またあの日連れてくる女波
生まれ砕けて繰り返す　これまでもずっと
ひとつ思い出す度に君はひとつ忘れ去ってく

おとぎ話だと笑っていいの
せめてすがりつくよすがが欲しい
ここにはないよと鳥たちの声
すぐに飛び立つ向こうから

波は寄せて寄せて寄せて寄せて
海は満ちて満ちて満ちて
望むしるし水の底に　探すこともできやしない

寄せて寄せて満ちて満ちて
空ろの胸君があふれ
あの日聞いた波音の中

伸ばす手の先　届くわけなんてないのに
袖はただ濡れるだけ
こぼれ落ちて風にさらわれ
遠く

またあの夜連れてゆく男波
高く低く形を変え　これからもきっと
ひとつ振り返る度に君はひとつ前に進んで

作り話なんてわかっているの
せめてもう少し夢にいさせて
ここにあるよと鳥たちの声
いまだ飛び立てぬまま

水際に
波が寄せて寄せて寄せて寄せて
海が満ちて満ちて満ちて
望むしるし水の底に　探すこともできやしない

寄せて寄せて満ちて満ちて
空ろの胸君があふれ
あの夜と同じ潮香の中

波は引いて引いて引いて引いて
揺れて乱れ散って消える
彼方まで広がる浜辺　探す術もありやしない

引いて引いて揺れて消えて
あらわになる尽きぬ想い
心知った貝寄せの中

そう海ははるかな空へと
どこへだって辿り着ける　どこへも行けない
割れて埋もれた貝殻
砂と共にそっと握って