総合司令室にいる者全てが、モニターに映し出されたミクオの姿を見て愕然とした。
『久しぶりですねぇ世刻司令。』
『ミクオ君・・・・・・何故ですか。』
ストラトスフィアの司令であるミクオと、今までに耳にしたことのない、世刻司令の困惑した声がスピーカーから響いた。
この向こう側のモニターは司令の部屋のモニターに出力されている。
今、ミクオと司令が対話しているのだ。
『一体、何を考えているつもりなのです。悪いことは言いません。すぐにストラトスフィアから下りなさい。』
『いやだね。』
『ミクオ君!』
『もう二度と、僕は誰の指図も受けない!!司令、貴方は嘘をついたね。僕には任務の後にそれなりの地位に就けるのではなかったのですか?』
『もちろんです。約束しました。』
『ハッ!また嘘をついて。調べましたよ僕は。ここからクリプトン内部のデータを掻き回してみたら、僕はまだ試作機で、しかもその後の量産機の研究のために解体される予定じゃないか!!何が地位だ!!!何が自由だ!!!!僕まであのゲノムパイロットと同じじゃないか!』
『それは、そんなことは、知りません!私は君に嘘はついていません!」
『嘘をつくなぁ!!!あんたとクリプトン社長に、密接な関わりがあったことも知ってるんだ!』
『しかし・・・・・・私は・・・・・・。』
『フン。もういい。貴方と社長には死んでもらいます。アド・アストラはとられてしまいましたが、これから基地に量産型とゲノムパイロットで攻撃させますよ。数じゃまずかなわないでしょうね。そしてストラトスフィアで水面都のクリプトンタワーにミサイル攻撃を行い、最後に突入、自爆させます。いやーたくさんの人が死ぬでしょうねぇ。』
『どうしてそんなことをさせるのです!無意味なだけです!私から社長に掛け合って、貴方の件は何とかしてもらいます。ですから・・・・・・!』
『うるさい!!もういやだ。僕は自由になりたいんだ。もう地位も要らない。クリプトンを潰し、あらゆる束縛から逃れ、僕は自由になるんだ。それに、もう遅いです。ストラトスフィアのクルーをみんな殺してしまいました。』
『ミクオ君!!』
『次はあんた達だ!アーッハハハハハハハハハハハハハハハ!!!』
その高笑いを境に、映像がモニターから途絶え、音声がスピーカーから途絶えた。
皆、数秒その場に立ち尽くした。
「全員・・・緊急配置に付け!!レーダーに注視しろ!!!」
俺は叫んだ。
俺は次に内線電話の受話器を手に取り司令の部屋の番号を押した。
回線が通じるのに長い時間は掛からなかった。
「司令。緊急事態です。」
『分かっています。すぐに戦闘機を全機させ、迎撃に向かわせなさい。』
「了解しました。」
俺は受話器を置くと、机上のインターホンを基地内全域に設定した。
朝美と少佐の部屋に歩いていく途中、基地内放送のチャイムが鳴った。
周りにいた者が立ち止まり、耳を澄ます。
『戦闘機パイロットは、全員至急ブリーフィングルームへ集合せよ!』
一瞬周りがどよめく。
「隊長、もしかして・・・・・・。」
「ああ、もう来てしまったようだな。いくぞ!」
「うん!」
俺達は一斉にブリーフィングルームへと走り出した。
ミクオ・・・・・・何故だ!
「いかなきゃ・・・・・・!」
急に部屋に少佐の声が聞こえてきた。
ブリーフィングルームに行かないと。
でも、もう戦いは起こらないはずなのに。
「ワラ、ヤミ!」
「ええ。」
「・・・・・・。」
ヤミは返事をしてくれたけどワラは黙ったままソファーに寝ている。
やっぱり、まだ・・・・・・。
「ところで、ミク。」
「え?」
「これも、クリプトンの仕業?」
ヤミが無表情な顔で言った。
ヤミも、怒っているんだ。きっと。
昨日社長から聞いた話をワラとヤミに話した。
今までの戦いがぜんぶ、クリプトンがわざとやったことと、
それのせいで、タイトが死んでしまった。
わたし達は、「操られていた」。
だから、悲しいよりも、怒れた。
「いや、もうそんなことは・・・ない。」
「そう。じゃあいきましょ。」
そう言ってヤミは
一人で先に部屋を出て行った。
「ワラ・・・・・・!」
呼びかけると、ワラは黙って起き上がった。
「行くよ。」
「ワラ!」
「どうせ、それがあたしの役目でしょ。」
「・・・・・・。」
「えっ・・・・・・どうして、僕もなんですか!?」
『貴方には、これから大切な任務があります!これは貴方にしかできないことです。』
「レーダーに反応はありましたか?!」
「はい。ストラトスフィアがDエリア手前、それの前方の座標C-32に多数の小型機反応、二機の航空機の反応があります。」
「基地側の防衛手段は?」
「高射砲部隊が地対空ミサイルパトリオットの準備を進めています。それと基地の外周通路にスティンガー部隊を設置してあります。こちらはいつでも発射可能です。」
「雪峰の艦隊は、呼び戻しましたか?」
「はい。すぐに、防空に当たってくれると返答がありました。まもなくB-44エリアに到着します。」
「神田少佐は?」
「ブリーフィングルームにて、戦闘機パイロットとアンドロイド達にブリーフィングを行っております。」
「分かりました。私は少し席をはずします。」
「え?」
「あとの指揮は少佐に任せてください。私はスティンガー部隊に加わります。」
「司令、危険すぎます!だめです!シェルターへ非難してください!」
「何を言っているのです!!私の基地です!!!私が護らなくてどうするのです!!!」
「・・・・・・了解、しました。」
少佐はまず、今まで起こったことの全貌を皆に話した。
無論、皆戸惑いを隠すことはできなかった。
「・・・・・・これが失敗すれば、首都に壊滅的な被害をこうむる以上に、今話した例の計画や、クリプトンの実態が全て公の元にさらされてしまう。突然このような事態になった上に、今までの戦いが全て計画によって動かされていたことに戸惑いを感じることは無理もない。しかし、今はそれどころではない。全員で、何としてでも首都を護れ!」
皆が立ち上がり、敬礼した。
その中には、なんと網走博士もいる。
そう、水面都に進路を定められたストラトスフィアの進路変更を行うため、博士自身も戦場へ赴かなければならないのだ。
この基地の人間が一丸となって、ミクオを止める。
クリプトンを・・・・・・首都を護る!
「敵機影、B-01に接近!Aエリアまで近づいてきます!」
「パトリオット発射用意!目標を捕捉せよ!」
「司令、本当によろしいのですか?」
「当然です。私の基地です。私が護ります。」
「スティンガー、構え!」
「ソード1、ソード2、ソード3、ソード4、ソード5、エレベーターへ移動せよ。」
「絶対に、護る。」
「まっさかこんな展開になるとはなぁ。」
「彼は、何故こんな無意味なことを・・・・・・。」
「ミクオくんの目を覚ましてやらなきゃ!」
「シック2、カタパルト装着。」
「たぃ・・・・・と・・・・・・まだ・・・?」
「・・・・・・フン。」
「やれと言われればやる。それが私たち・・・・・・。」
「ゴッドアイ、エレベーター搭乗完了。これより上昇を開始する。」
「やらなくちゃ・・・・・・僕が・・・・・・!」
「進路クリアー。ソード5、離陸を許可する。」
「どうして・・・・・・ミクオ!」
「ぼ・・・くも、い・・・くよ・・・!」
「さぁ、パーティーの始まりだ!!!」
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