「何が起きたのですか……助かったのですか? 私達は」
腕を押さえ、痛みをこらえるルカがメイコに向かって話しかけた。
「とりあえずはね……でも、ハク……」
メイコは、カナデホワイトに変身したハクを半ば軽蔑のまなざしで眺めている。
「事情は後で説明するわ。とりあえず、あのマッド・マッハーを何とかするのが先。そうでしょ」
「そのとおりだ。今は、ハクを追及している場合じゃない」
カイトは引きちぎれたマフラーを外し、レンの出血している腕に巻いてあげた。
「カイト……ごめん」
レンはリンの手を取って立たせると、ハクのもとへと歩いていった。
「……メイコ、貴方にすべてを託すわ」
「…………わかったわ」
ハクは何も言わずにペンを走らせると、メイコに銃口を向ける。
「ちょっと! 何を!!」
慌ててハクを止めようとするルカをカイトが制す。
「ルカは、知らないんだろうな。あれは、カナデガン。ハクとあの人が作り上げた武器の一つだ」
「あの人って……まさか!?」
「君も名前を知っていると思う。何しろ、彼も科学者だったからね。だけど……」
そこまで言って、カイトは唇をかんだ。
「仕方がないと言えばそれまでだ。だけど、こんな終わり方しかできなかった事が今でも俺達の心を迷わせているんだ」
ルカはカイトの姿を正面からとらえた。
「…………ルカ、俺達3人は、いろいろ背負いこんでしまっている。それを君達に見せたくなくて、虚勢を張っていただけかもしれない」
カイトは今まで決して他人に見せようとはしなかった、古びた写真を取り出した。
「メイコ、フォルテシモで行くわ。あの狂音獣には、デクレシェントを浴びせてある。そろそろ、効果が表れる頃よ。フォルテシモの効果は長くて5分あるかないか」
「……十分よ。さ、早く」
ハクは何のためらいもなく、引き金を引いた。
弾丸がメイコの体に直撃し、彼女の体に力がみなぎっていく。
「これで戦えるわ。ハク、後で、ゆっくり話をしましょう」
「そうね……貴方達だけを戦わせてきた事は……」
「話なら、狂音獣を始末してからだ。時間がないだろ」
2人を放っておくと長話をしそうな雰囲気がしたので、カイトが間に入った。
「メイコ、頼むぜ」
カイトの呼び掛けに頷き、左の拳を突き出した。そして、腕をひきつけるとカイト達のいる方向にメロチェンジャーを向けた。
「行くわ。コード・チェンジ!!」
「まだ見つからないのか!! 探せ!」
ヘルバッハの焦る姿を、ビルの屋上から双眼鏡で眺めていたメイコは、続いてマッド・マッハーの姿を探すが、まだ見つからない。
「…………あと、3分。こうなったら!!」
メイコはすぐさまビルから飛び降りると、近くにいたザツオンを殴り飛ばす。
「……さ、もう一度勝負よ!!」
剣を構えたメイコの姿を見たザツオンが一斉に襲いかかる。
「ソング・ウェイブ!!」
音の衝撃波でザツオンを吹き飛ばす。
「貴方たちじゃ相手にならないわよ」
剣を構えて走り出したメイコの姿を見たザツオンは恐れ慄き、逃げ出した。その流れから逆行するように、マッド・マッハーが姿を現した。
「さ、ケリをつけましょう」
全身に力がみなぎってきたメイコは、剣をスタンドマイクに変えた。
いきなり、マッド・マッハーが襲いかかってくるが、メイコはそれを難なくかわし、狂音獣の腕をつかむと、そのまま背負い投げで地面にたたきつけた。なおも飛びかかってくるが、メイコは動きを完全に見切ったように受け流し、今度は拳で相手の腹を殴りつける。
あまりの劣勢にマッド・マッハーは四本足になり体当たりをするべく突進してきた。音速で襲いかかっているつもりの狂音獣は、立ち尽くすメイコを見てさらに加速を始める。
「ソニックアーム。ソング・オブ・ジャスティス!!」
音の衝撃波をかわすために狂音獣が動こうとした瞬間、鈍い音がビル街に響き渡った。
メイコの声が正義の刃となり、狂音獣をバラバラに切り裂いた。
「…………バカななぜ」
狂音獣はそのままバラバラにされ、大爆発を起こして果てた。
「…………ハク、助かったわ。でも、何であんな嘘を……」
