1月3日 年始の団欒
「おにいちゃん、もっとうたってー」
「ぼくも、ぼくもうたってほしいー!」
子供たちの高い声が響く。幾つもの小さな手に縋られて、KAITOは柔らかく笑みを浮かべた。
「うん、順番にね。けんかしないんだよ」
「まー、カイトちゃん大人気ねぇ。助かるわぁ」
おっとりと笑う祖母の言葉に、本当にねぇと賛同の声が上がる。私も頷きを返しながら、ちびっこたちに囲まれて歌うKAITOに視線を投げてそっと苦笑した。
年始の挨拶にと顔を出した祖母の家では、兄弟や従姉妹たちがそれぞれの子供たちを連れてきたために大変に賑やかな事になっていた。いまだ独りの身としては肩身が狭いかと思いきや、帰省に伴ったうたのおにいさんが大好評で大助かりである。ただその、幼児に囲まれる中でお互いに危なくないようにと普段より多めにぐるぐると巻かれ、おまけにリボン結びにされてしまった青いマフラーがちょっぴり笑え……もとい、申し訳なく。
それにしてもKAITO、流石のお兄ちゃんっぷりであった。ヒトには持ち得ない青い髪、青い瞳に釘付けになって固まる子供たちに≪VOCALOID≫の説明をして、紹介がてら軽く歌わせてみたらあっという間に懐かれていた。物珍しさや歌への反応もあろうが、一番は彼の対応だろう。何を言われずとも小さな子達に視線を合わせて膝をつき、囲まれれば座り込んでひとりひとりと挨拶を交わして、あの優しい声でゆったりと歌った。そして冒頭の通りである。
と、感心しつつも微笑ましく見守っていたら、飛び交うリクエストに耳を傾けていたKAITOがくるりとこちらを向いた。
「マスター、データにしてくださいぃ~」
お兄ちゃんの意地なのか笑顔は保ちつつも、その声は情けなくへたれている。あぁそうね、おこさまだいすきヒーローソングだのアニメソングだの、キミの持ち歌には入れてなかったわね……。
「えーと。ごめんね、お兄ちゃんそのおうたは知らないんだよね。だから、今度は皆がお兄ちゃんに教えてあげて?」
KAITOの真似をして殊更優しくゆっくりと、柔らかく声をかける。そんな急に言われても、私だってそのテの曲には疎いのだ。いきなり耳コピなんかできないし。
「……楽譜、とか……ないよねぇ……」
親御さん達と苦笑を交わしつつ、はらはらとなりゆきを見守る。幸いにも、お兄ちゃん・お姉ちゃんぶりたいお年頃の子たちが率先して歌いだし、ニコニコとそれを聴くKAITOに満足気で、どうやらこの場は穏やかなままで納まりそうだった。
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