ページを捲る その度に
 幸せな気分になったんだ
 それの名前を 識(し)る前に
 歪んだ大人になったんだ


 いつからあったのかもわからない
 そんな本を僕は愛していたんだ


 グレースケールで生きる僕たちは
 君の世界からはどう見えるだろう
 暮れる街で開くこの本は
 局所的天気雨で色が滲む
 向こう側の君はあの日のまま


 小さい頃 破れるくらい 読み込んだ
 その中に 好きな人がいたんだ
 色鮮やかに 微笑みかける
 その顔が見たくて またページを捲った


 グレースケールで生きる僕たちは
 君の世界からはどう見えるだろう
 晴れる街で開くこの本は
 記録的暴風へとさらわれてく
 向こう側の君へ「さようなら」を
 こちら側の君へ「ただいま」と

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

絵本

ページの向こうの君はだいぶ色あせてしまってはいるけど、それでもまだまだ鮮やかだ。
きっとこっち側よりも。

閲覧数:80

投稿日:2017/06/05 21:05:16

文字数:334文字

カテゴリ:小説

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