「お父様!大変なの!」
コンチータは父親の部屋に入るなり叫びだしました。
「い、いきなりどうしたんだいコンチータ?」
コンチータの父親はビックリして、手に持っていたサンドイッチを床に落としてしまいました。
「もう、食べた事の無いものが無いの!
この世の美食は全部、食べつくしてしまったの!」
コンチータは、まだ12と言う幼い年齢の時には美食を極めてしまったのです。
「あー……コンチータ。もしかしたら、コンチータは目の前にあるのに食べてないだけなのかも知れんぞ?
見た目が不味そうだから。食べない。そんな物がコンチータにもあるだろう?」
父親はお皿から今度は鴨肉の入ったサンドイッチを手に取りました。
コンチータは全種類のサンドイッチを食べつくしていました。
鴨の肉も、熊の肉も、蒲の肉だって食べた事があります。
「見た目が不味そうな物……」
コンチータは父親を見ました。
しわしわで、白い髭を伸ばしていて、肌もシミだらけ。
あきらかに、不味そうでした。
ですか、コンチータは試してみるのも良いかもしれない。と思いました。
「ありがとう!お父様!」
コンチータは父親の部屋を出ると、厨房へ向かいました。
コンチータは厨房にある調味料、調理道具を手当たり次第持って行きました。
「コンチータ様、そんなに調理道具を持って行ってどうするのですか?」
コックが聞きました。
「お料理するの!」
そう言って、コンチータはまた父の部屋に行きました。
数ヵ月後のコンチータの館は大騒ぎでした。
「夫がいつになっても帰ってこないの!」
コンチータの母親は泣きながら言いました。
「若いメイド達が何十人もいなくなっている!」
「召使も、コックも何十人もいなくなっています!みんな若者です!」
メイド長のおばさんは眉間に皺を寄せて言いました。
コンチータ家庭教師であるお爺さんも声を張り上げました。
「コンチータ様!いい加減部屋から出てください!」
まだ16の若いメイドの少女は、ずっと父親の部屋に篭もりきりのコンチータを呼びました。
ドアの向こうには、『何か』を食べる音だけがしました。
「入ってきて」
やっぱり、しわくちゃなお爺ちゃんのお肉より、若い女の人のお肉の方が美味しいな。
コンチータの悪食は、父親の一言から始まりました。
さて、そんなコンチータの長いようで短い生涯は長い間言い伝えられ、やがて歌になりました。
彼女の晩餐はまだまだ終わらない。歌として永遠に続く……
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