勝利の余韻よりも、ハクに対する疑念がさらに増していく。メイコは燃え上がる炎を前に、ただ、立ち尽くしていた。
「ダイオンリョウサイセイ」
あの黒いロボットが現れ、目から光線を放つ。そうすると、マッド・マッハーが巨大化した。
「ハク! 聞こえるかしら!」
「出たのね。遠隔で出すわ」
ハクの指示でカナデモービルが発進する。
「みんな、私も頑張るわ」
ミクはピアノ・タンクの中からほかのメンバーに話しかけた。
「みんな、いいわね。心を一つに!!」
メイコの合図でカナデモービルが合体し、シンフォニー6が完成した。
「……さて、どう来るかしら」
ロボットと狂音獣がビル街の真ん中で対峙する。操縦を担当するレンは、機を逸したのか、なかなか指示を出せないでいる。
気持ちの悪い沈黙に耐えかねたのか、ついにレンが、
「今だ、腕から」
そう、言いかけたところで、マッド・マッハーが飛びかかってきた。相手の方が一瞬早く、間合いに入ってきた。
「しまった!!」
マッド・マッハーの体当たりを受け、ロボットは近くのビルまで弾き飛ばされた。ぶつかった衝撃で建物は大破する。
「やってくれるじゃない! これでも!!」
リンが叫ぶと、今度は肩からバルカン砲の掃射が始まる。これに慌てたのか、狂音獣はバランスを崩し、水路に足を取られて転倒した。
「よし、ワイヤー!」
レンが操縦桿代わりのマイクにそう叫ぶと、両腕からワイヤーが放出され、マッド・マッハーの肢体を縛り上げた。
「よし、さっさと片付けましょう!」
メイコの合図で背中のスタンドマイクが光響剣に変化した。6人のヴォイス・エナジーを集中させると、剣は光り輝き、力がみなぎってくるのが分かった。
「これで終わり! Gクリフアタック!!」
剣がト音記号の軌道を描き、振り下ろしたところでマッド・マッハーが真っ二つになる。そして、爆発とともに、狂音獣は消滅した。
「……勝った。けど……」
メイコは、カイトの方を見た。彼も狂音獣を葬った事に喜びの表情を浮かべてはいない。全体に重苦しい雰囲気が漂う。6人とも、勝者の浮かべる表情ではなかった。
「帰還するわ」
メイコの言葉に、いつもの元気はなかった。
「兄さん、どうしてあの方と会ったのですか」
ここは、ガクトが入院している病院。屋上からは、街の明かりが美しく見える。
「…………」
「あいつらは、兄さんを一人残して逃げたのよ! 兄さんがこんな事になった」
「メグミ、やめないか」
ガクトは、妹の神威メグミにそう冷たく言い放った。ライムグリーンのショートヘアーが風に揺れる。その頭には、サングラスを乗せている。
橙色のノースリーブの上着に同じ色の短めのスカート。腰のあたりには、緑色のベルトを巻いていた。年齢はミクと同じ16歳であるが、体つきは彼女よりも丸みがあり、より女を意識させた。
「私は、命をかけて戦った。その結果については、後悔はしていない」
妹にそう告げると、ガクトは自分で車いすを動かし、その場を去ろうとした。
「兄さん」
ガクトの前に立つと、メグミはメロチェンジャーを見せた。それは、3年前、ガクトが使っていた物だった。
「メグミ、なぜそれを」
「私はカナデンジャーになって、兄さんを見捨てたあいつらに復讐をしてやるわ。だから今日、お別れを言いに来たの」
「やめないか!」
ガクトは車いすから立ち上がろうとしたが、そのとたんに倒れてしまった。
「……サヨナラ。兄さん」
メグミは一度目を閉じると、一度メロチェンジャーを前方に突き出し、それを天に掲げた。
「コードチェンジ!!」
そう叫んだあと、病院の屋上から姿を消した。
「メグミ……何という事を……」
ガクトは今まで妹が立っていた場所まで這い、そこに落ちていた鈴を手にした。彼女が大事に持っていた物だった。
「…………メグミを止めなければ」
しかし、ガクトは立ち上がる事も出来ず、ただその場でむなしく地面にはいつくばっていた。
つづく
光響戦隊カナデンジャー Song-14 不協和音 Bパート
お待たせしました。先ほどの続きです。
楽しんでいただければ幸いです。
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