。味は平均以上なのだが、それ以外であまり共通点が見当たらない店ばかりだった。雅彦なりのこだわりが何かあるはずなのだが、良く分からない。そんな店に連れて行ってもらって、なぜ雅彦がこの店を選んだのかあれこれ推測するのもミクの楽しみである。
 「…雅彦さん」
 「何だい?」
 「…私、ずっと雅彦さんと一緒にいたいです」
 「僕もだよ」
 そう言って笑い合う二人。ミクの笑顔を見て、この笑顔をいつまでも守っていかなければならないと思う雅彦だった。

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初音ミクとパラダイムシフト3 エピローグ8節(最終節)

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投稿日:2017/03/06 23:17:40

文字数:1,244文字

カテゴリ:小説

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